FP1級過去問題 2017年1月学科試験 問41

問41

Aさんは、所有する土地の一部をデベロッパーに譲渡し、デベロッパーがその土地上に建設した建築物の一部を取得することを検討している。「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」(立体買換えの特例。租税特別措置法第37条の5。以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、本特例の表二号(中高層の耐火共同住宅)に限定するものとし、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. Aさんが譲渡した土地が、譲渡直前において事業の用または居住の用に供されておらず、遊休地であった場合、本特例の適用を受けることはできない。
  2. Aさんは、原則として土地を譲渡した日から1年以内に建物を取得し、当該建物を事業の用または居住の用に供さなければ、本特例の適用を受けることはできない。
  3. Aさんが取得した建物が、建築基準法に規定する耐火建築物または準耐火建築物に該当する地上階数3以上の建築物で、その床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されるものでなければ、本特例の適用を受けることはできない。
  4. Aさんが建築物の一部とともに交換差金を受け取った場合において、当該交換差金の額が譲渡した土地と取得した建物とのいずれか高いほうの価額の20%を超えているときは、本特例の適用を受けることはできない。

正解 3

問題難易度
肢15.2%
肢224.4%
肢349.1%
肢421.3%

解説

立体買換えの特例は、一定の区域内に中高層の耐火建築物を建築する事業のために、個人がその敷地となる土地等・建物・構築物を譲渡し、完成した建築物を取得した場合に、買換資産の取得価額に相当する部分について譲渡課税の繰り延べを認める税制です。等価交換方式の土地活用においてよく利用されます。

本特例には1号買換え(中高層耐火建築物ヘの買換え)と2号買換え(中高層の耐火共同住宅への買換え)がありますが、2号買換えについて適用を受けるには次の条件があります。
  1. 三大都市圏の既成市街地等に存する譲渡資産であること
  2. 譲渡資産は事業用の資産ではないこと
  3. 譲渡した年の12月31日までに買換資産を取得し、取得してから1年以内に事業または居住の用に供すること(見込みを含む)
  4. 買換資産は、地上3階建て以上、耐火建築物または準耐火建築物、面積の2分の1以上が居住用であること
  1. 不適切。本特例における譲渡資産は、事業用の資産ではないという条件はありますが、事業の用または居住の用に供されていたものであるかどうかは問われません。よって、遊休地でも適用を受けることができます(措置通37の5-1)。
    Aさんが譲渡した土地が、譲渡直前において事業の用または居住の用に供されておらず、遊休地であった場合、本特例の適用を受けることはできない。2020.1-41-1
    Aさんは、原則として土地を譲渡した日から1年以内に建物を取得し、当該建物を事業の用または居住の用に供さなければ、本特例の適用を受けることはできない。2017.1-41-2
  2. 不適切。1年以内ではありません。本特例は、原則として譲渡した年の12月31日までに買換資産を取得することが要件となっています。例外的に、譲渡した年の翌年中に買換資産を取得する見込みであり、その取得の日から1年以内に事業用または居住用に供する見込みであれば適用を受けることができます(措置法37条の5第1項)。
    Aさんが譲渡した土地が、譲渡直前において事業の用または居住の用に供されておらず、遊休地であった場合、本特例の適用を受けることはできない。2020.1-41-1
    Aさんが譲渡した土地が、譲渡直前において事業の用または居住の用に供されておらず、遊休地であった場合、本特例の適用を受けることはできない。2017.1-41-1
  3. [適切]。本特例における買換資産は、①地上3階建て以上、②耐火建築物または準耐火建築物、③床面積の2分の1以上が居住用とされています(措置法令25条の4第5項)。
  4. 不適切。本特例は「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」とは異なり、交換差金が20%相当額を超える場合でも適用を受けることができます。
したがって適切な記述は[3]です。