相続と法律(全46問中8問目)

No.8

民法における遺言に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
2023年1月試験 問44
  1. 遺言執行者は、自己の責任で第三者に遺言執行の任務を行わせることができるが、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
  2. 遺言者の相続開始前に受遺者が死亡していた場合、 原則として、 受遺者に対する遺贈や停止条件付きの遺贈は効力を生じないが、当該受遺者に子があるときは、その子が代襲して受遺者となる。
  3. 公正証書遺言を作成していた遺言者が、公正証書遺言の内容に抵触する自筆証書遺言を作成した場合、その抵触する部分については、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回したものとみなされる。
  4. 遺言者は、遺言により1人または複数人の遺言執行者を指定することができ、その指定を第三者に委託することもできるが、未成年者および破産者は遺言執行者となることができない。

正解 2

問題難易度
肢12.8%
肢269.8%
肢310.4%
肢417.0%

解説

  1. 適切。遺言執行者は、相続人に代わり、相続財産の管理その他遺言の失効に必要な一切の行為を行う人です。遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができますが、遺言者が遺言で別段の意思を示したときは、その意思に従わなければなりません(民法1016条)。
  2. [不適切]。遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺言者が遺言で別段の意思を示していたときを除き、その効力を生じません。効力が生じない=何もなかったことと同じですから、子が代襲して受遺者になることはありません(民法994条)。
  3. 適切。2つ以上の遺言書が存在し、それぞれの内容が抵触するときは、その抵触する部分については遺言の方式にかかわらず、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。よって、作成日付の新しい自筆証書遺言の内容が有効になります(民法1023条)。
    遺言者が、公正証書遺言と自筆証書遺言を作成しており、それぞれの内容が異なっている場合、その異なっている部分について作成日付の新しい遺言の内容が効力を有する。2019.1-44-2
    公正証書遺言の遺言者が、公正証書遺言の正本を故意に破棄したときは、その破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされる。2019.1-44-3
    公正証書遺言を作成していた遺言者がその内容に抵触する自筆証書遺言を作成した場合、その抵触する部分については、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回したものとみなされる。2018.1-46-2
    公正証書遺言を作成していた者がその内容に抵触する自筆証書遺言を作成した場合、その抵触する部分については、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回したものとみなされる。2016.1-44-2
  4. 適切。遺言者は、遺言により個人・法人問わず、1人または複数人の遺言執行者を指定することができ、また、家庭裁判所に選任の申立を行うなどその指定を第三者に委託することもできます(民法1006条)。遺言を適切に実現する能力の観点から、未成年者および破産者は遺言執行者となることはできません(民法1009条)。
したがって不適切な記述は[2]です。