所得税の仕組み(全12問中5問目)

No.5

居住者に係る所得税の収入金額と必要経費に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
2022年9月試験 問25
  1. 個人事業主が、事業所得を生ずべき事業の遂行上、取引先に対して貸し付けた貸付金の利子は、事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
  2. 個人事業主が、事業所得を生ずべき事業の用に供している取得価額200万円の車両を売却した場合、事業所得の金額の計算上、当該車両の売却価額を総収入金額に算入し、当該車両の未償却残高を必要経費に算入する。
  3. 所有する土地に他者の建物の所有を目的とする借地権を設定し、その対価として当該土地の時価の2分の1以下である権利金を受け取ったことによる収入は、不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
  4. 所有する賃貸アパートを取り壊したことにより生じた損失の金額は、不動産の貸付が事業的規模に満たない場合、不動産所得の金額の計算上、その損失の金額を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入する。

正解 2

問題難易度
肢110.6%
肢258.2%
肢312.3%
肢418.9%

解説

  1. 適切。事業所得の総収入金額には、取引先への貸付金利子や従業員への貸付金利子のように、事業の遂行に付随して生じた収入も含めます。所得税法に定める利子所得とは「預貯金及び公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得」なので、「取引先に対して貸し付けた貸付金の利子」は利子所得にはなりません。その他、事業遂行に関係のない知人に対する貸付金利子は、利子所得でも事業所得でもなく雑所得となります。
  2. [不適切]。使用可能期間1年未満または取得価額10万円未満の少額減価償却資産、取得価額が10万円以上20万円未満の一括償却資産を除き、個人が業務用の固定資産を譲渡した場合には事業所得ではなく譲渡所得となります。期中の減価償却費部分については事業上の経費にしても、譲渡所得上の取得費にしても構わないとされていますが、未償却残高を必要経費に算入することはできません。
    なお、法人の場合は利益が出れば固定資産売却益、損失が出れば固定資産売却損として仕訳します。
  3. 適切。個人が借地権を設定したときに受け取る権利金は、原則として不動産所得に該当します。ただし、その権利金の額が土地の時価の2分の1を超える場合は、資産の譲渡があったとみなされて譲渡所得となります。本肢は「2分の1以下」なので不動産所得です。
  4. 適切。貸付不動産の取壊し・除却で生じた損失は、不動産の貸付が事業的規模で行われているかどうかによって、必要経費に算入できる金額が変わります。
    事業的規模
    損失全額を必要経費にできる
    上記以外
    その損失を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費にできる
    →損失を使って不動産所得を赤字にすることはできない
    本肢は事業的規模に満たない場合なので、その損失の金額を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入することができます。
したがって不適切な記述は[2]です。