FP1級過去問題 2017年9月学科試験 問22

問22

居住者による株式の譲渡に係る税金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. 上場株式を譲渡したことによる譲渡所得の金額の計算上、購入のために要した費用として取得価額に含めることができる買委託手数料は、その手数料に係る消費税および地方消費税を含めない金額となる。
  2. 2021年分以前において生じた上場株式に係る譲渡損失の金額で2023年分に繰り越されたものについては、2023年分における非上場株式に係る譲渡所得の金額から控除することができる。
  3. 同一年中に上場株式を譲渡したことによる譲渡所得以外の所得を得ていない者は、確定申告をすることにより、当該株式に係る課税譲渡所得の金額の計算上、基礎控除などの所得控除額を控除することができる。
  4. 時価8,000万円の上場株式を所有している者が国外転出した場合、国外転出した時に、国外転出の時における金融商品取引所の公表する最終価格で当該株式の譲渡があったものとみなして、当該株式の含み益に対して所得税および復興特別所得税が課される。

正解 3

問題難易度
肢19.8%
肢211.9%
肢351.3%
肢427.0%

解説

  1. 不適切。株式の譲渡所得は、譲渡価額から取得費と手数料等を差し引いて算出しますが、取得費として、購入するにあたり支出した買委託手数料(消費税額含む)・交通費・通信費・名義書換料等を含めることができます。
  2. 不適切。上場株式に係る譲渡損失で損益通算しても控除しきれない損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告により上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除することができますが、非上場株式に係る譲渡所得の金額から控除することはできません
    2020年分において生じた上場株式に係る譲渡損失の金額で確定申告により繰り越されたものについては、2023年中に非上場株式を譲渡したことにより生じた譲渡所得の金額から控除することができる。2020.9-23-3
  3. [適切]。総所得金額が所得控除額未満の場合にあっては、分離課税の所得からも控除できます。分離課税の所得のうち所得控除する順番は決まっていて、上場株式等に係る配当所得等の金額、短期譲渡所得、長期譲渡所得、一般株式の譲渡所得、上場株式の譲渡所得、山林所得、退職所得の順となっています。
    本肢のように、上場株式の譲渡所得以外に所得がない場合には、確定申告により上場株式の譲渡から所得控除額を控除することができます。
  4. 不適切。国外転出をする時点で1億円以上の有価証券や未決済の信用取引などの対象資産を所有等している一定の居住者に対しては、国外転出の時に、国外転出の時の価額または国外転出の予定日の3カ月前の日の価額で対象資産の譲渡等があったものとみなして、その対象資産の含み益に対して所得税および復興特別所得税が課税されます(国外転出時課税制度)。 本肢は時価8,000万円<1億円なので、国外転出時課税制度の対象外です。
したがって適切な記述は[3]です。