FP1級過去問題 2019年5月学科試験 問39(改題)

問39

「特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 譲渡資産が地域再生法に規定する集中地域以外の地域内に所在し、かつ、買換資産が地域再生法に規定する集中地域内に所在する場合、長期保有資産の買換え(いわゆる3号買換え)による本特例の適用を受けることはできない。
  2. 買換資産が土地等である場合に、その土地等の面積が譲渡資産である土地等の面積の2倍を超えるときは、2倍を超える部分の面積に対応する部分は本特例の適用を受けることができない。
  3. 長期保有資産の買換え(いわゆる3号買換え)による本特例の適用を受けた場合、買換資産の取得価額および取得時期は、譲渡資産の取得価額および取得時期を引き継ぐことになる。
  4. 事業用資産を譲渡した年の前年中に取得した資産を買換資産として本特例の適用を受ける場合、その買換資産を取得した年の翌年3月15日までに、「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を税務署長に提出する必要がある。

正解 4

問題難易度
肢17.9%
肢210.6%
肢321.4%
肢460.1%

解説

事業用資産の買換えの特例は、個人が、事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等(譲渡資産)を譲渡し、一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産(買換資産)を取得して、取得日から1年以内に買換資産を事業の用に供したときに、譲渡益の60~90%(原則は80%)に対する課税を将来に繰り延べることができる特例です(租税特措法37条)。
譲渡価額≦買換資産の取得価額
譲渡収入金額=譲渡価額×20
譲渡価額>買換資産の取得価額
譲渡収入金額=譲渡価額-取得価額×80%
特例の対象となるのは次の4つで、3つ目の「10年超保有資産の買換え、通称3号買換え」が最も多く利用されており、試験で問われるのもこれだけです。
  1. 航空機騒音障害区域の内から外への買換え
  2. 既成市街地等(①首都圏の既成市街地、②近畿圏の既成都市区域、③名古屋市)および人口集中地区の区域内における土地の計画的かつ効率的な利用に資する施策の実施に伴う買換え
  3. 所有期間10年を超える国内にある土地等・建物・構築物から、国内にある一定の土地等(300㎡以上に限る)・建物・構築物への買換え
  4. 日本船舶から日本船舶への買換え
  1. 不適切。3号買換えでは、集中地域であるなしにかかわらず、譲渡資産・買換資産がいずれも国内にあるものであれば適用を受けられます。ただし、集中地域内外によって課税繰延割合が次のように変わります(措置法37条1項)。
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  2. 不適切。2倍ではありません。買換資産が土地等であるときは、取得する土地等の面積が、原則として譲渡した土地等の面積の5倍以内でなければなりません。この5倍を超えた部分は本特例の対象となりません(措置法令25条14項)。
    買換資産が土地等である場合に、その土地等の面積が譲渡資産である土地等の面積の5倍を超えるときは、原則として5倍を超える部分の面積に対応するものは本特例の適用を受けることができない。2015.10-40-4
  3. 不適切。3号買換えの適用を受けた場合、買換資産の取得価額は譲渡資産の取得価額を引き継ぎますが、取得時期は引き継ぎません。マイホームの買換え特例と同じです。
    課税繰延べの特例の適用を受けた場合、代替資産の取得時期は収用等により譲渡した資産の取得時期が引き継がれる。2021.5-41-2
  4. [適切]。本特例は、資産を譲渡した年、その前年中および翌年中に資産を取得した場合に適用を受けることができます。前年中に取得した資産を買換資産として本特例の適用を受けるためには、買換資産を取得した年の翌年3月15日までに、「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を税務署長に提出する必要があります(措置法令25条16項)。
    事業用資産を譲渡した年の前年中に取得した資産を買換資産として本特例の適用を受ける場合、その買換資産を取得した年の翌年3月15日までに、「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。2023.1-40-3
したがって適切な記述は[4]です。