会社・役員間及び会社間の税務(全9問中6問目)

No.6

X株式会社(以下、「X社」という)とその役員の間の取引における法人税および所得税の取扱いに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
2018年1月試験 問33
  1. X社が所有する社宅をその規模等に応じた所定の方法により計算した通常支払われるべき賃貸料よりも低い家賃で役員に貸し付けた場合、役員側では実際に支払った賃貸料との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。
  2. 役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとみなされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。
  3. X社が役員から無利息で金銭を借り入れた場合、原則として、役員側では通常支払われるべき利息が雑所得の収入金額として課税対象となる。
  4. 役員が所有する土地をX社に建物の所有を目的として賃貸する場合に、X社から役員に権利金の支払がないときは、原則として、X社側では借地権相当額が受贈益として益金算入となり、役員側では借地権相当額が譲渡所得の収入金額として課税対象となる。

正解 1

問題難易度
肢177.1%
肢28.2%
肢36.6%
肢48.1%

解説

  1. [適切]。法人が所有する社宅を通常の賃料よりも低い家賃で役員に貸し付けた場合、役員が得をすることになります。役員側は、通常支払うべき賃貸料と実際に支払った賃貸料との差額の経済的利益を得ているため、その差額が給与収入として課税対象となります。
  2. 不適切。役員所有の資産が法人に対して時価より低額で譲渡された場合、法人が得をすることになります。法人側は時価で取得したとされるため、時価と譲渡価額との差は受贈益として益金に算入します。役員側の税務は、譲渡価額が時価の2分の1以上か未満かによって次のように異なります。
    時価の2分の1以上で譲渡
    譲渡価額が譲渡収入となる
    時価の2分の1未満で譲渡
    譲渡価額と時価の差額はみなし譲渡所得とされ、時価が譲渡収入となる
    ※譲渡価額+みなし譲渡所得=時価
    本肢は2分の1未満なので、時価を譲渡収入の金額として譲渡課税が行われます。役員側が損をする立場なので給与収入とはなりません。
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  3. 不適切。役員が法人に対して無利息で金銭を貸し付けた場合、役員と法人の間に課税関係は生じません。役員側は、何ら経済的利益が生じたわけではないため所得税の課税対象とはなりません。法人側では、役員借入金として負債計上します。
  4. 不適切。法人が他の者と行う土地の賃貸借で、借地権の認定課税を避けるには3つの方法があります。
    1. 権利金を支払う
    2. 相当の地代(地価の6%/年)を支払う
    3. 「土地の無償返還に関する届出書」を提出する
    上記のどれも行わずに土地の使用貸借/賃貸借を設定すると、借りた側が権利金相当額をタダでもらったとみなされ、権利金の認定課税が行われます。このとき、法人側(借地人)では権利金相当額が受贈益となりますが、役員側(地主)の課税はありません。
したがって適切な記述は[1]です。