保険制度全般(全37問中28問目)

No.28

生命保険会社の健全性・収益性に関する指標等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
2016年9月試験 問10
  1. 責任準備金は、保険会社が将来の保険金等の支払に備えるために保険料や運用収益などを財源として積み立てる準備金であり、責任準備金が特別勘定に属する財産の価額により変動する保険契約等を除き、保険業法によりチルメル式により積み立てることが義務づけられている。
  2. ソルベンシー・マージン比率は、保険会社が、通常の予測を超えて発生するリスクに対し、どの程度の保険金等の支払余力を有しているかを示す指標であり、内部留保と有価証券含み損益などの合計である「ソルベンシー・マージン総額」を保険リスクや予定利率リスクなどを数値化した「リスクの合計額」の2倍相当額で除して算出される。
  3. 実質純資産額は、有価証券や有形固定資産の含み損益などを反映した時価ベースの資産の合計から、価格変動準備金や危険準備金などの資本性の高い負債を除いた負債の合計を差し引いて算出され、この値がマイナスとなった場合には、金融庁による業務停止命令の対象となることがある。
  4. EV(エンベディッド・バリュー)は、保険会社の企業価値・業績を評価する指標であり、保険会社の本業の利益を表す「基礎利益」と保有契約に基づき計算される「保有契約価値」を合計して算出される。

正解 3

問題難易度
肢111.8%
肢216.0%
肢350.4%
肢421.8%

解説

  1. 不適切。責任準備金は、生命保険会社が将来の保険金などの支払いを行うために、保険料や運用収益などを財源として積み立てる準備金のことで、金融庁が標準レベルを設定する標準責任準備金制度により積み立てが義務づけられており、標準責任準備金制度の対象とならない保険契約についても原則として「平準純保険料式」により積み立てることとされています(保険業法規則69条4項2号)。
    平準純保険料式
    事業費が保険料払込期間にわたって毎回一定額(平準)と想定し、責任準備金を計算する方式
    チルメル式
    契約初年度は事業費を多く要する実情を反映して、初年度は事業費を厚くして責任準備金を少なくし、2年目以降の一定期間(チルメル期間)でその事業費を償却すると想定して、責任準備金を計算する方式
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  2. 不適切。ソルベンシー・マージン比率は、保険会社が有する保険金等の支払余力がその程度あるのかを判断するための指標で、資本金・内部留保・有価証券含み損益など自己資本の合計である「ソルベンシー・マージン総額」を保険リスク・予定利率リスク・資産運用リスクなど通常の予想を超えるリスクを数値化した「リスクの合計額」の2分の1相当額で除して算出されます。本肢は「2倍」としているので誤りです。
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  3. [適切]。実質純資産額とは、時価ベースの資産の合計から負債(価格変動準備金や危険準備金などの資本性の高いものを除く)を差し引いて算出するもので、この金額がマイナスになると実質的な債務超過と判断され、金融庁による業務停止命令等の対象となることがあります。
  4. 不適切。EV(エンベディッド・バリュー)は、保険会社の企業価値を表す指標のひとつです。EVは、貸借対照表の純資産の金額をもとに計算される「修正純資産」と保有契約から生じる将来の利益をもとに計算される「保有契約価値」を合計して算出されます。
したがって適切な記述は[3]です。