FP1級過去問題 2019年5月学科試験 問28

問28

居住者に係る所得税の青色申告に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 青色申告者が不動産所得と事業所得を有し、不動産の貸付が事業的規模に満たない場合、不動産所得の金額の計算上、最大65万円の青色申告特別控除を控除することはできない。
  2. 事業所得の金額の計算上、売上原価に計上する棚卸資産の期末評価額の評価方法として低価法を選定することができるのは、青色申告者に限られる。
  3. 青色申告者が、青色申告書を提出する年分に生じた純損失の金額を前年に繰り戻し、前年分の所得に対する所得税額の還付を受けるためには、その年の前年分の所得税について青色申告書を提出していることが要件となる。
  4. 青色申告者は、仕訳帳、総勘定元帳などの帳簿や貸借対照表、損益計算書などの決算関係書類を7年間保存しなければならない。

正解 1

問題難易度
肢159.9%
肢215.6%
肢317.1%
肢47.4%

解説

  1. [不適切]。青色申告特別控除として最高65万円を受けるための事業要件は、不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいることです。不動産所得として65万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、不動産の貸付が事業的規模で行われている必要がありますが、事業所得は、青色申告して要件を満たしていれば最大65万円の青色申告特別控除をすることができます。
    本肢のように青色申告者が両方の事業を営んでいる場合には、65万円の控除を不動産所得→事業所得の順で控除します。よって、不動産の貸付が事業的規模未満であっても65万円を控除することは可能です。
  2. 適切。白色申告(青色申告ではない)の場合は、原則的評価方法が最終仕入原価法で、あらかじめ税務署に届け出ていれば他の5種類の原価法(個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法)を選定することができます。青色申告者は上記に加えて「低価法」を選択することができます。低価法は、原価法で算定した在庫の取得価額と年末時点での時価を比較して、いずれか安い方を棚卸資産評価額とする方法です。
  3. 適切。青色申告では、純損失の金額を前年に繰り戻して前年分の所得税額の還付を受ける「純損失の繰戻還付」という制度があります。この還付を受けるためには、前年分の確定申告において青色申告書を提出していることが要件となります。ちなみに、「純損失の繰越控除」では翌年以降も青色申告であることは要件とされていません。
  4. 適切。青色申告者は、仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿、貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類を7年間(請求書等一部は5年間)保存することが義務付けられています。
したがって不適切な記述は[1]です。