会社・役員間及び会社間の税務(全8問中7問目)

No.7

X株式会社(以下、「X社」という)とその役員の間の取引における法人税および所得税の取扱いに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
2016年1月試験 問33
  1. X社が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で役員に譲渡した場合、X社側では時価で譲渡したものとされ、譲渡価額と時価との差額が受贈益として益金算入となる。
  2. 役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得として課税される。
  3. 権利金を授受する慣行がある地域において、役員が所有する土地をX社に建物の所有を目的として賃貸する場合に、X社から役員に権利金や相当の地代の支払がなく、「土地の無償返還に関する届出書」の提出がないときには、X社側では原則として借地権の受贈益が認定課税される。
  4. 役員がX社から無利息で金銭を借り入れた場合、原則として、X社側では通常収受すべき利息が益金算入となり、役員側では通常支払うべき利息が給与所得として課税される。

正解 2

問題難易度
肢18.6%
肢268.1%
肢39.2%
肢414.1%

解説

  1. 適切。法人から役員に対して、所有する資産を時価よりも高い価額で役員に譲渡したときには、法人側は時価で譲渡したものとされ、譲渡価額と時価との差額が受贈益となります。役員側は時価との差額を法人に寄附(贈与)したものとされます。
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    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。2021.9-33-1
    X社が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で役員に譲渡した場合、X社側では時価で譲渡したものとされ、譲渡価額と時価との差額が受贈益として益金算入となる。2020.9-33-1
    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。2019.5-33-1
    X社が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で役員に譲渡した場合、X社側では時価で譲渡したものとされ、譲渡価額と時価との差額が受贈益として益金算入となる。2019.5-33-2
    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとみなされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。2018.1-33-2
    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得として課税される。2016.1-33-2
    役員が所有する資産を適正な時価の3分の2の価額で法人に譲渡した場合、法人側では時価と買入価額との差額が受贈益として取り扱われ、役員側では譲渡価額と取得費等の差額が譲渡所得として課税される。2014.1-32-3
    役員が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で法人に譲渡した場合、法人側では時価と買入価額との差額について、役員に対して給与を支払ったものとして取り扱われ、役員側では時価と譲渡価額との差額が給与所得として課税される。2014.1-32-4
  2. [不適切]。役員から法人に対して所有する資産を時価より低額で譲渡したときは、法人側は時価で取得したとして譲渡価額との差は受贈益となります。役員側の税務は、譲渡価額が時価の2分の1以上か未満かによって次のように異なります。
    時価の2分の1以上で譲渡
    譲渡価額が譲渡収入となる
    時価の2分の1未満で譲渡
    譲渡価額と時価の差額はみなし譲渡所得とされ、時価が譲渡収入となる
    ※譲渡価額+みなし譲渡所得=時価
    本肢は役員側が損をする立場なので給与所得とはなりません。
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    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。2021.9-33-1
    X社が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で役員に譲渡した場合、X社側では時価で譲渡したものとされ、譲渡価額と時価との差額が受贈益として益金算入となる。2020.9-33-1
    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。2019.5-33-1
    X社が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で役員に譲渡した場合、X社側では時価で譲渡したものとされ、譲渡価額と時価との差額が受贈益として益金算入となる。2019.5-33-2
    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとみなされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。2018.1-33-2
    X社が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で役員に譲渡した場合、X社側では時価で譲渡したものとされ、譲渡価額と時価との差額が受贈益として益金算入となる。2016.1-33-1
    役員が所有する資産を適正な時価の3分の2の価額で法人に譲渡した場合、法人側では時価と買入価額との差額が受贈益として取り扱われ、役員側では譲渡価額と取得費等の差額が譲渡所得として課税される。2014.1-32-3
    役員が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で法人に譲渡した場合、法人側では時価と買入価額との差額について、役員に対して給与を支払ったものとして取り扱われ、役員側では時価と譲渡価額との差額が給与所得として課税される。2014.1-32-4
  3. 適切。少なくとも一方が法人である土地の賃貸借で、権利金の収受がないときは権利金相当額をタダでもらったとみなされ、権利金の認定課税が行われます。このとき、法人側(借地人)では権利金相当額が受贈益となりますが、役員側(地主)の課税はありません。
    なお、少なくとも一方が法人である土地の賃貸借で、権利金の収受がないときでも、次のいずれかに該当するときは権利金の認定課税が行われません。
    • 相当の地代(地価の6%/年)を収受している
    • 「土地の無償返還に関する届出書」を提出している
    権利金を授受する慣行がある地域において、役員が所有する土地をX社に建物の所有を目的として賃貸する場合に、X社から役員に権利金や相当の地代の支払がなく、「土地の無償返還に関する届出書」の提出がないときには、X社側では原則として借地権の受贈益が認定課税される。2021.9-33-4
    権利金を授受する慣行がある地域において、役員が所有する土地をX社に建物の所有を目的として賃貸する場合に、X社から役員に権利金や相当の地代の支払がなく、「土地の無償返還に関する届出書」の提出がないときには、X社側では原則として借地権の受贈益が認定課税される。2020.9-33-2
    役員が所有する土地をX社に建物の所有を目的として賃貸する場合に、X社から役員に権利金の支払がないときは、原則として、X社側では借地権相当額が受贈益として益金算入となり、役員側では借地権相当額が譲渡所得の収入金額として課税対象となる。2018.1-33-4
  4. 適切。法人が役員に対して金銭を貸し付ける場合、役員への経済的利益の供与となるため無利息で貸し付けることはできません。役員が法人から無利息で金銭を借り入れた場合、適正な利息があったものとして、法人側は通常受け取るべき利息が益金算入となります。役員側では通常支払うべき利息が給与所得となり課税の対象となります。
    X社が役員から無利息で金銭を借り入れた場合、原則として、役員側では通常支払われるべき利息が雑所得の収入金額として課税対象となる。2020.9-33-3
    役員がX社から無利息で金銭を借り入れた場合、原則として、X社側では通常収受すべき利息が益金算入となり、役員側では通常支払うべき利息が給与所得の収入金額として課税対象となる。2019.5-33-3
    X社が役員から無利息で金銭を借り入れた場合、原則として、役員側では通常支払われるべき利息が雑所得の収入金額として課税対象となる。2018.1-33-3
    役員が法人に対して無利息で金銭の貸付を行った場合、原則として、役員側では受取利息の認定が行われ、通常収受すべき利息の額が雑所得として課税される。2014.1-32-1
したがって不適切な記述は[2]です。