不動産の譲渡に係る税金(全36問中3問目)

No.3

居住者が土地・建物を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上の取得費に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
2023年5月試験 問40
  1. 土地とともに取得した当該土地上の建物の取壊し費用は、当初からその建物を取り壊して土地を利用することが目的であったと認められる場合、原則として、当該土地の譲渡所得の金額の計算上の取得費に算入する。
  2. 一括して購入した一団の土地の一部を譲渡した場合、原則として、その一団の土地の取得価額に、譲渡した部分の面積がその一団の土地の面積のうちに占める割合を乗じて計算した金額を譲渡所得の金額の計算上の取得費とする。
  3. 相続税を課された者が、当該相続により取得した土地を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合、相続税額のうち譲渡した土地に対応する分として計算した金額を譲渡所得の金額の計算上の取得費に加算することができる。
  4. 自宅の建物(非事業用資産)を譲渡した場合、譲渡所得の金額の計算上、取得価額から控除する減価償却費相当額は、建物の耐用年数の旧定額法の償却率で求めた1年当たりの減価償却費相当額にその建物を取得してから譲渡するまでの経過年数を乗じて計算する。

正解 4

問題難易度
肢122.6%
肢212.9%
肢320.6%
肢443.9%

解説

  1. 適切。土地と建物をともに取得した場合において、取得後概ね1年以内に建物の取壊しに着手するなど、当初から建物を取り壊して土地を利用することが明らかであるときは、その取壊し費用は取得費に算入します(所基通38-1)。
  2. 適切。一括購入した一団の土地の一部を譲渡した場合の取得費は、原則として、一団の土地に占める譲渡した部分の面積の割合を一団の土地の取得価額に乗じた額となります。ただし、譲渡時の時価が適正に算定できるような場合は、取得価額を時価の比で按分して得た金額によることもできます(所基通38-1の2)。
  3. 適切。相続により取得した財産について、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡するなどの要件を満たせば、相続税額のうち譲渡した相続財産に対応する額を譲渡所得の計算上の取得費に加算することができます(取得費加算の特例)。
    2024年1月1日以後に開始する相続により取得した土地を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合の取得費は、通常の方法により計算した取得費の額に、譲渡した土地に対応する相続税相当額を取得費に加算することができる。2015.1-40-3
  4. [不適切]。非事業用資産である場合、償却率にはその建物の法定耐用年数を1.5倍した年数による償却率を用いるので誤りです。
    建物の取得費の計算に当たっては、その建物の購入・建築代金、設備費、改良費の合計額(以下、取得価額)がそのまま取得費となるわけではなく、建物の取得価額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引く必要があります。建物の償却費相当額は、旧定額法に基づいて計算し「建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数」の式で算出された額となりますが、法定耐用年数は事業用として供された場合を想定した年数なので、非事業用資産では法定耐用年数を1.5倍した年数による償却率を用います(所得税法令85条)。例えば、木造住宅の法定耐用年数は22年(償却率0.046)ですが、これではなく22年を1.5倍した33年のときの償却率0.031を用いるということです。
したがって不適切な記述は[4]です。