社会保険(全61問中2問目)

No.2

労働者災害補償保険(以下、「労災保険」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
2024年1月試験 問3
  1. 派遣労働者が派遣先で業務災害により負傷した場合は、派遣先事業が労災保険の適用事業とされ、派遣労働者が通勤災害により負傷した場合は、派遣元事業が労災保険の適用事業とされる。
  2. 数次の請負によって行われている建設の事業において、下請け事業者に雇用される労働者が業務災害により負傷した場合、原則として、下請け事業者が営む事業が労災保険の適用事業とされる。
  3. A社およびB社に雇用される複数事業労働者が、脳・心臓疾患や精神障害を発症した場合、A社またはB社の業務上の負荷を個別に評価して業務災害に当たらないときは、両社の業務上の負荷を合わせて総合的に評価して業務災害に当たるかどうか判断される。
  4. C社およびD社に雇用される複数事業労働者が、C社で就業中に業務災害により負傷した場合、C社のみの賃金額に基づき算定された給付基礎日額を基礎として保険給付が行われる。

正解 3

問題難易度
肢111.7%
肢217.8%
肢363.6%
肢46.9%

解説

  1. 不適切。労災保険では、労働者を使用する事業が適用事業(保険関係が成立する事業)とされます。労働者派遣契約では、派遣元事業主と派遣労働者の間に雇用関係があるので、派遣元事業が適用事業となります。したがって、派遣先での業務災害と通勤災害のいずれも、派遣元の労災保険が適用されます(労災保険法3条)。
    派遣労働者が、派遣先で生じた業務災害により療養補償給付を受けようとする場合、派遣先の事業を労働者災害補償保険の適用事業として、療養補償給付に係る請求書に派遣先事業主の証明を受ける必要がある。2023.1-2-3
  2. 不適切。建設の事業が下請けや孫請けなどによって行われる場合には、その建設工事を1つの事業とみなし、元請け事業者がその現場のすべての労働者を対象として労災保険に加入します(請負事業の一括)。この場合、個々の下請け事業者ではなく、元請け事業者との間に保険関係が成立するので、下請け事業者に使用される労働者が業務災害により負傷した場合も、元請け事業者の労災保険が適用されます(徴収法8条)。
  3. [適切]。複数事業労働者とは、負傷・疾病・障害・死亡(以下、傷病等)が生じた時点において、事業主が同一でない複数の事業場に同時に使用されている労働者をいいます。複数事業労働者に傷病等が生じた場合には、それが1つの事業場での負荷(労働時間やストレス等)のみでは労災に当たらないときでも、複数の事業場の業務上の負荷を総合的に評価して労災に該当するかの判断が行われます。このように、複数の事業場での業務上の負荷を総合的に評価して受ける労災を「複数業務要因災害」といいます。なお、複数業務要因災害の対象となる疾病は、脳・心臓疾患と業務上の心理的負荷に伴う精神障害に限られます。
  4. 不適切。C社のみではありません。複数事業労働者の給付基礎日額は、複数業務要因災害であるかどうかにかかわらず、それぞれの就業先の事業場ごとに算定した給付基礎日額を合算した額を基礎として決定されます(労災保険法8条3項)。本肢の場合、C社とD社の合算額となります。
    複数の会社に勤務する複数事業労働者の休業補償給付の額は、原則として、業務災害が発生した勤務先の賃金に基づいて計算した給付基礎日額の100分の60に相当する額となる。2023.1-2-4
したがって適切な記述は[3]です。