FP1級過去問題 2016年9月学科試験 問23

問23

資本資産評価モデル(CAPM)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、β(ベータ)値は、すべて1より大きいものとする。
  1. 資本資産評価モデル(CAPM)によるポートフォリオの期待収益率の算出にあたって、安全資産利子率は、一般に、当該ポートフォリオに組み入れる資産の過去の平均収益率を用いる。
  2. 市場全体の期待収益率と安全資産利子率がともに2倍になると、β値が一定であれば、資本資産評価モデル(CAPM)によるポートフォリオの期待収益率も2倍になる。
  3. β値が高いほど、そのポートフォリオの価格変動は市場全体の価格変動よりも大きく、市場全体に対する相対的なリスクが高いといえる。
  4. 資本資産評価モデル(CAPM)により算出されるポートフォリオの期待収益率を上回った超過収益率を測ることによりリスク調整後収益率を測定する手法を、ジェンセンのアルファ(ジェンセンの測度)という。

正解 1

問題難易度
肢147.7%
肢223.1%
肢317.1%
肢412.1%

解説

資本資産評価モデル(CAPM)は、ポートフォリオに組み入れた個々の銘柄が市場全体と比較してどの程度値動きするかを基準に、無リスク資産と比較してどの程度の収益率が期待できるかを計算する手法です。

 期待収益率=安全資産利子率+β×(市場全体の収益率-安全資産利子率)

  1. [不適切]。安全資産利子率は無リスク資産(10年物国債)などの利子率を用います。ポートフォリオに組み入れるのはリスク資産ですので、安全資産利子率として使用することはできません。
  2. 適切。市場全体の期待収益率をM、安全資産利子率をNとして、上記の式で考えると、
     2N+β×(2M-2N)
    =2N+2β×(M-N)
    =2×(N+β(M-N))
    と変換できるため、市場全体の期待収益率と安全資産利子率がともに2倍になると、元の期待収益率の2倍となると言えます。
  3. 適切。β値は、市場全体の値動きに対するポートフォリオの変動感度を示したものです。β値が高いほど、そのポートフォリオは市場全体の値動きに強く反応するので、市場に対するリスクは相対的に高くなります。
  4. 適切。ジェンセンのアルファ(ジェンセンの測度)は、ポートフォリオの期待収益率から資本資産評価モデル(CAPM)の期待収益率を差し引いた値で評価します。

     ポートフォリオの収益率-資本資産評価モデル(CAPM)の収益率

したがって不適切な記述は[1]です。