FP1級過去問題 2017年9月学科試験 問50(改題)

ご注意ください。
法令改正により、この問題の記述は現行の内容と異なっている可能性があります。

問50

「非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 本特例の適用を受けるためには、後継者である経営承継相続人等は、相続の開始の時において18歳以上であり、かつ、認定承継会社の役員であり、相続開始日の翌日から5カ月を経過する日において認定承継会社の代表権を有していなければならない。
  2. 本特例の適用を受けた場合、後継者である経営承継相続人等が納付すべき相続税額のうち、本特例の対象となる非上場株式等に係る課税価格の3分の2相当額に対応する相続税額の納税が猶予される。
  3. 本特例の適用を受けた後、経営承継期間中に認定承継会社に係る認定が取り消された場合、納税が猶予された相続税額を納付しなければならないが、相続時精算課税の適用を受けることにより、納付税額を減少させることができる。
  4. 経営承継期間中の納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、相続の開始の時における常時使用従業員の数が4人であった場合、相続税の申告期限後5年間の平均で3人以上を維持することとされている。

正解 4

問題難易度
肢121.0%
肢212.0%
肢324.5%
肢442.5%

解説

法人版事業承継税制には2018年(平成30年)より特例措置が創設されたので、条件や効果が変わっています。本問は一般措置に関しての記述です。
  1. 不適切。本特例の適用を受けるための後継者の要件は以下の4つです。
    1. 相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において会社の代表権を有していること
    2. 相続開始の時において、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
    3. 相続開始の時において後継者が有する議決権数が一定割合以上であること
    4. 相続開始の直前において、会社の役員であること(被相続人が60歳未満で死亡した場合を除く)
    非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除では、後継者は18歳以上でなければなりませんが、相続の特例には年齢の要件はありません。
    本特例の適用を受けるためには、後継者は、相続開始日の翌日から5カ月を経過する日において会社の代表権を有し、かつ、被相続人の親族でなければならない。2016.1-50-2
    本特例の適用を受けるためには、後継者である経営承継相続人等は、「被相続人の親族であること」「相続開始の直前において役員であったこと」「相続開始の日において18歳以上であること」等、所定の要件を満たす必要がある。2014.9-47-1
  2. 不適切。本特例は、後継者が先代経営者から相続や遺贈で非上場株式を取得した場合、課税価格の80%(特例措置では100%)の相続税額の納税が猶予される制度です。
    相続または遺贈により特定事業用資産を取得した相続人が本制度の適用を受けた場合、当該相続人が納付すべき相続税額のうち、本制度の適用を受ける特定事業用資産の課税価格に対応する相続税額の全額の納税が猶予される。2019.9-50-4
    本特例の適用を受けた場合、後継者が納付すべき相続税額のうち、本特例の対象となる非上場株式に対応する相続税の全額の納税が猶予される。2016.1-50-4
  3. 不適切。本特例は相続開始後に適用される特例であり、相続した非上場株式等に係る相続税額の全部または一部が免除される制度なので、死亡前の贈与に関する相続時精算課税の適用は関係ありません。認定取消し時における暦年課税での多額の納税を防ぐために、相続時精算課税との併用が効果的なのは「非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例」です。
    本特例の適用後、経営承継期間中に雇用確保要件が満たされないために都道府県知事の認定が取り消された場合において、納税猶予税額を納付しなければならないときは、延納の適用を選択することができる。2014.9-47-4
  4. [適切]。非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例には、雇用確保要件もあり、承継後5年間は平均8割の雇用維持が必要になります(一般措置)。従業員数が4人だった場合、4人×0.8=3.2人になり、3人以上の維持が必要となります。
したがって適切な記述は[4]です。