FP1級過去問題 2014年1月学科試験 問37(改題)

問37

不動産の売買取引に係る手付金に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。
  1. 民法では、売買契約書で手付金に係る定めを特に規定していない場合、売主は手付金の倍額を現実に提供することにより、買主が当該売買契約の履行に着手した後でも、契約を解除することができる。
  2. 民法では、買主から売主に対して解約手付が交付された場合、内金を支払った後では、売主が当該売買契約の履行に着手していないときであっても、買主は、手付金を放棄することにより契約を解除することができない。
  3. 民法では、買主が、交付した手付金を放棄して当該売買契約を解除した場合、売主に手付金を上回る損害が発生し、売主から手付金と損害額の差額につき請求があったとしても、原則として買主はそれに応じる義務はない。
  1. 1つ
  2. 2つ
  3. 3つ
  4. 0(なし)

正解 1

問題難易度
肢169.3%
肢223.2%
肢31.4%
肢46.1%

解説

  1. 不適切。民法では、手付に関する特段の定めがない場合、解約手付の性質となります。買主から売主に解約手付が交付された場合、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主は手付の倍額を買主に現実に提供することで契約解除できる旨が定められています(民法557条1項)。
    しかし、本肢のケースでは、買主が契約の履行に着手した後であるため、売主が手付解除をすることはできません。
  2. 不適切。手付による解除は相手方が契約の履行に着手する前であれば認められます。本肢では、契約の履行に着手(内金の支払い)しているのは買主であり、売主はいまだ契約の履行に着手していないので、買主側からの手付解除は可能です(民法557条1項)。
    宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、手付金を受領した場合、その手付がいかなる性質のものであっても、宅地建物取引業者が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付金を放棄して契約の解除をすることができる。2023.5-35-4
    宅地建物取引業者が自ら売主となる不動産の売買契約において、買主が宅地建物取引業者でない法人の場合、売主の宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することができる。2022.9-35-a
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、買主の承諾を得られれば、宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することができる。2021.1-35-1
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、「宅地または建物の引渡しがあるまでは、いつでも、買主は手付金を放棄して、売主は手付金を返還して契約を解除することができる」旨の特約は有効である。2021.1-35-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して手付金を受領し、当該契約に交付された手付金を違約手付金とする旨の特約が定められている場合、買主は手付金を放棄することにより契約を解除することはできない。2021.1-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して解約手付金を受領したときは、買主が契約の履行に着手するまでは、宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して契約を解除することができる。2021.1-35-4
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することはできない。2019.9-36-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して手付金を受領したときは、その手付金がいかなる性質のものであっても、買主が契約の履行に着手するまでは、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。2019.1-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することはできない。2016.1-35-1
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、買主が売主に対して解約手付金を交付した後、当該売買契約の履行に着手したとしても、売主が当該売買契約の履行に着手していなければ、買主は手付金を放棄することにより契約を解除することができる。2016.1-35-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、交付された手付金を違約手付金とする旨の特約が定められていても、売主が当該売買契約の履行に着手していなければ、買主は手付金を放棄することにより契約を解除することができる。2016.1-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、「宅地または建物の引渡しがあるまでは、いつでも、買主は手付金を放棄して、売主は手付金を返還して契約を解除することができる」旨の特約は有効である。2016.1-35-4
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、宅地建物取引業者は、売買代金の額の1割を超える手付金を受領することはできない。2015.9-35-2
  3. 適切。手付解除のときには契約解除に伴う損害賠償請求権が認められません。よって、売主に手付金を上回る損害が生じた場合でも、買主は損害賠償責任を負いません(民法557条2項)。
したがって適切なものは「1つ」です。