損害保険(全64問中55問目)

No.55

X株式会社(以下、「X社」という)が所有する建物等の火災保険から受け取る保険金と圧縮記帳に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、契約している火災保険は、契約者(=保険料負担者)および保険金受取人がX社である。
2015年10月試験 問15
  1. 工場建物および建物内に収容されている機械が全焼し、同一事業年度中に受け取った火災保険金で焼失前と同様の工場建物および同一の機械を新たに取得した場合、建物については圧縮記帳の対象となるが、機械については圧縮記帳の対象とならない。
  2. 支払われる保険金等の額が確定する前に、滅失等をした所有固定資産に係る代替資産の取得等をした場合は、圧縮記帳の対象とならない。
  3. 保険金等で取得した代替資産等の圧縮限度額を算出する際、「所有固定資産の滅失または損壊により支出する経費」には、滅失等をした所有固定資産の取壊費用、焼跡の整理費用や類焼者に対する賠償金などの費用が含まれる。
  4. 保険金額が5,000万円、焼失前建物の帳簿価額が1,500万円の工場建物が全焼し、その焼跡の取り片づけに500万円の費用がかかった。その後、同一事業年度中に保険金額全額を保険金として受け取り、代替建物を3,600万円で取得した。この場合の圧縮限度額は2,400万円となる。

正解 4

問題難易度
肢114.5%
肢213.4%
肢313.4%
肢458.7%

解説

  1. 不適切。機械も対象です。圧縮記帳は、法人所有の建物、車両、機械など、固定資産の損害に対する保険金を受け取り、一定期間内に同一種類の代替資産を取得(改良)する場合に認められます。建物と機械はどちらも固定資産であり、それぞれ同一種類の代替資産を取得しているので圧縮記帳の対象となります。
    ※減価償却資産の耐用年数表の区分によります
  2. 不適切。保険金受取り前の取得も対象です。代替資産の取得は、滅失の日から保険金等の額の支払いを受けた事業年度の終了日までに行う必要があります。よって、滅失後、保険金の額が確定する前に取得した代替資産も圧縮記帳の適用対象となります(法人税法47条1項)。
  3. 不適切。類焼者に対する賠償金は含まれません。圧縮限度額を計算するときの保険差益の額は、受け取った保険金から「所有固定資産の滅失または損壊により支出する経費」を控除して求めます。この控除額に含まれるのは、滅失等のあった固定資産の①取壊し費用や②焼け跡の整理費、③消防費など固定資産が滅失等したことに直接関連して支出される費用に限られます。ケガ人に対する見舞金や被災者への弔慰金、類焼者への賠償金などの間接的な費用は含まれません。
  4. [適切]。圧縮限度額は、次の算式で求めます。
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    まず、保険差益を求めます。
     5,000万円-500万円-1,500万円=3,000万円
    続いて、上記で求めた保険差益の額を代入して圧縮限度額を求めます。
     3,000万円×3,600万円5,000万円-500万円=2,400万円
    圧縮限度額は2,400万円なので適切な記述です。
したがって適切な記述は[4]です。