相続と法律(全46問中6問目)

No.6

民法における特別受益に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
2023年5月試験 問46
  1. 被相続人の相続財産を相続人である子が相続する場合、被相続人が相続人でない孫に対して相続の開始前に贈与を行っていたときは、原則として、当該贈与は特別受益に該当する。
  2. 共同相続人のなかに被相続人を被保険者とする生命保険の死亡保険金受取人がいる場合、原則として、当該死亡保険金は特別受益に該当する。
  3. 共同相続人のなかに被相続人から居住用建物の贈与を受けた者がおり、相続開始の時において、受贈者の行為によって当該建物が滅失していた場合、当該建物は特別受益の持戻しの対象とはならない。
  4. 婚姻期間が20年以上の夫婦において、夫が妻に対し、その居住用建物とその敷地を遺贈した場合、夫は、その遺贈について特別受益の持戻し免除の意思表示をしたものと推定される。

正解 4

問題難易度
肢121.6%
肢26.6%
肢317.4%
肢454.4%

解説

  1. 不適切。特別受益の対象となるのは、被相続人から相続人に対してなされた、遺贈または婚姻・養子縁組・生計の資本としてなされた生前贈与です。特別受益は、共同相続人間の相続分が公平になるように調整する制度なので、相続人でない者に対して贈与した財産は、特別受益には該当しません(民法903条)。
  2. 不適切。相続人が取得する生命保険金や死亡退職金は、相続人の固有財産であり、上記のいずれにも該当しないので原則として特別受益に該当しません。ただし、共同相続人間の不公平の程度が著しいなどの特別の事情がある場合には、類推適用により特別受益に該当することもあります(最判平16.10.29)。
  3. 不適切。特別受益に該当する財産が、受贈者の行為によって滅失・毀損していたり、価格が増減したりしていた場合でも、原状のままとみなして(それらの変更がなかったものとして)特別受益の額を算定します(民法904条)。なお、自然災害など受贈者の行為によらず滅失等した場合は、持戻しの対象外となります。
  4. [適切]。婚姻期間20年以上の配偶者への居住用財産の遺贈または贈与をした場合、被相続人は、この遺贈または贈与に対して特別受益の持戻しの規定を適用しない意思表示をしたものと推定されます(民法903条4項)。配偶者の相続分を確保するために、2019年の民法改正により新設された規定です。
したがって適切な記述は[4]です。