FP1級過去問題 2019年5月学科試験 問26

問26

居住者に係る所得税の不動産所得に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 所有する賃貸アパートに入居していた者との賃貸借契約の解除があった際、明け渡しが遅延して損害賠償金を受け取った場合、不動産所得の金額の計算上、その受け取った金額を収入金額に算入する。
  2. 不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地または土地の上に存する権利を取得するために要した負債の利子の額は、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することができない。
  3. 不動産所得を生ずべき事業を行う白色申告者が、その者と生計を一にし、かつ、その者が営む事業に従事する配偶者や親族に給与を支払った場合、不動産所得の金額の計算上、その支払った給与の全額を必要経費に算入することができる。
  4. 所有する賃貸アパートを取り壊したことにより生じた損失の金額は、当該貸付が事業的規模で行われている場合、不動産所得の金額の計算上、その損失の金額を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入することができる。

正解 1

問題難易度
肢147.3%
肢224.3%
肢38.4%
肢420.0%

解説

  1. [適切]。所得税法では心身に加えられた損害や突発的な事故によって資産に加えられた損害についての損害賠償金は非課税となります。しかし、本肢の損害賠償金は逸失利益に対する損害賠償金であり収入金額に代わる性質を有するものですので、不動産所得の総収入金額に算入します。
  2. 不適切。土地と取得するために要した借入金の利子は、不動産所得の必要経費に算入することができます。ただし、その額について他の所得との損益通算はできません。
  3. 不適切。生計を一にする15歳以上の白色専従者に支払った給与は、次の2つのうち少ない金額を限度として必要経費に算入できます(白色専従者給与)。
    1. 事業主の配偶者:86万円、左記以外:1人当たり50万円
    2. 専従者給与控除前の事業所得の金額を専従者の数+1で割った金額
    本肢は「支払った給与の全額を」としているので誤りです。また、不動産所得において白色/青色専従者給与を必要経費に算入できるのは、その貸付が事業的規模で行われている場合に限られます。
    不動産所得を生ずべき業務を行い、青色申告書を提出している個人事業主が、生計を一にする配偶者に労務の対価として適正な金額の給与を支払った場合、当該不動産の貸付規模にかかわらず、青色事業専従者給与を必要経費に算入することができる。2018.1-25-3
  4. 不適切。不動産所得の計算において、賃貸建物を取り壊したことによる損失金額、固定資産の除却による損失金額等は、その貸付けが事業的規模で行われているか否かによって取扱いが変わります。
    事業的規模の場合
    損失金額の全額を必要経費に算入することができる
    上記以外
    損失金額を控除する前の不動産所得の金額を限度として、必要経費に算入することができる
    本肢は「事業的規模で行われている場合」ですので、損失金額の全額を必要経費に算入することができます。
    不動産の貸付が事業的規模でない場合、所有する賃貸アパートを取り壊したことにより生じた損失の金額のうち、不動産所得の金額から引ききれない金額は、不動産所得以外の所得の金額と損益通算することができる。2023.5-26-3
    所有する賃貸アパートを取り壊したことにより生じた損失の金額は、当該貸付が事業的規模で行われている場合、不動産所得の金額の計算上、その損失の金額を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入することができる。2022.5-26-3
    所有する賃貸アパートを取り壊したことにより生じた損失の金額は、当該貸付が事業的規模に満たない場合、不動産所得の金額の計算上、その損失の金額を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入することができる。2021.1-26-3
したがって適切な記述は[1]です。