FP1級 2020年1月 応用編 問54

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(40歳)は、上場株式と投資信託への投資を行いたいと考えている。Aさんは、上場株式については同業種のW社とX社に興味を持ち、下記の財務データ等を入手した。投資信託については、YファンドとZファンドの購入を考えている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

〈W社・X社の財務データ等〉(単位:百万円)
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〈Yファンド・Zファンドの予想収益率〉
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  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問54

《設例》の〈W社・X社の財務データ等〉に基づき、Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
  1. W社とX社を自己資本当期純利益率で比較すると、W社の値が()%、X社の値が□□□%であり、W社の値のほうが上回っています。この自己資本当期純利益率について、売上高当期純利益率、使用総資本回転率、()の3指標に分解して、その要因分析を行うと、W社の使用総資本回転率は()回、()は()倍で、いずれもX社の値を上回っており、W社のほうが資本効率性が高いと評価することができます」
  2. W社とX社を財務的な安定性を測る指標であるインタレスト・カバレッジ・レシオで比較すると、W社の値が□□□倍、X社の値が()倍であり、X社のほうが財務的な余裕があるといえます」
  3. W社とX社を代表的な投資指標であるPERとPBRで比較すると、W社のPERは()倍、PBRは()倍で、いずれもX社の値を上回っており、W社株式のほうが相対的に割高であるといえます。また、配当性向で比較すると、W社の値が()%、X社の値が□□□%であり、W社のほうが株主への利益還元の度合いが高いといえます」
 

正解 

① 9.26(%)
② 財務レバレッジ
③ 0.66(回)
④ 5.03(倍)
⑤ 9.83(倍)
⑥ 32.00(倍)
⑦ 2.80(倍)
⑧ 27.14(%)

分野

科目:C.金融資産運用
細目:5.株式投資

解説

〔①について〕
自己資本当期純利益率は「当期純利益÷自己資本×100」で求めます。W社の当期純利益は35,000、自己資本の額は、純資産の額から「新株予約権」と「非支配株主持分」の2つを除いた「400,000-22,000=378,000」なので、自己資本当期純利益率は、

 35,000÷378,000×100=9.259…%
(小数点以下第3位四捨五入)9.26%

よって、正解は9.26(%)となります。

〔②について〕
自己資本当期純利益率を求める式は当期純利益自己資本、売上高当期純利益率は当期純利益売上高、使用総資本回転率は売上高総資本です。自己資本当期純利益率に存在しない売上高と総資本が約分で消えることを考えると、②を表す式は総資本自己資本であることがわかります。

 当期純利益自己資本当期純利益売上高×売上高総資本×総資本自己資本

自己資本比率の逆数であり、自己資本に対する総資本の割合を示す指標を「財務レバレッジ」といいます。④の単位が"倍"なので自己資本比率(単位は%)ではダメです。
よって、正解は財務レバレッジになります。

〔③について〕
使用総資本回転率は「売上高÷総資本」で求めます。W社の売上高は1,250,000、総資本は1,900,000ですから、

 1,250,000÷1,900,000=0.657回
(小数点以下第3位四捨五入)0.66回

よって、正解は0.66(回)になります。

〔④について〕
②には財務レバレッジが当てはまるので、自己資本に対する総資本額の割合が入ります。単位は"倍"です。W社の財務データと①で求めた自己資本額より、

 1,900,000÷378,000=5.0264…
(小数点以下第3位四捨五入)5.03倍

よって、正解は5.03(倍)になります。

〔⑤について〕
インタレスト・カバレッジ・レシオは、借入金などの利息の支払い能力を評価するための指標で、事業利益が金融費用(支払利息・割引料)の何倍であるかを以下の算式で求めます。

 インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)=事業利益÷金融費用

事業利益は、本業の収益である営業利益に金融収益を足した額です。金融収益とは、営業外利益のうち受取利息・受取配当金・その他投資利益等の合計です。

X社の事業利益は「55,000+200+1,800=57,000」、金融費用(支払利息のみ)は5,800なので、インタレスト・カバレッジ・レシオは、

 57,000÷5,800=9.827…倍
(小数点以下第3位四捨五入)9.83倍

よって、正解は9.83(倍)となります。

〔⑥について〕
PERは「株価÷1株当たり当期純利益」で求めます。W社の1株当たり当期純利益は当期純利益と発行済株式総数より「35,000÷200=175円」、株価は5,600円なので、PER(倍)は、

 5,600÷175=32.00倍

よって、正解は32.00(倍)となります(小数点以下第2位まで記載するように注意しましょう)。

〔⑦について〕
PBRは「株価÷1株当たり純資産」で求めます。W社の1株当たり純資産は純資産額と発行済株式総数より「400,000÷200=2,000円」、株価は5,600円なので、PBR(倍)は、

 5,600÷2,000=2.80倍

よって、正解は2.80(倍)となります。なお、模範解答では1株当たり自己資本額で除した「5,600÷(378,000÷200)=2.96倍」でも可とされています。

〔⑧について〕
配当性向(%)は「年間配当金総額÷当期純利益×100」で求めます。W社の配当金総額は9,500、当期純利益は35,000なので、配当性向は、

 9,500÷35,000×100=27.142…%
(小数点以下第3位四捨五入)27.14%

よって、正解は27.14(%)になります。