公的年金(全47問中2問目)

No.2

在職老齢年金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
2024年1月試験 問5
  1. 厚生年金保険の適用事業所に常時使用される70歳以上の者に支給される老齢厚生年金は、在職老齢年金による支給調整は行われない。
  2. 在職老齢年金により年金額の一部が支給調整されている老齢厚生年金の受給権者について、定時決定により標準報酬月額の等級が上がった場合、9月分の老齢厚生年金から支給調整される額が変更となる。
  3. 第1号厚生年金被保険者期間と第3号厚生年金被保険者期間を有する老齢厚生年金の受給権者が第1号厚生年金被保険者である場合、在職老齢年金による支給調整の対象となるのは、第1号厚生年金被保険者期間に対応する老齢厚生年金のみである。
  4. 繰下げ支給の申出により増額された老齢厚生年金について、在職老齢年金により支給調整が行われる場合、報酬比例部分および繰下げ加算額が支給調整の対象となる。

正解 2

問題難易度
肢17.6%
肢252.6%
肢315.3%
肢424.5%

解説

  1. 不適切。在職老齢年金は70歳以上の人にも適用されます。70歳になると、原則として厚生年金の被保険者ではなくなり保険料の納付が不要となりますが、70歳以降も引き続き在職支給停止の対象となります(厚年法46条1項)。
  2. [適切]。標準報酬月額は、4月・5月・6月の3か月に支払われた賃金を基準にして毎年9月に改定されます(定時決定)。在職支給停止額は、年金の基本月額と報酬月額相当額(その月の標準報酬月額と過去1年間の標準賞与額÷12の合計)によって決まりますから、定時決定で標準報酬月額が変われば、総報酬月額相当額も変わり、それに伴い支給停止される額も変更されます。年金の支給停止事由が生じた場合、その翌月から支給停止されるのが原則ですが、例外的に在職老齢年金では支給事由が生じた当月分から支給停止されるので、標準報酬月額が上がった9月分から支給停止額が変更されます(厚年法46条5項)。
  3. 不適切。厚生年金では、被保険者を第1号(第2号~第4号に該当しない者)、第2号(国家公務員)、第3号(地方公務員)、第4号(私立学校教員等)に分けています。2つ以上の被保険者種別の被保険者期間がある場合、加入していたすべての被保険者種別の年金額が、在職老齢年金による支給調整の対象となります。第1号と第3号の被保険者期間がある場合、両方の年金額を合算して支給停止総額を求め、その支給停止総額を年金額で按分して、第1号と第3号それぞれの年金支給停止額を算出します(厚年法78条の29)。
    第1号厚生年金被保険者期間に係る老齢厚生年金と第2号厚生年金被保険者期間に係る老齢厚生年金の受給権を取得した者は、それぞれについて異なる時期から繰り下げて増額された年金の支給を受けることができる。2021.5-4-4
    遺族厚生年金を受給している厚生年金保険の被保険者が65歳に達して老齢厚生年金の受給権を取得し、65歳以後も引き続き厚生年金保険の被保険者である場合、当該受給権者は、退職して厚生年金保険の被保険者資格を喪失後に老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をすることができる。2016.9-4-3
  4. 不適切。老齢厚生年金の繰下げをした者に在職支給停止が行われる場合、繰下げによって増額した部分の額は支給調整の対象外となります。繰下げ加算額は一定期間年金を受け取らなかったことに対する見返りなので、繰り下げた期間分の年金と増額分が二重に支給停止されるのを防ぐためです。したがって、在職支給停止により全額が停止される場合でも、経過的加算額と繰下げ加算額は全額が支給されます(厚年法46条1項)。
したがって適切な記述は[2]です。