不動産の取引(全44問中4問目)

No.4

民法における不動産の賃貸借に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
2023年9月試験 問35
  1. 建物の賃貸借期間中に、賃借人から敷金を受け取っている賃貸人が建物を譲渡し、賃貸人たる地位が建物の譲受人に移転した場合、その敷金の返還に係る債務は建物の譲受人に承継される。
  2. 建物の賃貸人に敷金を支払っている賃借人は、賃貸借期間中に未払賃料がある場合、賃貸人に対し、その敷金を未払賃料の弁済に充てるよう請求することができる。
  3. 建物の賃借人から敷金を受け取っている賃貸人は、賃貸借が終了し、建物の返還を受ける前に、賃借人に対し、その敷金の額から未払賃料等の賃借人の賃貸人に対する債務額を控除した残額を返還しなければならない。
  4. 建物の賃借人が、当該建物に通常の使用および収益によって損耗を生じさせた場合、賃貸借の終了時、賃借人は当該損耗を原状に復する義務を負う。

正解 1

問題難易度
肢163.9%
肢212.0%
肢317.5%
肢46.6%

解説

  1. [適切]。建物の引渡しを受けている賃貸借契約においてオーナーチェンジ(建物所有者の変更)があった場合、原則として賃貸人の地位は新所有者に承継されます。このとき、敷金の返還債務もそのまま新所有者に承継されます(民法605条の2第4項)。
  2. 不適切。敷金は、賃料債務その他賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する債務を担保する目的の金銭です。未払賃料がある場合、賃貸人は敷金をその債務に充当することができますが、賃借人からこれを請求することはできません(民法622条の2第2項)。
  3. 不適切。賃借人の敷金返還請求権は、以下の2つのいずれかに至ったときに生じます。
    1. 賃貸借契約が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき
    2. 賃借権が適法に譲渡されたとき
    したがって、賃貸物が返還されていないうちは、賃借人に敷金残額を返還する義務はありません(民法622条の2第1項1号)。
  4. 不適切。賃借人は、賃借物を返還する際に原状に回復する義務を負います。ただし、通常の使用収益をした際の損耗や経年劣化については賃貸人の負担となるので、賃借人はその限度で原状回復義務を免れます。なぜなら通常損耗は賃料に織込み済と考えられているからです(民法621条)。
したがって適切な記述は[1]です。