FP1級過去問題 2019年5月学科試験 問40

問40

個人が、土地収用法等の規定に基づく公共事業のために、収用等によりその所有する土地建物を譲渡した。この場合における「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」(以下、「課税繰延べの特例」という)と「収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除」(以下、「特別控除の特例」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 土地建物を収用等されたことにより取得する各種補償金のうち、課税繰延べの特例の適用対象となるものは、原則として対価補償金であるが、収益補償金、経費補償金等であっても、一定の要件に該当すれば対価補償金として取り扱うことができる。
  2. 課税繰延べの特例の適用を受けるためには、原則として、土地建物の収用等のあった日から2年を経過する日までに代替資産を取得しなければならないが、収用等のあった日よりも前に取得したものであっても、一定の要件に該当すれば代替資産として認められる。
  3. 特別控除の特例の適用を受けるためには、公共事業の施行者から最初に買取り等の申出を受けた日から原則として6カ月を経過する日までに、土地建物を譲渡しなければならない。
  4. 収用等により土地建物を譲渡した年中に代替資産を取得し、収用等された土地建物の譲渡価額よりも代替資産の取得価額が少ない場合は、課税繰延べの特例と特別控除の特例の適用を重複して受けることができる。

正解 4

問題難易度
肢16.0%
肢213.4%
肢320.6%
肢460.0%

解説

まず収用等に伴って利用できる2つの特例の概要を確認しておきます。
課税繰延べの特例
収用等により交付される補償金等の額が、①代替資産の取得価額以下であるときは、その譲渡した資産の譲渡がなかったものとされ、②その補償金等の額が、代替資産の取得価額を超えるときは、その超える部分に相当する部分の譲渡があったものとして、譲渡所得を計算できる制度
特別控除の特例
収用等により資産を譲渡した場合において、その譲渡が事業施行者等から最初に買取り等の申出があった日から6か月以内に行われている場合など、一定の要件を満たすときは、その資産の譲渡所得等から最高5,000万円を控除できる制度
  1. 適切。個人が土地建物を収用等されたことにより取得する補償金のうち、"課税繰延べの特例"の適用の対象となるものは、原則、対価補償金のみですが、それぞれの一定の要件に該当すれば、収益補償金、経費補償金、移転補償金等も対価補償金として取り扱うことができます。
    土地建物を収用等されたことにより取得する各種補償金のうち、課税繰延べの特例の適用対象となるものは、原則として収益補償金であるが、対価補償金、経費補償金等であっても、一定の要件に該当すれば収益補償金として取り扱われる。2015.10-41-1
  2. 適切。"課税繰延べの特例"の適用を受けるためには、原則として、土地建物の収用等のあった日から2年以内に代替資産を取得するか、取得する見込みでなければなりません。ただし、収用等のあった日よりも前に取得したものであっても、買い取りの申し出などがあった日以後に取得したなど一定の要件に該当すれば代替資産として認められます。
    課税繰延べの特例の適用を受けるためには、原則として土地建物の収用等のあった日から5年以内に代替資産を取得しなければならない。2015.10-41-2
  3. 適切。"特別控除の特例"の適用を受けるためには、最初に買取り等の申出を受けた日から原則6カ月以内に土地建物を譲渡しなければなりません。
    特別控除の特例の適用を受けるためには、公共事業施行者から最初に買取等の申出のあった日から6カ月以内に収用対象資産を譲渡しなければならない。2024.1-40-3
    特別控除の特例の適用を受けるためには、公共事業の施行者から最初に買取り等の申出を受けた者(その相続人を含む)が、その申出があった日から原則として6カ月を経過した日までに土地建物を譲渡しなければならない。2015.10-41-3
  4. [不適切]。"課税繰延べの特例"と"特別控除の特例"は重複して適用することはできず選択適用となります。収用等された土地建物の譲渡価額よりも代替資産の取得価額が少ない場合でも同様です。
    収用等により土地建物を譲渡した年中に代替資産を取得し、収用等された土地建物の譲渡価額よりも代替資産の取得価額が少ない場合は、課税繰延べの特例と特別控除の特例の適用を重複して受けることができる。2015.10-41-4
したがって不適切な記述は[4]です。