FP1級過去問題 2016年1月学科試験 問15

問15

X株式会社(以下、「X社」という)の工場建物が火災により全焼し、1カ月後、X社は、契約している損害保険会社から保険金を受け取り、当該保険金を受け取った事業年度中に工場建物を新築した。以下の〈資料〉を基に、保険金で取得した固定資産の圧縮記帳をする場合の圧縮限度額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、各損害保険の契約者(=保険料負担者)・被保険者・保険金受取人は、いずれもX社とする。また、記載のない事項については考慮しないものとする。

〈資料〉
  • 焼失した工場建物の帳簿価額:2,000万円
  • 工場建物の焼失によりX社が支出した経費
     焼跡の整理費(片付け費用):300万円
     類焼者への賠償金:500万円
  • 損害保険会社からの受取保険金
     火災保険(保険の対象:工場建物)の保険金:4,500万円
     企業費用・利益総合保険の保険金:4,000万円
  • 新築した大体建物(工場建物)の取得価額:8,000万円
  1. 1,700万円
  2. 2,200万円
  3. 4,400万円
  4. 6,200万円

正解 2

解説

圧縮記帳とは、保険金や国庫補助金を受給して設備や機械などの有形固定資産を取得した場合に、一定の金額を損金として計上することで、補助金等への課税を翌年以降に繰り延べできる制度です。

圧縮記帳をしない場合には以下のような仕訳となり、補助金等は受け取った事業年度の益金として課税されます。
一方、圧縮記帳では所定の計算式で算出した固定資産圧縮損を計上し、固定資産の帳簿価格を下げます。
これにより圧縮損が計上された初年度は税負担が少なくなりますが、翌年以降は減価償却費が少なくなる分だけ税負担は大きくなります。結果として税負担は同じなので課税の繰延となります。
圧縮記帳には幾つかの適用ケースがあるのですが、FP検定では、保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳について問われます。この制度は、法人が有する固定資産が滅失または損壊により保険金等の支払いを受け、その滅失または損壊の日から3年以内に代替資産を取得するか、損壊を受けた固定資産や代替となるべき資産を改良した場合に、圧縮限度額の範囲内で圧縮記帳を行うことができるものです。

圧縮限度額は以下の算式で計算します。
まず、<資料>の中から対象となる金額を抜き出して保険差益を求めます。注意点は以下の2点です。
保険金等の額
事業の休廃業による収益減少を補填する保険金、棚卸資産の損害を補償する保険金は圧縮記帳の対象となりません。よって、企業費用・利益総合保険の保険金は対象外、火災保険の保険金のみが対象となります。
滅失・損壊で支出した費用
取り壊し費用、片付け費、消防費など直接関連している費用のみが対象となります。被害者への賠償金・見舞金等は圧縮記帳の対象外です。
対象となる保険金等の額が4,500万円、滅失に伴う費用が300万円、滅失した建物の簿価が2,000万円ですので、

 保険差益=4,500万円-300万円-2,000万円=2,200万円

8,000万円の代替資産を取得するのに保険金等の全額(4,500万円)を使ったので、圧縮限度額は、

 2,200万円×4,500万円4,500万円-300万円
=2,200万円×1=2,200万円

したがって[2]が正解です。

※保険金等の額を全て代替資産の取得に充てた場合には、右項の係数部分が1となるので保険差益がそのまま圧縮限度額となります。