FP1級過去問題 2021年5月学科試験 問49

問49

取引相場のない株式の相続税評価に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 類似業種比準方式において、3つの比準要素の金額のうち、いずれか1つがゼロである場合、類似業種比準価額の計算上、比準割合を算出する際の分母は「2」となる。
  2. 類似業種比準方式において、直前期末を基準にして計算した3つの比準要素の金額がいずれもゼロである場合、原則として、直前々期末を基準にして計算した比準要素の金額により類似業種比準価額を算出する。
  3. 純資産価額方式において、評価会社が課税時期前3年以内に取得した家屋がある場合、純資産価額(相続税評価額)の計算上、当該家屋の相続税評価額は、原則として、取得価額によって評価する。
  4. 配当還元方式において、評価会社が直前期末以前2年間において無配である場合、配当還元価額の計算上、1株(50円)当たりの年配当金額は2円50銭とする。

正解 4

問題難易度
肢14.1%
肢216.8%
肢323.9%
肢455.2%

解説

  1. 不適切。比準要素のうち1つがゼロ、つまり有効な比準要素が2つである場合でも、比準割合を算出する際の分母には3を使います。なお、比準要素数1の会社の株式を同族株主が取得した場合、原則として純資産価額方式で評価しますが、納税者の選択により「類似業種比準価額×0.25+純資産価額×0.75」での評価もできます(財評通189-2)。
    類似業種比準方式において、直前期末を基準にして計算した3つの比準要素の金額がいずれもゼロである場合、原則として、直前々期末を基準にして計算した比準要素の金額により類似業種比準価額を算出する。2024.1-48-2
    類似業種比準方式において、直前期末を基準にして計算した3つの比準要素の金額がいずれもゼロである場合、原則として、直前々期末を基準にして計算した比準要素の金額により類似業種比準価額を算出する。2021.5-49-2
  2. 不適切。3つの比準要素の金額がいずれもゼロである会社は、開業後3年未満の会社等の株式の評価方法に準じて、純資産価額方式で評価します(財評通189)。
    類似業種比準方式において、直前期末を基準にして計算した3つの比準要素の金額がいずれもゼロである場合、原則として、直前々期末を基準にして計算した比準要素の金額により類似業種比準価額を算出する。2024.1-48-2
    類似業種比準方式において、3つの比準要素の金額のうち、いずれか1つがゼロである場合、類似業種比準価額の計算上、比準割合を算出する際の分母は「2」となる。2021.5-49-1
  3. 不適切。相続税評価額の算定上、不動産は時価よりも低く評価されるので、同じ帳簿価額であっても現預金で保有するよりも不動産で保有する方が純資産価額の引下げが期待できます。これを不当に利用して、直前に不動産を取得することで純資産価額を引き下げる行為を防止するため、評価会社が課税時期前3年以内に取得等した土地建物は、課税時期における時価で評価することになっています(財評通185)。
    純資産価額方式において、評価会社が課税時期前3年以内に取得した土地の価額は、原則として、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。2024.1-48-1
    1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算上、評価会社が所有する課税時期前3年以内に取得した土地の相続税評価額は、原則として、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。2023.9-49-3
    評価会社が所有する土地のうち、課税時期前3年以内に取得した土地がある場合、その株式の純資産価額(相続税評価額)の計算上、当該土地の相続税評価額は、原則として、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。2018.9-48-4
    純資産価額を計算する場合において、評価会社が有する資産のなかに課税時期前5年以内に取得した土地等や家屋等があるときは、その土地等や家屋等の価額は課税時期における通常の取引価額に相当する金額により評価する。2016.1-48-2
  4. [適切]。取引相場のない株式を同族株主以外の株主等が取得した場合、配当還元方式で評価します。配当還元方式では、その株式に係る年配当金額を10%で割り引いて評価額を求めますが、1株当たり資本金等の額を50円とした時の年配当金額が2円50銭未満、または無配であるときには2円50銭として計算します(財評通188-2)。
したがって適切な記述は[4]です。