各種所得の内容(全46問中3問目)

No.3

居住者に係る所得税の不動産所得に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
2024年5月試験 問26
  1. 広告等の看板を設置するため、所有する賃貸アパートの屋上や塀等を使用させることにより受け取る使用料は、不動産所得に該当する。
  2. 所有する賃貸アパートを取り壊したことにより生じた損失の金額は、当該貸付が事業的規模に満たない規模で行われていた場合、不動産所得の金額の計算上、その損失の金額を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入することができる。
  3. 居住の用に供していた建物を取り壊して賃貸アパートを建築し、貸付の用に供した場合、自宅の取壊しに要した費用は、不動産所得の金額の計算上、必要経費とはならないが、賃貸アパートの取得価額に算入することができる。
  4. 所有する土地に他者の建物の所有を目的とする借地権を設定し、その対価として当該土地の時価の2分の1以下の権利金を受け取ったことによる収入は、不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。

正解 3

問題難易度
肢15.5%
肢216.6%
肢364.9%
肢413.0%

解説

  1. 適切。広告等の看板を設置するために、家屋の屋上、塀、側面などを使用させることによって受け取る使用料は、不動産所得に該当します(所基通26-5)。
  2. 適切。不動産所得において貸付不動産の取壊し・除却で生じた損失は、不動産の貸付が事業的規模で行われているかどうかによって、必要経費に算入できる金額が変わります(所得税法51条)。
    事業的規模
    損失全額を必要経費にできる
    ⇒赤字になれば他の所得と損益通算できる
    上記以外
    その損失を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費にできる
    ⇒損失を使って不動産所得を赤字にすることはできない
    本肢は事業的規模に満たない場合なので、その損失の金額を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入することができます。
  3. [不適切]。個人が支出した建物の建替え等に係る取壊し費用は、建物の現況および取壊しの目的によって実務上は次のように取り扱われています。取壊し費用が不動産所得上の必要経費になるのは、原則として貸付用不動産から貸付用不動産の建替えの場合のみです。
    4/311.png/image-size:463×237
  4. 適切。個人が借地権を設定したときに受け取る権利金は、原則として不動産所得に該当します。ただし、その権利金の額が土地の時価の2分の1を超える場合は、資産の譲渡があったとみなされて譲渡所得となります。本肢は「2分の1以下」なので不動産所得です(所得税法令79条)。
したがって不適切な記述は[3]です。