FP1級過去問題 2018年1月学科試験 問40(改題)

問40

「被相続人の居住用財産(空家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 被相続人であるAさんは、介護保険法に基づく要介護認定を受けて相続が開始する1年前に特別養護老人ホームに入所し、住民票を異動していた。Aさんの相続が開始し、Aさんが入所前に居住していた家屋およびその敷地を相続により取得したAさんの長男が当該家屋およびその敷地を譲渡した場合、長男は本特例の適用を受けることができる
  2. 被相続人であるBさんが居住していた家屋およびその敷地を、Bさんの長男と二男がそれぞれ2分の1の共有持分で相続し、長男と二男が共同して当該家屋およびその敷地の全体を譲渡して本特例の適用を受けた場合、長男と二男の譲渡所得の金額の計算上、それぞれ最高3,000万円を控除することができる。
  3. 被相続人であるCさんが居住していた家屋およびその敷地は、相続の開始の直前においてCさんとCさんの長男がそれぞれ2分の1の持分で共有していた。Cさんの相続によりCさんが有していた持分を取得した長男が当該家屋およびその敷地の全体を1億2,000万円で譲渡した場合、長男は本特例の適用を受けることができない。
  4. 被相続人であるDさんは、相続の開始の直前において、自己が所有する土地の上にあり、かつ、Dさんの長男が所有する家屋に居住していた。Dさんの相続により当該家屋の敷地を取得した長男が当該家屋およびその敷地の全体を8,000万円で譲渡した場合、長男は本特例の適用を受けることができる。

正解 4

問題難易度
肢15.9%
肢230.5%
肢318.1%
肢445.5%

解説

  1. 適切。本特例は、相続開始の直前において被相続人が居住していた家屋であることが適用要件になっていますが、要介護状態・要支援状態となったことによりグループホーム、(特別)養護老人ホーム、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅等に入所しており、その対象となる家屋が、居住されなくなってから相続開始まで引き続き被相続人の物品等の保管に使われていること、事業や貸付、被相続人以外の者の居住用に使われていないこと等を満たせば適用を受けることができます(2019年4月1日以降の譲渡に適用)。
    介護保険法に基づく要介護認定を受けて相続が開始する1年前から特別養護老人ホームに入所していた被相続人Aさんがその入所直前まで居住していた家屋およびその敷地を相続したAさんの長男が、当該家屋およびその敷地を譲渡した場合、長男は本特例の適用を受けることができない。2020.1-40-1
    2023年10月1日に相続が開始し、被相続人居住用家屋およびその敷地等を相続により取得した者は、2026年9月30日までに当該家屋およびその敷地等を譲渡しなければ、本特例の適用を受けることができない。2017.1-40-2
  2. 適切。本特例は、家屋およびその敷地の共有持分者である相続人がそれぞれ適用を受けることができます。Bさんの長男と二男がそれぞれ2分の1の共有持分で相続し特例の適用を受けた場合、それぞれ最高3,000万円まで控除することができます。
    被相続人Bさんが居住していた家屋およびその敷地を相続したBさんの長男が、当該家屋およびその敷地を譲渡した年中に自己が居住の用に供している財産を譲渡した場合、長男の譲渡所得の金額の計算上、最大6,000万円を控除することができる。2020.1-40-2
  3. 適切。本特例の適用要件の1つに、譲渡金額対価が1億円以下であることがあります。Cさんの長男が相続により取得した家屋および敷地部分の譲渡金額は6,000万円ですが、適用要件の対象となるのは全体の譲渡対価の1億2,000万円となるため、長男はこの特例の適用を受けることはできません。
    被相続人Dさんが居住し、かつ、DさんとDさんの長男がそれぞれ2分の1の持分で共有していた家屋およびその敷地について、長男がDさんの持分を相続し、当該家屋およびその敷地の全体を1億2,000万円で譲渡した場合、長男は本特例の適用を受けることができない。2020.1-40-4
    被相続人であるDさんは、相続の開始の直前において、自己が所有する土地の上にあり、かつ、Dさんの長男が所有する家屋に居住していた。Dさんの相続により当該家屋の敷地を取得した長男が当該家屋およびその敷地の全体を8,000万円で譲渡した場合、長男は本特例の適用を受けることができる。2018.1-40-4
  4. [不適切]。本特例は、相続や遺贈により被相続人居住用家屋とその敷地等を取得したことが要件となっています。本肢は、敷地だけの取得ですので長男は適用を受けることはできません。
    被相続人Dさんが居住し、かつ、DさんとDさんの長男がそれぞれ2分の1の持分で共有していた家屋およびその敷地について、長男がDさんの持分を相続し、当該家屋およびその敷地の全体を1億2,000万円で譲渡した場合、長男は本特例の適用を受けることができない。2020.1-40-4
    被相続人であるCさんが居住していた家屋およびその敷地は、相続の開始の直前においてCさんとCさんの長男がそれぞれ2分の1の持分で共有していた。Cさんの相続によりCさんが有していた持分を取得した長男が当該家屋およびその敷地の全体を1億2,000万円で譲渡した場合、長男は本特例の適用を受けることができない。2018.1-40-3
したがって不適切な記述は[4]です。