中小法人の資金計画(全16問中1問目)

No.1

募集株式の発行等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問においては、株式の譲渡制限のある株式会社を非公開会社という。
2024年1月試験 問8
  1. 取締役会設置会社である非公開会社においては、株主総会の普通決議による委任がある場合、取締役会の決議により募集事項を決定することができる。
  2. 公開会社において、募集事項は、定款で株主総会の決議により決定する旨を定めている場合等を除き、取締役会の決議により決定する。
  3. 募集株式の発行等とは、株式会社が新規発行する株式や処分する自己株式を引き受ける者を募集することをいう。
  4. 募集株式の発行のうち、株主割当てとは、株式会社が株主に対し、その有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を与える方法である。

正解 1

問題難易度
肢143.3%
肢222.0%
肢322.6%
肢412.1%

解説

  1. [不適切]。普通決議では足りません。非公開会社が募集株式の発行をする場合、原則として株主総会の特別決議が必要となります(会社法199条2項)。例外的に、株主総会において募集株式の数と払込金額の下限を定めることで、募集事項を決定を取締役または取締役会に委任することもできますが、委任するにも特別決議が必要です(会社法200条1項・309条2項)。
    ※募集事項 … 株式数、払込金額、払込期日・期間、増加する資本金の額等
  2. 適切。公開会社が募集株式の発行をする場合、原則として取締役会の決議によって募集事項を決定することができます。ただし、定款で株主総会の決議が必要と定めている場合や、株主割当て以外の有利発行を行う場合等には特別決議が必要となります(会社法201条1項)。
  3. 適切。募集株式の発行等とは、いわゆる増資のことで、新規発行する株式または処分する自己株式を引き受けて株主となる者を募集することをいいます(会社法199条1項)。株式を発行等すると、持株比率の低下や価値の希釈化により既存株主が損を被るおそれがあるので、会社法によって各種規制がされています。
  4. 適切。株主割当ては、既存株主に対して、その有する株式数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を与えることで募集株式の発行を行う方法です(会社法202条1項)。既存株主が割当てに応ずれば、持株比率の低下や価値の希釈化の問題が生じない半面、応じない者にとっては損となるため払込みが半ば強制されるという問題があります。近年は利用が減少しており、代わりに公募増資や第三者割当増資が使われるようになっています。
したがって不適切な記述は[1]です。