FP1級 実力判定フリー模試【解説】
まず、65歳から15年間にわたって毎年500千円を受け取るための原資を計算し、その後、その原資を20年間で貯めるために必要な毎年の積立額を計算するという二段階の計算が必要です。
[年金原資]
「毎年均等に取り崩して受け取る」とくれば、使用できるのは「資本回収係数」または「年金現価係数」のいずれかです。設問のケースでは毎年の取り崩す金額が決まっており、そのために必要な元本を知りたいため「年金現価係数」を用います。
年利は2%、取り崩す期間は15年ですので年金現価回数12.8493を使用します。
600千円×12.8493=7,709.58千円
(千円未満切捨て)7,709千円
[毎年の積立額]
「毎年一定金額を積み立てる」とくれば、使用できるのは「年金終価係数」または「減債基金係数」のいずれかです。設問のケースでは目標金額に達するために必要な「毎年の積立金額」を知りたいので「減債基金係数」を用います。
年利は2%、積立期間は45歳から65歳の20年ですので減債基金係数0.0412を使用します。
7,709千円×0.0412=317.6108千円
(千円未満切捨て)
317千円
したがって[3]が正解です。
- 不適切。高年齢雇用継続基本給付金の額は、60歳以降の支給対象月に支払われた賃金月額に支給率を乗じて得た額です。よって、「60歳到達時の賃金月額に15%」としている本肢は誤りです。なお、61%未満に下がった場合の支給率が15%(最大)となるという点は適切な記述です。
- [適切]。高年齢再就職給付金を受給するための要件は以下のとおりです。
- 再就職後の各月に支払われる賃金の額が基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満となったこと
- 受給資格に係る離職日における算定基礎期間が5年以上あること
- 受給資格に基づく基本手当の支給を受けたこと
- 再就職日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること
- 安定した職業に就くことにより被保険者となったこと
- 不適切。介護休業給付金は、支給単位期間において事業主から「休業開始時賃金日額×支給日数×80%」以上の賃金が支払われているときは全額が支給停止となります。
- 不適切。パパ・ママ育休プラスは、同一の子について父母が一緒に育児休業を取得した場合に、あとから育休を取得した配偶者のみ子が1歳2カ月に達する日まで育児休業を取得することができる制度です。「1年6か月」というのは、子の1歳到達日において保育所等が見つからないときや養育予定者が死亡したときに育休期間を延長するときの年月です。
したがって適切な記述は[2]です。
- 適切。療養(補償)給付は無料で治療や薬剤の支給を受けられる現物給付が原則ですが、業務災害によって負傷し、近くに指定医療機関等がないなどのやむを得ない事情で労災指定病院以外の病院等で受診し費用を支払った場合、療養の費用の請求によって支払った療養費の全額を受け取ることができます(労災保険法13条3項)。
- [不適切]。労働者が労災の療養のために欠勤し賃金を受けられない場合、休業4日目から休業補償給付を受けることができます(労災保険法14条)。休業の初日から3日目までは、業務災害の場合、事業主が労働基準法に基づき療養中平均賃金の6割相当額の休業補償を行わなければなりませんが、通勤災害の場合は事業主は休業に対する補償をする必要はありません(労働基準法76条)。
- 適切。傷病補償年金は、業務上の負傷や疾病によって療養している労働者が療養の開始後1年6カ月を経過しても治らない場合で、傷病等級第1級から第3級に該当するときに支給されます(労災保険法12条3項)。このときまで支給されていた休業補償給付はその後支給されません(労災保険法18条2項)。
- 適切。遺族補償年金の受給資格者は、被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた所定の要件を満たす「配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹」で、最先順位の者に支給されます(労災保険法16条の2)。最先順位の受給権者が死亡するなどで受給資格を喪失した場合、遺族補償年金は次の順位の受給権者に転給されます(労災保険法16条の3)。
したがって不適切な記述は[2]です。
- 不適切。老齢年金の繰上げ支給の請求は、老齢基礎年金・老齢厚生年金を同時にしなければならないので、老齢基礎年金のみの繰上げ支給の請求をすることはできません。
- 不適切。繰上げ請求に係る減額率は1月当たり0.4%に緩和されましたが、この0.4%の減額率が適用されるのは、1962年4月2日以降に生まれた人(法が施行された2022年4月1日以降に60歳になる人)に限られます。本肢の女性は1962年3月10日生まれなので、1月当たりの減額率は従前のまま0.5%、4年=48月の繰上げなので減額率は「48月×0.5%=24%」です。
- [適切]。繰下げ請求では、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時にする必要はありません。繰下げ請求できる年齢は最長で75歳までに伸びましたが、75歳まで繰下げできるのは、1952年4月2日以降に生まれた人(法が施行された2022年4月1日以降に70歳になる人)に限られます。本肢の男性は1958年生まれなので、73歳で繰下げ支給の請求をすることができます。
- 不適切。公的年金の障害給付や遺族給付の受給権を有している人は、老齢基礎年金の繰下げ受給の請求をすることができません。老齢厚生年金でも基本的に繰下げ不可ですが、併給が可能である障害基礎年金と老齢厚生年金の組合せだけは、繰下げか可能となっているので注意しましょう。
したがって適切な記述は[3]です。
- 不適切。加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年(240月)以上ある方が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者または子がいるときに加算されます。老齢厚生年金の受給開始後に65歳未満の配偶者を有することとなった場合でも、加給年金額は加算されません。
なお、障害厚生年金の配偶者加給年金は、受給権取得後に婚姻した妻も対象となります。両者の違いに注意しましょう。 - 不適切。妻が老齢基礎年金を繰り上げて受給しても、妻が65歳に到達するまでの間は、夫の老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。妻が65歳以後は、妻の老齢基礎年金に振替加算額が加算されます。すなわち、妻の繰上げ支給の申出が、加給年金額と振替加算額には影響することはありません。
- 不適切。障害厚生年金の配偶者加給年金は、障害等級1級・2級の受給権者によって生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます(厚生年金保険法50条の2)。障害厚生年金の障害等級は1級から3級までありますが、3級には配偶者加給年金がないので「障害の程度にかかわらず」としている本肢は誤りです。
- [適切]。中高齢寡婦加算は、厚生年金の被保険者である夫が死亡したときに40歳以上で子のない妻(夫の死亡後40歳に達した当時、子がいた妻も含む)が65歳なるまで、受け取る遺族族厚生年金に加算されるものです。夫の死亡時に子がいて、その子が18歳到達年度末日を経過した場合、40歳以上65歳未満の妻が受給する遺族厚生年金には中高齢寡婦加算額が加算されます(厚生年金保険法62条)。
中高齢寡婦加算の規定では、遺族厚生年金の計算基礎となる被保険者期間が240月未満を除外するとされていますが、短期要件(被保険者の死亡)の場合には300月に満たない場合に300月として計算することになっているので、死亡した夫の被保険者期間にかかわらず支給対象となります。
したがって適切な記述は[4]です。
- [不適切]。中退共に加入できる法人は次の通りです。一般業種では常時雇用従業員数300人以下、または、資本金3億円以下のいずれかに該当すれば加入できます。建設業、製造業等の一般業種で、常用従業員数20名以下(の法人役員や個人事業主)というのは小規模企業共済の加入資格です。
- 適切。中退共は従業員の普遍的加入が条件になっています。ただし、期間社員、季節社員、試用期間中の従業員、短期労働者、休職中の社員等は除かれます。
- 適切。相談役、顧問その他実質的な経営者等のみなし役員であっても、商業登記簿に役員登記されていない人は小規模企業共済の加入資格がありません。
- 適切。解約手当金は掛金納付月数に応じて、掛金総額の80%~120%相当額となります。掛金納付月数が240月(20年)未満の場合は掛金総額を下回り、240月(20年)以上の場合は掛金総額を上回ります。
したがって不適切な記述は[1]です。
- [不適切]。通算加入者等期間別の受給開始可能年齢は以下のようになっています(DC法33条)。56歳0か月から加入者になった場合、60歳時点における通算加入者等期間は「60歳-56歳=4年」なので、「4年以上6年未満」の区分に該当し、63歳から請求が可能になります。
- 適切。老齢給付金を60歳から受け取るためには60歳時点で10年以上の通算加入者等期間が必要で、10年に満たない場合、60歳・10年を基準にして加入者期間2年ごとに支給開始年齢が1歳遅れていきます。「8年以上10年未満」である場合、60歳から1年遅れの61歳から老齢給付金の請求が可能です。
- 適切。老齢給付金の受給権は、以下のいずれかに該当すると消滅します(DC法36条)。
- 受給権者が死亡したとき
- 確定拠出年金の障害給付金の受給権者となったとき
- 個人別管理資産がなくなったとき
- 適切。確定拠出年金の老齢給付金は最大で75歳まで支給開始を遅らせることができますが、75歳までに加入者から請求がない場合には、加入者の意思にかかわらず、運営管理機関等の裁定に基づいて老齢給付金が支給されます(DC法34条)。これは個人型確定拠出年金でも同様です。
したがって不適切な記述は[1]です。
- 不適切。資金使途は、入学金、授業料、施設設備費など学校に納付する費用のほか、受験のために要した費用、在学のための住居に関わる費用や通学費用などに充当することも可能です。教育一般貸付のHPでは、教科書代、教材費、パソコン購入費、修学旅行費用、学生の国民年金保険料にも使えると謳われています。
- [適切]。融資限度額は、原則、学生・生徒1人につき350万円以内ですが、自宅外通学や大学院、3カ月以上在籍する海外留学資金として利用する場合は、450万円が上限となります。
2020年度より上限450万円の対象が①自宅外通学、②修業年限5年以上の大学(昼間部)、③大学院の人にも広がりました。2019年度以前は450万円の融資が受けられるのは海外留学の方のみでした。 - 不適切。教育一般貸付の返済期間は、一律で最長18年です。以前は、原則15年、母子家庭等は18年でしたが、2022年4月1日より一律18年に改正されています。
- 不適切。教育一般貸付を利用する際には、教育資金融資保証基金または連帯保証人を選択します。教育資金融資保証基金は、連帯保証人に代わって融資の保証をしますが、融資額や返済期間に応じた基金に支払う保証料は、融資額から一括して差し引かれるようになっています。よって、借入開始前に保証料を払う必要はありません。
したがって適切な記述は[2]です。
下表は保険契約のクーリング・オフ制度における出題ポイントをまとめた表です。
- [適切]。申込者が自ら指定した場所での申込みを請求した場合には、原則としてクーリング・オフできませんが、その指定場所が「自らの居宅」だった場合にはクーリング・オフの適用があります(保険業法令45条2号)。
- 不適切。団体信用生命保険は、個人が被保険者となって、金融機関が受取人となり保険会社と契約する保険になり、法人契約の保険となりますのでクーリング・オフ制度の適用はありません(保険業法309条1項3号)。
- 不適切。加入済みの既契約を更改した際にはクーリング・オフ制度の適用はありません(保険業法令45条8号)。※更改内容は、保険金額その他給付内容の変更、保険期間の変更に限ります。
- 不適切。法人が契約者となる保険契約にはクーリング・オフ制度の適用はありません(保険業法309条1項3号)。
したがって適切な記述は[1]です。
- 適切。死亡保険契約の保険金受取人の変更は、不正な受取りを防ぐ観点から、被保険者の同意がなければその効力は生じません(保険法45条)。
- [不適切]。締結の時において保険金額が保険価額を超えていたことを保険契約者および被保険者が知らず、知らなかったことにつき重大な過失がなかったときでも保険契約は有効です。ただし、超過部分については後から取り消すことができます(保険法9条)。無効となるわけではありません。
また、損害保険契約の締結後に保険価額が著しく減少し超過保険の状態になった場合、保険契約者は、保険者に対し、将来に向かって保険金額と保険料の減額を請求することができます(保険法10条)。 - 適切。保険事故により保険の目的物の一部に損害が発生したときは、その後に保険対象外の事由で目的物全部が滅失した場合でも、当該損害をてん補しなければなりません(保険法15条)。
- 適切。保険金を請求する権利、保険料の返還を請求する権利、保険料積立金の払戻しを請求する権利は、権利を行使できるときから3年で時効消滅します(保険法95条)。
したがって不適切な記述は[2]です。
- 不適切。契約者の変更や特約付加によらない保険金額の増額減額等では、新制度の対象にはならず旧制度のままとなります。
- [適切]。旧生命保険料控除の対象となる生命保険について、新制度導入後、契約を更新すると新制度の対象となります。特約部分のみの更新でも保険契約全体が新制度の対象となります。
- 不適切。肢1と同様に、契約者の変更や特約付加によらない保険金額の増額減額では、新制度の対象にはならず旧制度のままとなります。
- 不適切。旧生命保険料控除の対象となる生命保険について、新制度導入後、契約を更新したり特約を付加した場合、原則として新制度の対象となります。しかし、傷害特約や災害割増特約など身体の傷害のみに基因して保険金が支払われる保険契約は新制度では控除対象外なので、これらの特約を付けたに留まる場合は旧制度のままとなります。
したがって適切な記述は[2]です。
法人契約の収入保障保険(無解約返戻金型)で法人が受け取る保険金は、受取方法によって経理処理が異なります。なお、無解約返戻金型収入保障保険は支払保険料の全額を損金算入するので、資産計上している金額はありません。
- 全額一括受取り
- 受け取った際に、全額を雑収入として益金に算入する
- 一括受取り・年金受取りの併用
- 受け取った際に、未払い年金原価も含めて全額を雑収入として益金に算入する。未払い年金原価は未収金として資産計上する
- 年金受取り
- 受取りの都度、雑収入として益金に算入する
本問では、年金の現在価値の総額である9,200万円を雑収入として益金算入します。そして、実際に受け取った5,100万円が現預金とし、未払い年金原価は「9,200万円-5,100万円=4,100万円」を未収金とします。
したがって[4]の経理処理が適切です。
任意自動車保険のノンフリート等級別割引・割増制度は、契約者の前契約の有無や事故歴に応じて
1等級から
20等級(一部の共済では上限22等級)に区分し、等級ごとに保険料の割増・割引を行う制度です。等級の数字が大きいほど大きな割引を受けられる仕組みになっています。
新規加入時は
6等級からスタートし、1年間無事故ならば7等級にアップするというように、1年で1等級ずつ上がっていきます。ただし、事故を起こして保険を使った場合には原則として
3等級ダウンします(10等級で事故を起こすと次回更新時は7等級)。
また、保険を使っても例外的に1等級下がるだけで済む「1等級ダウン事故」、等級に影響しない「ノーカウント事故」があります。
- 1等級ダウン事故
- 火災・爆発や台風・洪水といった自然災害や、盗難・落書き・いたずら・飛び石との衝突などの偶然な事故によって、車両保険等を使用した事故
※保険始期日が2012年9月30日以前の場合「等級すえおき事故」として扱われる - ノーカウント事故
- 人身傷害保険、搭乗者傷害保険、個人賠償特約、ファミリーバイク特約等からのみ保険金が支払われた事故
- 不適切。等級の上限は20等級(一部の共済では22等級)です。
- 不適切。飛び石+車両保険は「1等級ダウン事故」に該当します。事故時の等級が12等級だったので、翌年の契約では1等級下がって11等級となります。
- 不適切。同じ等級でも事故ありでその等級になった場合、事故有係数が適用されるため、事故なしでその等級になった人よりも保険料が高くなります。事故有係数は3等級ダウン事故であれば3年間、1等級ダウン事故であれば1年間適用されます。
- [適切]。車を売ったり廃車にしたりして自動車保険を更新しない場合、保険会社に中断証明書の発行を依頼できます。中断証明書の有効期限内(一般的には10年)に新たに自動車保険を契約することになった際には、その中断証明書を提出することで中断前の等級を引き継ぐことが可能です。
したがって適切な記述は[4]です。
- ノンフリート契約
- 自らが所有・使用し、契約対象とする自動車の総付保台数が9台以下の契約
保険料は自動車1台ごとの等級で決まる - フリート契約
- 自らが所有・使用し、契約対象とする自動車の総付保台数が10台以上の契約
保険料は総契約台数や契約者単位の等級で決まる
保険金や国庫補助金(以下、保険金等)を受け取って設備や機械などの固定資産を取得した場合には、法人が受け取った保険金等は益金となるものの、固定資産の取得費用は損金にならないので、保険金等の額は全額が課税対象となります。
圧縮記帳は、この保険金等に対する税負担を軽減するために、保険金等の額のうち固定資産の取得に充てた一定の金額を損金として計上することで、保険金等への課税を翌年以降に繰り延べることができる制度です。
圧縮記帳をしない場合には以下のような仕訳となり、保険金等は受け取った事業年度の益金として課税されます。
一方、圧縮記帳では所定の計算式で算出した固定資産圧縮損を計上し、固定資産の帳簿価額を下げます。
これにより圧縮損が計上された初年度は税負担が少なくなりますが、翌年以降は減価償却費が少なくなる分だけ税負担は大きくなります。結果として税負担の総額は同じなので課税を繰り延べる効果となります。
圧縮記帳にはいくつかの適用ケースがあるのですが、FP検定では保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳について問われます。この制度は、法人が有する固定資産が滅失または損壊(以下、滅失等)したことにより保険金等(滅失等の日から
3年以内に支払いが確定したものに限る)の支払いを受け、滅失等の日から
保険金等の支払いを受けた事業年度の終了日までに、代替資産を取得するか、損壊を受けた固定資産や代替となるべき資産を改良した場合に、圧縮限度額の範囲内で保険差益の額をその期の損金とすることができるものです
(法人税法47条)。
圧縮限度額は以下の算式で計算します。まず受け取った保険金等のうち損害額を超過する部分である保険差益を計算し、その後、保険差益のうち代替資産の取得等に充てた割合を求めるイメージです。
最初に<資料>の中から対象となる金額を抜き出して保険差益を求めます。注意点は以下の2つです。
- 保険金等の額
- 事業の休廃業による収益減少を補填する保険金、棚卸資産の損害を補償する保険金は圧縮記帳の対象となりません。よって、企業費用・利益総合保険の保険金は対象外、火災保険の保険金のみが対象となります。
- 滅失・損壊で支出した費用
- 取り壊し費用、片付け費、消防費など直接関連している費用のみが対象となります。被害者への賠償金・見舞金等は圧縮記帳の対象外です。
対象となる保険金等の額が4,500万円、滅失に伴う費用が300万円、滅失した建物の簿価が2,000万円ですので、
保険差益=4,500万円-300万円-2,000万円=2,200万円
保険金等のうち代替資産を取得するために支出した額は4,500万円なので、圧縮限度額は、
2,200万円×
4,500万円4,500万円-300万円=2,200万円×1=
2,200万円
したがって[2]が正解です。
※保険金等の額を全て代替資産の取得に充てた場合には、右項の係数部分が1となるので保険差益がそのまま圧縮限度額となります。
- 適切。労働災害総合保険は、従業員の労働災害について政府労災保険等の上乗せ補償を行う企業向けの商品です。「法定外補償保険」と「使用者賠償責任保険」の2つの補償から構成され、どちらか一方の契約も可能です。
- 法定外補償保険
- 労災保険からの給付が、労働協約、就業規則等で定められる災害補償額に足りない場合、その不足額を支払ったことによる損失を補償する
- 使用者賠償責任保険
- 従業員から使用者責任を問われたことにより法律上の損害賠償責任が生じた場合に、その賠償金支払いにより生じた損失を補償する
使用者賠償責任保険は、労災に被災した従業員やその遺族からの損害賠償に備える保険であり、第三者への損害賠償は対象外です。 - 適切。生産物賠償責任保険(PL保険)は、被保険者が製造および販売によって他人に引き渡した物体的な物、または行った仕事の結果が原因となり、他人の生命や身体および財産を侵害してしまった際に負担する法律上の賠償責任を補償する保険です。
ビル改修工事の完了後、工事結果の不良により通行人が滑って転倒し、ケガをしたケースは、工事業者の「施工結果」による事故によって生じた損害になるので、生産物賠償責任保険の補償の対象となります。 - 適切。従業員が、業務遂行中に他人の身体に危害を及ぼしたり財物に損害を与えたことによる賠償責任は「施設所有(管理)者賠償責任保険」でカバーします。
したがって適切なものは「3つ」です。
- 適切。特定公社債の利子は、申告不要または申告分離課税のいずれかを選択できますが、申告分離課税を選択したものは、上場株式等の譲渡損失との損益通算や繰越控除の適用対象となります。
- [不適切]。特定公社債等の譲渡益・償還差益は申告分離課税の対象となっており、年間の譲渡益の合計に対して20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税率が適用されます。
- 適切。特定口座は、証券会社・銀行が1年間の投資信託や株などの売買での利益または損失を計算をしてくれるだけでなく、その内容をまとめた「年間取引報告書」も作成してくれて、2016年1月より公募株式投資信託に加えて、国債、地方債、外国国債、外国地方債、公募公社債、上場公社債等の債券および公社債投信についても特定口座での管理が可能となりました。
- 適切。従来の「株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」の規定が、「一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」と「上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」としてそれぞれ別の区分として規定されたことで、それまで可能であった上場株式と未上場株式間の譲渡損益の通算は、できないことになりました。
したがって不適切な記述は[2]です。
参考:金融所得一体課税の前(2015年以前)は以下のような取り扱いになっていました。
1. 特定公社債と上場株式等は損益通算できない
2. 特定公社債の償還益は非課税
3. 特定公社債は特定口座に受け入れできない
4. 上場株式等と非上場株式で譲渡損益の通算ができる- 適切。交付目論見書には、ファンドの目的・特色、投資のリスク、運用実績、手続・手数料等が記載されています。目論見書の様式では、信託報酬および申込手数料、解約手数料その他の手数料について、手数料の金額又は料率、徴収方法及び徴収時期並びに当該手数料を対価とする役務の内容を記載することとされています(特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令第25号の2様式、第4号様式)。
- [不適切]。交付運用報告書は、決算期ごとに作成し、投資者に交付しなければならないのが原則です(投信法規則25条の3)。しかし、毎月決算型のように計算期間が6カ月未満の投資信託は6月ごと、日々決算型投資信託のうち所定の要件を満たすものは1年ごとの作成交付でOKとされています(投信計算規則59条)。運用報告書(全体版)も同じです。
- 適切。運用報告書は2段階に分かれています。
- 運用報告書(全体版)
- 本来の運用報告書
- 交付運用報告書
- 期間中の運用経過や今後の運用方針など、運用報告書(全体版)のうち重要なものを記載した書面
交付運用報告書は書面交付が原則ですが、投資者の個別の同意がある場合には電磁的記録により提供することが可能です(投信法14条5項)。 - 適切。2014年12月からトータルリターン通知制度が開始され、販売会社は投資者に対して、投資信託のトータルリターンを原則として年1回以上通知することが義務付けられています。
したがって不適切な記述は[2]です。
- [適切]。デュレーション(Duration)を直訳すると「間隔」や「期間」という意味で、債券のデュレーションは、債券への投資資金を回収できるまでの平均期間を数値化したものです。債券のデュレーションは投資元本の平均回収期間を示すので、他の条件が同じならば、残存期間が長ければデュレーションは長くなり、残存期間が短ければデュレーションも短くなります。また、表面利率が低ければデュレーションは長くなり、表面利率が高ければデュレーションは短くなります。
- 不適切。割引債にはクーポンが付かないため、デュレーションは債券の残存期間と等しくなります。よって、残存期間が同じであれば、利息を得られない分だけ利付債よりも割引債のほうがデュレーションは長くなります。
- 不適切。金利が変化した場合、デュレーションが長い債券ほど債券価格が大きく変化します。しかし、実際の金利変化と価格との関係は線形ではなく非線形です。コンベクシティは、この金利変化率に対する債券価格の変化率を実際に近い形で表した曲線です。コンベクシティが大きい債券ほど、金利低下局面でより債券価格は上昇し、金利上昇局面でより債券価格が下落しにくくなります。
- 不適切。デュレーションでの近似の精度不足を補うためのものは「コンベクシティ」なので誤りです。
修正デュレーションとは、デュレーションを「1+最終利回り」で除して得られる値で、金利の変化に対する債券価格の変化(金利感応度)について表した指標です。修正デュレーションは、債券価格の変化率が金利変化率の何倍であるかを示すので、値が大きいほど金利変動に対する債券価格の変動率が大きいということになります。
したがって適切な記述は[1]です。
自己資本純利益率(ROE:Return On Equity)は、自己資本に対する当期純利益の割合を示す財務指標です。値が高いほど収益性が高いと判断されます。
ROE(%)=当期純利益自己資本×100
この問題ではどちらも与えられていませんが、売上高純利益率、使用総資本回転率、自己資本比率の3つの指標を表す式から次のように求めることが可能です(最後の自己資本比率だけが除算になることがポイントです)。
売上高純利益率×使用総資本回転率÷自己資本比率
=当期純利益売上高×売上高総資本÷自己資本総資本
=当期純利益売上高×売上高総資本×総資本自己資本
=当期純利益自己資本
=自己資本利益率
売上高純利益率は1.87%、使用総資本回転率は1.33倍、自己資本比率は30%なので、自己資本利益率(%)は、
1.87%×1.33÷30%×100=8.290333…%
(小数点以下第3位を四捨五入して)8.29%
したがって[4]が正解です。
配当割引モデルは、1株当たりの配当金額と期待収益率を用いて理論上の株価を求める株式評価方法です。配当割引モデルには「定額配当(ゼロ成長)」「定率成長」「多段階成長」という3つのモデルがありますが、本問で問われているのは、毎年一定の割合で配当額が増加すると仮定した定率成長配当割引モデルです。定率成長配当割引モデルでは、以下の式で理論株価を求めます。
理論株価=予想配当期待利子率-期待成長率
本問では、株価、予想配当、期待利子率(割引率)が与えられているので、各値を式に代入して期待成長率(g)を求めます。
1,000円=35円5%-g
1,000(0.05-g)=35
50-1,000g=35
-1,000g=35-50
-1,000g=-15
g=0.015=1.5%
したがって[2]が正解です。
- 不適切。ポートフォリオのリスクには非市場リスク(アンシステマティック・リスク)と市場リスク(システマティック・リスク)があります。分散投資をして最適ポートフォリオを組んでも、市場リスク(市場全体の値動きの影響)をゼロにすることはできません。
- 不適切。相関係数、共分散および2資産の標準偏差の間には以下の関係があります。
相関係数=共分散資産Aの標準偏差×B資産の標準偏差
この式を共分散について解く式に変換すると、
共分散=相関係数×資産Aの標準偏差×B資産の標準偏差
資産Aと資産Bの共分散は、資産Aと資産Bの相関係数に、資産Aの標準偏差および資産Bの標準偏差を乗じることで求めます。 - [適切]。効率的フロンティアとは、分散投資を実施したときに実現するポートフォリオの中で、同じリスクで最大のリターンを獲得できるポートフォリオの集合のことをいいます。
- 不適切。正規分布とは、「平均値±標準偏差」の範囲に全体の約68.3%、「平均値±標準偏差×2」の範囲に全体の約95.5%、「平均値±標準偏差×3」の範囲に全体の約99.7%が含まれる確率分布です。
収益率の変動が正規分布に従うと仮定した場合、次のような確率分布となります。- 約68.3%で「平均値±標準偏差」の範囲に収まる
- 10+20[%] ⇒ -10%~+30%
- 約95.5%で「平均値±標準偏差×2」の範囲に収まる
- 10+20×2[%] ⇒ -30%~+50%
- 約99.7%で「平均値±標準偏差×3」の範囲に収まる
- 10+20×3[%] ⇒ -50%~+70%
上記より、将来の収益率が「年率-30%から50%の範囲」に収まるのは「約95%の確率」であるといえます。
したがって適切な記述は[3]です。
時間加重収益率は、評価期間におけるキャッシュフローの流入・流出の影響を排除して、運用成果を評価する手法です。いくつかの計算方法がありますが、厳密法では以下の関係式に基づいて、評価期間における1年当たりの収益率rを算出します。
(1+r)
n=
第1期末の時価総額第1期当初の元本×
第2期末の時価総額第2期当初の元本×…×
第n期末の時価総額第n期当初の元本設問では2年間の運用ですからn=2となります。上記式の各値には次の値を使用します。
- 第1期当初の元本 100万円
- 第1期末の時価総額 120万円
- 第2期当初の元本 120万円-20万円=100万円
- 第2期末の時価総額 80万円
実際に計算して時間加重収益率を求めます。
(1+r)
2=
120万円100万円×
80万円100万円 (1+r)
2=1.2×0.8=0.96
1+r=
0.96… 1+r=0.979…
r=0.979…-1
r=-0.0202… ⇒ -2.02…%
(小数点以下第2位を四捨五入)
-2.0%
したがって[3]が正解です。
- 適切。簡易申告口座は、源泉徴収選択口座と異なり、上場株式等の配当等や特定公社債等の利子等を受け入れることはできません。
- 適切。簡易申告口座から源泉徴収選択口座への変更は、当該口座において毎年最初の売却取引および信用取引等の差金決済、現渡し等を行う前であれば行うことができます。
- [不適切]。源泉徴収選択口座では、上場株式等の配当等と当該口座内の上場株式等の譲渡損失の金額は損益通算できますが、配当等の支払の都度ではなく、年初にまとめて1回損益通算を行います。
- 適切。源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡益は、確定申告をしない場合、合計所得金額に加算されないため、所得税の配偶者控除や扶養控除等の適用の有無の判定に影響はありません。
したがって不適切な記述は[3]です。
- 適切。消費者契約法に関し、契約を取り消すことができる不当な勧誘に「不実告知」があります。不実告知とは、重要事項について事実とは異なることを告げることで、消費者がその内容が事実であると誤認したときは、この契約を取り消すことができます(消費者契約法4条1項1号)。
- 適切。消費者契約法に関し、契約を取り消すことができる不当な勧誘に「過量契約」があります。過量契約とは、日常の生活において必要とされる分量や回数などを著しく超える契約で、事業者が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合、消費者はこの契約を取り消すことができます(消費者契約法4条4項)。
- 適切。事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項や、有償契約である場合に、契約の目的物に契約不適合があることにより生じた消費者の解除権を放棄させる条項は、買主に著しく不利なので無効になります(消費者契約法8条)。
- [不適切]。消費者契約法は、勧誘時の不当な勧誘により消費者は契約を取り消すことができます。この取消権を行使することができる期間は以下の通りです(消費者契約法7条1項)。
- 消費者が追認をすることができる時から1年間
- 当該消費者契約の締結の時から5年間
追認できるときから1年となったのは2017年(平成29年)6月に施行された改正消費者契約法からです。それ以前は6カ月でした。
したがって不適切な記述は[4]です。
- [適切]。マイカー・自転車通勤者の通勤手当非課税となる1か月当たりの限度額は、片道の通勤距離に応じて、非課税限度額が定められています。具体的には、片道2㎞以上10km未満の4,200円から片道55km以上の31,600円まで7区分です(所得税法令20条の2第2号)。
- 不適切。基本手当や高年齢雇用継続基本給付金などの雇用保険から支給を受ける金銭や健康保険から受ける金銭は、その全額が非課税となります(雇用保険法12条)。
- 不適切。収入保障保険の年金受給権は、相続段階において将来受け取る年金の総額を現在価値に割り引いた 価額に対して相続税が課されます。2年目以降に受け取る年金は、相続税により課税対象となった以外の部分(運用益部分)に対して雑所得として所得税が課税されます。
- 不適切。ふるさと納税は、受け取った返礼品は一時所得として課税対象となります。ただし、一時所得には最高50万円の特別控除があるため、一時所得の合計が50万円を超えなければ税額はゼロとなります。なお、法改正により2019年6月から還元率は3割以下に制限されていますが、これと課税関係は無関係です。
したがって適切な記述は[1]です。
- 不適切。青色申告者ではない個人事業主は、生計を一にする15歳以上の親族がその事業に従事している場合に一定の条件を満たせば白色専従者控除の適用を受けることができます。白色専従者控除の控除額は以下のいずれか低い額です。本肢は「高い」としているので誤りです。
- 配偶者の場合は86万円、配偶者以外は1人につき50万円
- 事業所得の金額事業専従者の数+1の式で計算した金額
- 不適切。個人事業主が事業主本人や事業専従者に対して支払う退職金は、労務の対価として適正な金額であった場合でも、事業所得の必要経費に算入することはできません。
- 不適切。個人事業主が生計を一にする配偶者その他親族に支払う地代家賃などは、必要経費に算入することはできません。逆に受け取っても収入として考えません。親族等に支払った場合でも生計を一にしていない場合には必要経費になるので注意しましょう。
したがって適切なものは「0(なし)」です。
- [適切]。2016年(平成28年)4月1日以降に取得した建物附属設備および構築物は、定額法によって減価償却しなければなりません。それ以前は定率法も認められていましたが、改正により一本化されています。
- 不適切。一括償却資産とは、10万円以上20万円未満で取得した減価償却資産について認められる償却方法で、耐用年数によらず3年で均等償却するものです(使用期間の月割りもなし)。例えば15万円で買った業務用パソコンを一括償却資産とした場合、1年目5万円、2年目5万円、3年目5万円と償却していく感じです。
一括償却資産は、通常の耐用年数に応じた減価償却と選択適用であり、必ずしも一括償却資産として減価償却しなければならないわけではありません。本肢は、強制的に一括償却資産として処理するという記述なので誤りです。 - 不適切。常時使用する従業員数が500人以下の青色申告者は、取得価格30万円未満の少額減価償却資産について、購入・使用開始した年度に一括して経費計上する特例が使えます。この少額減価償却資産の特例を適用できるのは、1年間で取得価額の合計額が300万円に達するまでです。本肢は「500万円」としているので誤りです。
- 不適切。所得税において、既に選定している減価償却資産の償却方法を変更しようとする場合には、変更しようとする年の3月15日までに提出する必要があります。前年の12月31日までではなく、「所得税の青色申告承認申請書」の提出期限と同じです。なお、法人が償却方法を変更しようとする場合には、新たに償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までが提出期限となります。
したがって適切な記述は[1]です。
損益通算する際には、控除する所得の順序が定められています。具体的には、①経常所得(事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、給与所得、雑所得)と、②臨時所得(総合譲渡所得、一時所得)、③山林所得、④退職所得に分け、下図のとおりの順序で通算を行います。
したがって、最初に経常・臨時のグループごとに第1次通算を行います。
- ①経常グループ
- 事業所得から不動産所得の損失を差し引いて求めます。損益通算の計算上、土地等の取得に要した借入金の利子は損益通算の対象外とされているので、不動産所得の損失のうち損益通算が可能額は「100万円-20万円=80万円」です。また雑所得の損失は全部が損益通算の対象外です。
よって、経常グループの合計所得は「50万円-80万円=▲30万円」です。 - ②臨時グループ
- 一時所得の180万円
次に第二次通算として、臨時グループの180万円から経常グループの▲30万円を差し引きます。
180万円-30万円=150万円
損益通算後に残ったのは一時所得の150万円のみです。一時所得は総収入金額に算入する際に1/2にするので、総所得金額は、
150万円×1/2=
75万円
したがって[4]が正解です。
- 適切。医療費控除は、本人に加え、配偶者や生計を一にする親族に係る医療費を支払った場合に控除の対象となります。したがって、長女に係る医療費も納税者の医療費控除の対象となります。
- 適切。社会保険料控除は、納税者が本人および生計を一にする親族に係る社会保険料を支払った場合に控除の対象となります。したがって、長女に係る国民年金保険料も納税者の社会保険料控除の対象となります。
- [不適切]。小規模企業共済等掛金控除の対象となる確定拠出年金の掛金や小規模企業共済の掛金は、加入者本人の口座から引き落とされる仕組みになっています。このため必ず加入者本人が支払うことになります。よって、親族の分の掛金を小規模企業共済等掛金控除の対象とすることはできません。
- 適切。地震保険料控除の対処となる契約は、自己や自己と生計を一にする配偶者その他の親族の所有する家屋で常時その居住の用に供するものまたは生活に通常必要な家具、じゅう器、衣服などの生活用動産を保険や共済の対象としているものです。よって、配偶者が有する家屋を目的とする地震保険の保険料も地震保険料控除の対象とすることができます。
したがって不適切な記述は[3]です。
- 不適切。「高齢者等居住改修工事等に係る税額控除」は、一定のバリアフリー改修工事を行う者が、50歳以上の者、介護保険法に規定する要介護または要支援の認定を受けている者のほか、障害者である者やその者の親族で高齢者等と同居している者も含まれます。
- 不適切。「多世帯同居改修工事等に係る税額控除」の適用対象となる工事等は、改修工事に要した費用(補助金等があるときは控除後の金額)が50万円を超えるものが対象となります。
- 不適切。「多世帯同居改修工事等に係る税額控除」の控除額は、多世帯同居改修工事等に係る標準的費用額である250万円の10%相当額となり、25万円が限度とされています。
- [適切]。「高齢者等居住改修工事等に係る税額控除」「一般断熱改修工事等に係る税額控除」「多世帯同居改修工事等に係る税額控除」のいずれも、その年分の合計所得金額が3,000万円を超える場合は適用を受けることができません。住宅ローン控除は所得要件が2,000万円以下に変更されましたが、これらは従前のままです。
したがって適切な記述は[4]です。
- 適切。同族会社の役員等が会社に資金を貸し付け、その会社から役員給与のほかにその利子の支払いを受けている場合、その金額の多寡にかかわらず(20万円以下であったとしても)確定申告を行う必要があります。役員が同族法人から受け取る家賃も同様です。なぜなら、普通の人と同じように20万円以下は無申告でOKとしてしまうと、同族法人から役員に対して毎年20万円のお金を無税で移転できてしまうからです。
- 適切。所得税の還付申告書は、課税期間の翌年1月1日から5年間提出することができます。
- 適切。確定申告により納付すべき所得税額の2分の1以上の金額を納期限(原則は3月15日)までに納付した場合は、期限までに納税地の所轄税務署長に延納届出書を提出することで、残りの額の納付をその年の5月31日まで延期することができます。
- [不適切]。税務署長が行った更正や決定など処分に不服がある場合は、処分の通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内に国税不服審判所長に対する審査請求、もしくは、税務署長に対する再調査の請求のどちらかを納税者が選択して行うことができます。
したがって不適切な記述は[4]です。
青色申告法人の欠損金の繰越控除に関する出題ポイントは下表の通りです。
- [不適切]。2018年4月1日以降に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は10年です。これは中小法人等であるかどうかによって変わりません。
- 適切。2018年4月1日以降に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は10年です。本肢の事業年度開始日は[$y]年中ですから、欠損金額を繰越控除できる期間は最長10年間です。
- 適切。資本金が1億円を超えているので、繰越控除できる欠損金額は、繰越控除前の所得金額の50%が限度となります。繰越控除できる欠損金額は「1,200万円×50%=600万円」ですので、繰越欠損金控除後の繰越欠損金の残高は「2,000万円-600万円=1,400万円」です。
- 適切。資本金が1億円以下なので、繰越控除できる欠損金額は、繰越控除前の所得金額の全額が限度となります。繰越控除できる欠損金額は1,000万円ですので、繰越欠損金控除後の繰越欠損金の残高は「1,500万円-1,000万円=500万円」です。
したがって不適切な記述は[1]です。
簡易課税制度では、事業者の事業を6つに区分し、それぞれ定められているみなし仕入れ率により控除対象仕入れ税額を計算します。
営む事業区分が2種類以上にわたる場合には、原則として「各事業区分に係る消費税額×各みなし仕入れ率の総和」が仕入控除額となりますが、特定の事業区分の割合が大きい際に適用できる以下の特例的計算方法があります。
- 2種類以上の事業を営み、1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上の場合
- その1業種のみなし仕入れ率を全体の課税売上高に対して適用できる
- 3種類以上の事業を営み、特定の2種類の事業の課税売上高の合計額が全体の75%以上の場合
- ①2業種のうち、みなし仕入れ率が高い方の事業の課税売上高については、そのみなし仕入れ率を適用する。
②それ以外の事業の課税売上高については、2業種のうち低い方のみなし仕入れ率を適用する
本問では、卸売業と小売業の課税売上高の合計「2,000万円+1,200万円=3,200万円」が全体の課税売上高4,000万円の80%を占めるので、上記2つ目の特例的計算方法を適用可能です。
まず、事業区分ごとに課税売上高に係る消費税額を計算します。
- 卸売業 2,000万円×10%=200万円
- 小売業 1,200万円×10%=120万円
- サービス業 800万円×10%=80万円
この消費税額の合計から仕入税額控除を差し引いた金額が納付税額となります。
卸売業と小売業では、卸売業の方がみなし仕入れ率が高いので、200万円に卸売業の90%を、それ以外に小売業の80%を乗じて仕入税額控除を求めます。
200万円×90%+(120万円+80万円)×80%
=180万円+160万円=340万円
X株式会社が受け取った消費税の総額「4,000万円×10%=400万円」から仕入税額控除を差し引いて、
400万円-340万円=
60万円
したがって[2]が正解です。
また、課税売上高ベースで計算して、最後に消費税率を掛けても以下のように計算可能です。こちらの方が早く求められるかもしれません。
2,000万円×90%+(1,200万円+800万円)×80%
=1,800万円+1,600万円=3,400万円
(4,000万円-3,400万円)×10%=60万円
- 適切。不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用を前提として把握される価格を標準として形成されます(最有効使用の原則)。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものです。
- 適切。原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法です。再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額です。
- 適切。取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法です。
不動産鑑定評価基準において、取引事例は、原則として近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るもののうちから選択するものとされています。 - [不適切]。直接還元法は、家賃収入から総費用を差し引いた1年間の純収益を、還元利回り(期待収益率)で除して算出します。将来の純収益を現在価値に割り戻すことによって、対象不動産の収益価格を求める方法です。
求める不動産の収益価格=一期間の純収益還元利回り
直接還元法の適用において還元対象となる一期間の純収益と、それに対応して採用される還元利回りの間には、整合性がなければならないので、償却前の純収益を割り戻す場合には、償却前の純収益に対応する還元利回りを使用しなければなりません。本肢は、償却前純収益を償却後純収益の還元利回りで除すとしているので誤りです。
したがって不適切な記述は[4]です。
- 不適切。依頼者に対する業務処理状況の報告は、専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上しなければなりません(宅建業法34条の2第9項)。本肢は専属専任媒介契約ですので、2週間に1回以上では違反となります。
- 不適切。(専属)専任媒介契約の有効期間は3カ月が上限です。3カ月を超える期間を設定したときは3カ月とみなされます。これは依頼者からの申出のときや更新時も同様です。また契約の自動更新は認められていません(宅建業法34条の2第4項)。
- [適切]。一般媒介契約は、依頼者がほかの宅建業者に重ねて依頼をしてもよい契約です。一般媒介契約には明示型と非明示型があり、明示型はほかにどの宅建業者に依頼しているのかを知らせる義務を依頼者が負うもの、非明示型は知らせる義務のないものです。特約がなければ非明示型となります。
- 不適切。宅建業者が一定の事項を指定流通機構に登録しなければならないのは(専属)専任媒介契約を締結したときです。一般媒介契約では指定流通機構への登録は義務ではありません。指定流通機構への登録するまでの期間は、専任媒介契約では契約日から休業日を除いて7日以内、専属専任媒介契約では契約日から休業日を除いて5日以内と定められています(宅建業法規則15条の10)。
したがって適切な記述は[3]です。
- 適切。農地や採草放牧地を耕作する目的で所有権を取得する場合、原則として農業委員会の3条許可を受ける必要があります(農地法3条)。
- 適切。農地を転用する場合、原則、都道府県知事等の許可が必要になりますが、市街化区域内の農地については、あらかじめ農業委員会に届出をすれば、4条許可は不要となります(農地法4条1項8号)。
- 適切。生産緑地地区内では、建築物の建築、宅地造成等、埋立て・干拓を行う際に原則として市町村長の許可が必要となります(生産緑地法8条1項)。農林漁業を営むための施設は、設置又は管理に係る行為で良好な生活環境の確保を図る上で支障がないと認めるものに限り許可が不要となりますが、建築する場合には許可が必要となります(生産緑地法8条2項)。
- [不適切]。生産緑地の所有者は、生産緑地地区に関する都市計画の告示の日から30年を経過した場合、市町村長に対して当該生産緑地を時価で買い取るべき旨を申し出ることができます(生産緑地法10条1項)。本肢は「20年」としているので誤りです。
したがって不適切な記述は[4]です。
- 不適切。第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域または田園住居地域内における建築物の高さは、原則として、10mまたは12mのうち都市計画で定められた限度を超えることができません(建築基準法55条)。本肢は一方を「15m」としているので誤りです。
- [適切]。建築物が異なる用途地域にわたる場合、高さ制限、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限はそれぞれの用途地域に属する部分ごとに適用されます(建築基準法56条5項)。
- 不適切。隣地斜線制限は、隣りとの日照や採光、通風等、良好な環境を保つため建築物の高さを規制するものです。用途地域や都市計画などによって、それぞれの上限値が決められており、用途地域の指定のない区域内でも規制を受けます(建築基準法56条1項2号ニ)。
- 不適切。天空率とは、ある位置から建物を見た時の全天に対する空の面積の比率を表しています。
道路斜線や隣地斜線による高さの制限に対して、天空率によってこれらと同等上の環境が確保できることが判断できれば、斜線制限は適用しないことになりますが、高度地区制限や日影規制の対象になる建物には、天空率によって確保できることがわかっても適用されます。
したがって適切な記述は[2]です。
- 適切。日影規制の対象区域内に同一敷地内に2以上の建築物がある場合は、これらの建築物を1つの建築物とみなして全体として日影規制が適用されます(建築基準法56条の2第2項)。
- 適切。第一種・第二種中高層住居専用地域内の建築物は、原則として北側斜線制限の適用を受けますが、日影規制が適用される高さ10mを超える建築物については、北側斜線制限は適用されません(建築基準法56条1項3号)。
- [不適切]。天空率とは、ある位置から建物を見た時の全天に対する空の面積の比率を表しています。天空率に適合する建築物について制限が緩和されるのは、道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限の3つであり、日影規制には適用されません(建築基準法56条7項)。
- 適切。日影規制の対象区域外にある高さ10mを超える建築物が、基準となる冬至日において、日影規制の対象区域内の土地に日影を生じさせている場合は、当該対象区域内にある建築物とみなされ日影規制が適用されます(建築基準法56条の2第4項)。
したがって不適切な記述は[3]です。
不動産取得税は、不動産の所有権を得た人に対して課される税金なので、借地権の設定時には課されず、不動産の所有権を取得したときにだけ課されます。Aさんは底地の買取りにより土地全体の所有権を得ることになるので、土地全体を取得したものとして不動産取得税が課されます。
不動産取得税の税額は「固定資産税評価額×税率」の式で求めます。不動産取得税の標準税率は4%ですが、宅地については税率を3%にする軽減制度と、課税標準を2分の1にする軽減制度が適用されます。
買い取った宅地の固定資産税評価額は4,000万円ですので、不動産取得税の税額は、4,000万円を2分の1にした額に税率3%を乗じて得た額となります。
4,000万円×1/2×3%=60万円
したがって[3]が正解となります。
まず収用等に伴って利用できる2つの特例の概要を確認しておきます。
- 課税繰延べの特例
- 収用等により交付される補償金等の額が、①代替資産の取得価額以下であるときは、その譲渡した資産の譲渡がなかったものとされ、②その補償金等の額が、代替資産の取得価額を超えるときは、その超える部分に相当する部分の譲渡があったものとして、譲渡所得を計算できる制度
- 特別控除の特例
- 収用等により資産を譲渡した場合において、その譲渡が事業施行者等から最初に買取り等の申出があった日から6か月以内に行われている場合など、一定の要件を満たすときは、その資産の譲渡所得等から最高5,000万円を控除できる制度
- 適切。個人が土地建物を収用等されたことにより取得する補償金のうち、"課税繰延べの特例"の適用の対象となるものは、原則、対価補償金のみですが、それぞれの一定の要件に該当すれば、収益補償金、経費補償金、移転補償金等も対価補償金として取り扱うことができます。
- 適切。"課税繰延べの特例"の適用を受けるためには、原則として、土地建物の収用等のあった日から2年以内に代替資産を取得するか、取得する見込みでなければなりません。ただし、収用等のあった日よりも前に取得したものであっても、買い取りの申し出などがあった日以後に取得したなど一定の要件に該当すれば代替資産として認められます。
- 適切。"特別控除の特例"の適用を受けるためには、最初に買取り等の申出を受けた日から原則6カ月以内に土地建物を譲渡しなければなりません。
- [不適切]。"課税繰延べの特例"と"特別控除の特例"は重複して適用することはできず選択適用となります。収用等された土地建物の譲渡価額よりも代替資産の取得価額が少ない場合でも同様です。
したがって不適切な記述は[4]です。
DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法は、一定の保有期間中に生み出される「純収益の現在価値の総和」と、保有期間終了後の「復帰価格(将来の転売価格)の現在価値」を合算して、投資不動産の収益価格を算出する手法です。
設問の投資で得られる収益は次のとおりです。
- 1年後 … 1,000万円
- 2年後 … 1,000万円
- 3年後 … 1,000万円+1億6,000万円=1億7,000万円
現価係数を使ってそれぞれを現在価値に割り引くと、
1,000万円×0.943+1,000万円×0.890+1億7,000万円×0.840
=943万円+890万円+1億4,280万円
=1億6,113万円
したがって[3]が正解です。
- 適切。定期贈与契約は、贈与者または受贈者の死亡によってその効力を失います(民法552条)。
- 適切。負担付贈与を受けた場合は、贈与財産の価額から負担額を控除した価額に課税されることになります。例えば、500万円の負担で3,000万円の土地を受贈した場合には、贈与税の取得価格は「3,000万円-500万円=2,500万円」です(相基通21の2-4)。
- 適切。負担付贈与があった場合の遺留分算定基礎財産額は、贈与された財産の価額から負担分を控除した金額となります(民法1045条)。
- [不適切]。遺贈の法的な性質は贈与者の一方的な意思表示により成立する単独行為ですが、死因贈与契約は受贈者の合意を必要とする契約行為です。
したがって不適切な記述は[4]です。
- 適切。受贈者は、特定贈与者ごとに暦年課税にするか相続時精算課税の適用を受けるかを選択できます。したがって、85歳の祖父および62歳の父のそれぞれの贈与財産について相続時精算課税の適用を受けることができます。
- 適切。相続時精算課税制度の適用を受けると暦年課税の基礎控除の適用がなくなるため、それ以降は受けた贈与の額にかかわらず贈与税の申告書を提出しなければなりません。贈与税の申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間です。
- [不適切]。相続時精算課税の適用を受けた贈与された財産は、贈与時の価額で相続税の課税価格に加算しますが、加算後の相続税の課税価格が、遺産に係る基礎控除額以下であれば申告は不要となります。
- 適切。特定贈与者の死亡以前に相続時精算課税適用者(受贈者のこと)が死亡した場合には、その者の相続人が相続時精算課税に関する権利義務を承継するのが原則ですが、相続人の中に特定贈与者がいる場合、その特定贈与者は権利義務を承継しません。自分が死んだときの精算処理を自分ですることになってしまうからです。このため、特定贈与者のみが相続人となるケースでは、死亡した相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の権利義務は消滅するという帰結になります(相続税法21条の17)。
したがって不適切な記述は[3]です。
- 適切。自分からみて、父母や祖父母等の尊属や年長者である兄姉を養子とすることはできません(民法793条)。
- [不適切]。未成年者を養子とする場合には、その子の住所地域を管轄する家庭裁判所の許可を得なければなりませんが、自己または配偶者の直系卑属(孫や連れ子など)を養子にする場合は家庭裁判所の許可は不要になります(民法796条)。
- 適切。普通養子縁組では、養子縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得し、養親に対する相続権を有します(民法809条)。また、養子と実の父母との親族関係も終了しないので、養親だけでなく、実の父母が死亡したときにも相続人となります。
- 適切。養子縁組を行うと養子と養親の親族の間に親族関係が発生しますが、養親と養子の実親族の間には親族関係は生じません(民法727条)。このため、養親と養子縁組前に生まれた養子の子との間には何ら法定血族関係はなく、養子縁組前に生まれた養子の子は被相続人の直系卑属ではありません。よって、代襲相続は生じません。
なお、養子は養子縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得するので、養子縁組の後に生まれた養子の子は、養親の直系卑属とみなされるという違いがあります。
したがって不適切な記述は[2]です。
- 申告は不要。相続時精算課税で非課税となった財産は、贈与時の価額で相続税の課税価格に加算します。相続税の課税価格の合計額は「3,000万円+1,000万円=4,000万円」であり、遺産に係る基礎控除額「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」未満となるため申告は不要です。
- 申告は不要。被保険者を相続人とする生命保険契約による死亡保険金を受け取った場合は、「500万円×法定相続人の数」までは非課税となります。相続人は2人なので、死亡保険金のうち相続税の課税価格に加算される金額は「1,000万円-500万円×2=1,000万円」です。相続税の課税価格の合計額は「3,000万円+1,000万円=4,000万円」であり、遺産に係る基礎控除額「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」未満となるため申告は不要です。
- 申告が必要。「配偶者の相続税額の軽減」の適用を受けることにより、算出される相続税額がゼロ(0円)になる場合には、相続税の申告が必要です。
本肢は、特例適用前の課税価格が5,000万円、遺産に係る基礎控除額が「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」と、特例適用を受けてはじめて算出税額がゼロになるので申告しなければなりません。
したがって相続税の申告をしなければならないものは「1つ」です。
- 不適切。被相続人に支給されるべきであった退職手当金や功労金などを遺族が受け取ったときは相続税の課税対象になります。死亡保険金と同様に相続財産ではなく遺族の固有財産ですが、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。死亡保険金と同様に本規定の対象とならないという点は適切です。
- 不適切。弔慰金は社会通念上相当と認められる額であれば相続税の課税対象となることはありません。
しかし、普通給与の6カ月分(業務外での死亡の場合)を超える額については死亡退職手当とみなされます。よって、普通給与の6カ月分を超えた額だけが死亡退職金の非課税金額の規定の適用対象となります。本肢は弔慰金全部が対象となるとしているので誤りです。 - 不適切。弟は相続放棄をしているので本規定の適用を受けられませんが、放棄した者も「500万円×法定相続人の数」の頭数には加えます。よって、死亡退職金の非課税限度額は「500万円×3人=1,500万円」となり、相続税の課税価格に算入すべき金額は「3,000万円-1,500万円=1,500万円」となります。
- [適切]。死亡保険金や死亡退職金の非課税の規定の適用を受け、相続税の課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額以下となる場合には、相続税の申告は不要です。
一方「配偶者の相続税額の軽減」や「小規模宅地の評価減の特例」の適用を受けることにより、相続税の課税価格が遺産に係る基礎控除額以下となる場合には、申告が必要となります。
したがって適切な記述は[4]です。
- [不適切]。課税時期において総資産価額(相続税評価額)に占める土地等の価額の合計額が一定以上の会社を土地保有特定会社といいますが、当該会社の規模や業種、土地の保有割合により特定の評価会社に該当するか異なります。
【土地保有特定会社となる土地の保有割合】- 大会社:70%以上
- 中会社:90%以上
- 小会社:業種・規模・土地保有割合により異なる
- 適切。課税時期において総資産価額(相続税評価額)に占める株式等の価額の合計額が一定以上の会社を株式保有特定会社といいますが、会社の業種や規模にかかわらず、株式等の価額の合計額の割合が50%以上である会社は特定の評価会社に該当します。
- 適切。特定会社の判定は株式や土地の保有割合に応じ判定されるほか、課税時期において開業後3年未満の評価会社は、会社の業種や規模にかかわらず特定の評価会社に該当します。
- 適切。特定の評価会社に該当する評価会社が休業中の場合は、配当還元方式により算出した価額によって評価することはできず、純資産価額方式によって評価しなければなりません。休業中は配当が少ないからです。
したがって不適切な記述は[1]です。
- 不適切。土地保有特定会社とは、相続税評価額ベースの資産総額に対する土地等の価額の割合が一定基準以上である会社です。大会社では70%以上、中会社では90%以上、小会社は、純資産額が卸売業で20億円以上、それ以外の業種では15億円以上あり、かつ、土地保有割合が70%を超えるときに土地保有特定会社と判定されます。
- [適切]。株式保有特定会社とは、相続税評価額ベースの資産総額に対する株式等の価額の割合が50%以上である会社です。大・中・小会社による区別はありません。
- 不適切。開業後3年未満の会社の株式は、会社の業種や規模にかかわらず、同族株主が取得した場合には純資産価額方式、同族株主以外の株主が取得した場合には配当還元方式によって評価します。本肢は、同族株主以外→純資産価額方式と説明しているので誤りです。
- 不適切。開業前または休業中である評価会社の株式は、取得した者が同族株主であるかどうかにかかわらず純資産価額方式によって評価します。休業中等の場合、正当と認められる額の配当が支払われていないことがあるため、直前2年間の配当額をベースに算定する配当還元方式は使えません。よって、純資産額により評価することになっています。
したがって適切な記述は[2]です。
- 適切。被相続人と同居していた親族が取得した場合は、申告期限まで継続して居住し、相続税の申告期限まで保有することで要件を満たすので、本特例の適用を受けることができます。「自己の所有する家屋に住んだことがない」という条件は、同居していない親族が取得した場合の条件です。
- 適切。本特例は、民法上の親族が取得した場合に適用されるので、内縁関係や事実婚の配偶者、親族でない者は同居していたとしても適用を受けることはできません。
- [不適切]。貸付事業用宅地等の対象となる貸付事業は、不動産貸業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業です。新たに貸付事業用に供したのが相続開始前3年以内ではない、または被相続人が準事業以外の貸付事業を3年を超えて行っていた場合であれば、貸付事業用宅地等として本特例の適用を受けることができます。
- 適切。要介護認定もしくは要支援認定を受けて老人ホーム等の施設に入所するなど一定の事由が認められる場合には、相続開始時点で被相続人が居住していなかったとしても、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します。よって、本肢のケースは本特例の適用を受けることができます。
したがって不適切な記述は[3]です。
株式会社の議決権の
10分の9以上を有する株主(特別支配株主)は、対象会社の他の少数株主等に対し、その保有する株式や新株予約権の全部を売り渡すよう請求することができます。これが「特別支配株主の株式等売渡請求制度」です。
本制度は会社の買収において使われることを想定しています。会社の買収は、①公開買付けで対象会社の支配権を得られるだけの株式を取得する、②株主総会でキャッシュ・アウト(対価を払って株式を買い取ることで少数株主を追い出す)を決議するという2段階で行われることが多いです。しかし、9割の議決権を有している場合には株主総会の帰結が決まっているも同然なので、②の株主総会招集の手間を省いて簡略的にキャッシュ・アウトができるようにしたのが本制度の趣旨です(会社法179条~179条の10)。
- 適切。特別支配株主とは、定款でそれを上回る数の定めのある場合を除き、総株主の議決権の10分の9以上を有する株主を指します。
- 適切。議決権の10分の9以上を有する特別支配株主は、所定の手続きを経ることで、他の少数株主が所有する株式等の全部を当該株主等の承諾なしに取得することができます。
- [不適切]。本制度では、特別支配株主が行う株式等売渡請求について対象会社に承認を求めるプロセスがあります。この会社の承認は、取締役会設置会社にあっては取締役会の決議による必要があります(取締役会がない会社では代表取締役の承認)。そもそも株主総会を回避するための制度なので、株主総会の決議が必要では本末転倒です。
- 適切。株式等売渡請求は、特別支配株主が対象会社に対して所定の事項を通知して承認を求めることから始まります。当該通知を承認した対象会社は、取得日の20日前までに売渡株主等に対して、承認した旨、特別支配株主の名前、取得日、対価の額、算定方法等その他所定の事項を通知しなければなりません。その後撤回等がなければ、定めた取得日に特別支配株主は売渡株式等の全部を取得することになります。
したがって不適切な記述は[3]です。