不動産の取引(全41問中3問目)

No.3

宅地建物取引業法および民法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、買主は宅地建物取引業者ではないものとする。
2023年5月試験 問35
  1. 宅地または建物の売買契約において、目的物が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合、買主が売主に対し契約不適合に基づく担保責任を追及するためには、当該不適合が売主の責めに帰すべき事由により生じたものであることを買主が証明しなければならない。
  2. 宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、目的物が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合、その不適合について買主が売主に通知すべき期間を引渡しの日から2年間とする特約を定めたときは、その特約は無効となる。
  3. 宅地建物取引業者は、宅地または建物の売買の媒介をするに際して、買主および売主の双方に対して、その売買契約が成立するまでの間に、売買の目的物に係る重要事項説明書を交付し、宅地建物取引士にその内容を説明させなければならない。
  4. 宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、手付金を受領した場合、その手付がいかなる性質のものであっても、宅地建物取引業者が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付金を放棄して契約の解除をすることができる。

正解 4

問題難易度
肢11.8%
肢26.4%
肢315.2%
肢476.6%

解説

  1. 不適切。売主の契約不適合責任は、原則として無過失責任ですので、責任を追及するために買主が売主の責任を証明する必要はありません。担保責任のうち損害賠償責任を請求するには売主の帰責事由が必要ですが、帰責事由がないことの立証責任は売主側にあるので、やはり買主による証明は不要です(民法415条)。
  2. 不適切。宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約では、種類・品質に関しての契約不適合責任に係る通知期間を物件の引渡し日から2年以上と定める場合を除き、民法の規定によりも買主に不利な特約をすることはできません。「2年以上」には本肢で説明されているちょうど2年も含まれますから、有効な特約となります(宅建業法40条)。
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間を目的物の引渡しの日から2年間とする旨の特約は有効である。2019.9-36-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となり、宅地建物取引業者ではない買主と締結する売買契約においては、宅地建物取引業法により、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間が売買契約の締結日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利となる特約を締結することはできない。2017.9-36-b
    宅地建物取引業者が自ら売主となる場合、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間が売買契約の締結日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利となる特約を締結することはできない。2016.9-35-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間を目的物の引渡しの日から3年間とする旨の特約は有効である。2015.9-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる場合、契約不適合を担保すべき責任については、契約解除等の期間を引渡日より1年以上とする特約以外に、民法の規定よりも買主に不利となる特約を締結することはできない。2014.9-36-3
  3. 不適切。重要事項説明書の交付と説明は、物件を使用することとなる買主・借主に対して行います。売主に対しては交付・説明する必要はありません。なお「契約成立までに」「宅地建物取引士に説明させる」という部分は正しい説明です。
    宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地の売買契約において、買主が宅地建物取引業者である場合、当該売買契約が成立するまでの間に、重要事項説明書を交付すれば、宅地建物取引士にその内容を説明させる必要はない。2023.1-36-3
    宅地建物取引業者は、宅地または建物の売買の媒介をするに際して、買主および売主の双方に対して、その売買契約が成立するまでの間に、売買の目的物に係る重要事項説明書を交付し、宅地建物取引士にその内容を説明させなければならない。2019.1-35-2
    宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地の売買契約において、買主が宅地建物取引業者である場合であっても、当該売買契約が成立するまでの間に、重要事項説明書を交付し、宅地建物取引士にその内容を説明させなければならない。2017.9-35-3
  4. [適切]。宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約で手付の交付があった時は、どのような名目で受領したとしても解約手付の性質を有します。よって、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主は手付の倍額を買主に対して現実に提供することで契約解除できます。
    ※手付には、解約手付、証約手付、違約手付の3種類があります。
    宅地建物取引業者が自ら売主となる不動産の売買契約において、買主が宅地建物取引業者でない法人の場合、売主の宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することができる。2022.9-35-a
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、買主の承諾を得られれば、宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することができる。2021.1-35-1
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、「宅地または建物の引渡しがあるまでは、いつでも、買主は手付金を放棄して、売主は手付金を返還して契約を解除することができる」旨の特約は有効である。2021.1-35-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して手付金を受領し、当該契約に交付された手付金を違約手付金とする旨の特約が定められている場合、買主は手付金を放棄することにより契約を解除することはできない。2021.1-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して解約手付金を受領したときは、買主が契約の履行に着手するまでは、宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して契約を解除することができる。2021.1-35-4
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することはできない。2019.9-36-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して手付金を受領したときは、その手付金がいかなる性質のものであっても、買主が契約の履行に着手するまでは、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。2019.1-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することはできない。2016.1-35-1
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、買主が売主に対して解約手付金を交付した後、当該売買契約の履行に着手したとしても、売主が当該売買契約の履行に着手していなければ、買主は手付金を放棄することにより契約を解除することができる。2016.1-35-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、交付された手付金を違約手付金とする旨の特約が定められていても、売主が当該売買契約の履行に着手していなければ、買主は手付金を放棄することにより契約を解除することができる。2016.1-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、「宅地または建物の引渡しがあるまでは、いつでも、買主は手付金を放棄して、売主は手付金を返還して契約を解除することができる」旨の特約は有効である。2016.1-35-4
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、宅地建物取引業者は、売買代金の額の1割を超える手付金を受領することはできない。2015.9-35-2
    民法では、買主から売主に対して解約手付が交付された場合、内金を支払った後では、売主が当該売買契約の履行に着手していないときであっても、買主は、手付金を放棄することにより契約を解除することができない。2014.1-37-b
したがって適切な記述は[4]です。