FP1級過去問題 2023年9月学科試験 問28

問28

所得税の確定申告に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. 同族会社の役員に、役員給与による給与所得の金額が1,500万円、当該同族会社への貸付金の利子の受取りによる雑所得の金額が10万円ある場合、当該役員は確定申告をしなければならない。
  2. 居住者が、年の途中で国内に住所等を有しないこととなるため、納税管理人の届出をした場合、納税管理人は当該納税者の所得について国内に住所等を有しないことになった日から4カ月以内に確定申告をしなければならない。
  3. 確定申告をすべき者が年の途中で死亡し、相続人が2人以上いる場合、死亡した者に係る確定申告書は相続人がそれぞれ提出しなければならない。
  4. 給与所得者が年の途中で退職し、同年中に再就職した場合、再就職先において支給された給与についてのみ年末調整が行われ、前の勤務先における給与については年末調整が行われないため、当該給与所得者は確定申告をしなければならない。

正解 1

問題難易度
肢152.6%
肢221.8%
肢35.8%
肢419.8%

解説

  1. [適切]。給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円以下の人は確定申告が不要ですが、役員が同族会社から給与所得と退職所得以外の事業に係る対価を受けているときは、たとえその額が20万円以下であっても確定申告をする必要があります。同族会社では会社と役員間で資金を移動させることが容易なので、この制限がないと、同族会社から役員に対して年間20万円まで無税で資金を移転できてしまうからです(所得税法令262条の2)。
  2. 不適切。4か月ではありません。個人が国内に住所・居所を有しないこととなる場合において、納税申告書の提出等の国税に関する事項を処理する必要があるときは、その事項を処理させる納税管理人を定め、これを所轄の税務署長に届け出なければなりません(国税通則法117条)。納税管理人の届出をした場合は、その者を通じて申告書を提出することになるので、確定申告の期限は通常どおり翌年3月15日となります。これに対して、納税管理人を定めなかった場合には、出国の時までに確定申告および納税をしなければなりません(所得税法127条)。
  3. 不適切。連名で提出することができます。準確定申告は、被相続人が有していた申告義務を相続人が承継するものですから、相続人全員が準確定申告書の提出義務者となります。このため、準確定申告書は相続人全員の連署による1つの書面を提出することが原則です。ただし、相続人の連署を得ることが困難なこともあるため、各相続人が他の相続人の氏名を付記して各別に提出することも認められています(所得税法令263条)。
  4. 不適切。前職の分もあわせて年末調整が行われます。年の途中で退職をすると、退職日から1カ月以内に源泉徴収票が交付されます。その源泉徴収票を再就職先に提出することにより、前職の給与収入と再就職後の給与収入を合算して年末調整が行われます。なお、源泉徴収票を提出せずに自分で確定申告で精算をすることもできます。源泉徴収票を提出せずに確定申告もしないのは脱税行為なのでNGです。
したがって適切な記述は[1]です。