FP1級 2018年1月 応用編 問62
Aさん(58歳)は、2024年2月に同居していた父親が死亡し、その自宅の建物とその敷地である甲土地を相続により取得した。Aさんは、現在、その建物に妻Bさん(58歳)と2人で暮らしているが、当該建物は父親が約40年前に建築したもので老朽化が進んでいる。
そこで、Aさんは、老朽化した自宅の建物について、耐震化を含めた改築を行うか、取り壊して甲土地を売却し、新たな住宅を購入して移り住むかを検討している。
甲土地の概要は、以下のとおりである。
〈甲土地の概要〉
そこで、Aさんは、老朽化した自宅の建物について、耐震化を含めた改築を行うか、取り壊して甲土地を売却し、新たな住宅を購入して移り住むかを検討している。
甲土地の概要は、以下のとおりである。
〈甲土地の概要〉
- 甲土地は、200㎡の長方形の土地である。
- 甲土地は、建ぺい率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。
- 幅員18mの県道は、建築基準法第52条第9項の特定道路であり、特定道路から甲土地までの延長距離は56mである。
- 指定建ぺい率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
- 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
- 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
問62
Aさんが、自宅の建物を取り壊し、以下の〈条件〉でその敷地である甲土地を譲渡した場合、次の①~③に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。なお、「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」(相続税の取得費加算の特例)、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」および「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けるものとする。また、本問の譲渡所得以外の所得や所得控除等は考慮しないものとする。
- 課税長期譲渡所得金額はいくらか。
- 課税長期譲渡所得金額に係る所得税および復興特別所得税の合計額はいくらか。
- 課税長期譲渡所得金額に係る住民税額はいくらか。
〈譲渡資産(甲土地)に関する資料〉
- 譲渡資産の譲渡価額
5,500万円 - 譲渡資産の取得費
不明 - 譲渡費用
540万円(家屋の取壊し費用、仲介手数料等)
- 相続人
Aさん(ほかに相続人はいない) - 甲土地の相続税評価額
5,000万円- 甲土地以外に相続した土地はない。
- 甲土地に「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受け、相続税の課税価格に算入された金額は1,000万円である。
- Aさんの相続税の課税価格
8,000万円(債務控除はない) - Aさんが納付した相続税額
680万円(贈与税額控除、相次相続控除は受けていない)
①円 |
②円 |
③円 |
正解
① 16,000,000(円) 6,800,000円×10,000,000円80,000,000円=850,000円 55,000,000円-(55,000,000円×5%+850,000円+5,400,000円)-30,000,000円 =16,000,000円 |
② 1,633,600(円) 16,000,000円×10%=1,600,000円 1,600,000円×2.1%=33,600円 1,600,000円+33,600円=1,633,600円 |
③ 640,000(円) 16,000,000円×4%=640,000円
|
分野
科目:E.不動産細目:5.不動産の譲渡に係る税金
解説
3つの特例の併用となりますが、次の手順で計算していきます。
まず加算する取得費を求めます。
相続税の取得費加算の特例は、相続税の申告期限後3年以内に相続財産を譲渡した場合に、譲渡人が納付した相続税額のうち譲渡資産に対応する部分の額を譲渡所得の計算上の取得費に加算できる特例です。
取得費として加算できるのは、Aさんが納付した相続税額680万円のうち甲土地に対応する部分です。対応する部分の割合は、相続税の課税価格に算入された金額をベースにして求めるので、分母としては債務控除前の金額、土地は「小規模宅地等の評価減の特例」適用後の金額を使います。
取得費加算額=相続税額×譲渡資産の課税価格譲渡人の相続税の課税価格+債務控除額
相続した甲土地に対応する部分の額は、
680万円×1,000万円8,000万円=85万円
次に特例適用前の譲渡所得の金額を求めます。譲渡所得の計算に必要な収入金額、取得費、譲渡費用を整理します。
5,500万円-(360万円+540万円)=4,600万円
3,000万円特別控除により上記の金額から3,000万円が控除されるので、
4,600万円-3,000万円=1,600万円
よって、正解は16,000,000(円)となります。
〔②について〕
軽減税率の特例は、課税譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分の税率が下表のように軽減される特例です。本問では全ての部分に軽減税率が適用されるので、所得税10%、復興特別所得税0.21%(所得税額に対して2.1%)、住民税4%を譲渡所得の金額に乗じます。
所得税 16,000,000円×10%=1,600,000円
復興特別所得税 1,600,000円×2.1%=33,600円
小計 1,600,000円+33,600円=1,633,600円
よって、正解は1,633,600(円)となります。
〔③について〕
住民税額は譲渡所得金額に4%を乗じて、
16,000,000円×4%=640,000円
よって、正解は640,000(円)となります。
- 取得費加算の特例で加算される取得費を求める
- 取得費加算を加味して譲渡所得の金額を計算する
- 譲渡所得の金額に3,000特別控除を適用する
- 残った金額に軽減税率の特例を使って税額を求める
まず加算する取得費を求めます。
相続税の取得費加算の特例は、相続税の申告期限後3年以内に相続財産を譲渡した場合に、譲渡人が納付した相続税額のうち譲渡資産に対応する部分の額を譲渡所得の計算上の取得費に加算できる特例です。
取得費として加算できるのは、Aさんが納付した相続税額680万円のうち甲土地に対応する部分です。対応する部分の割合は、相続税の課税価格に算入された金額をベースにして求めるので、分母としては債務控除前の金額、土地は「小規模宅地等の評価減の特例」適用後の金額を使います。
取得費加算額=相続税額×譲渡資産の課税価格譲渡人の相続税の課税価格+債務控除額
相続した甲土地に対応する部分の額は、
680万円×1,000万円8,000万円=85万円
次に特例適用前の譲渡所得の金額を求めます。譲渡所得の計算に必要な収入金額、取得費、譲渡費用を整理します。
- 収入金額 5,500万円
- 取得費
不明なので概算取得費 5,500万円×5%=275万円
取得費加算の特例の額 85万円
合計 275万円+85万円=360万円 - 譲渡費用 540万円
5,500万円-(360万円+540万円)=4,600万円
3,000万円特別控除により上記の金額から3,000万円が控除されるので、
4,600万円-3,000万円=1,600万円
よって、正解は16,000,000(円)となります。
〔②について〕
軽減税率の特例は、課税譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分の税率が下表のように軽減される特例です。本問では全ての部分に軽減税率が適用されるので、所得税10%、復興特別所得税0.21%(所得税額に対して2.1%)、住民税4%を譲渡所得の金額に乗じます。
所得税 16,000,000円×10%=1,600,000円
復興特別所得税 1,600,000円×2.1%=33,600円
小計 1,600,000円+33,600円=1,633,600円
よって、正解は1,633,600(円)となります。
〔③について〕
住民税額は譲渡所得金額に4%を乗じて、
16,000,000円×4%=640,000円
よって、正解は640,000(円)となります。
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