FP1級 2020年1月 応用編 問53

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(58歳)は、妻Bさん(56歳)と母Cさん(80歳)との3人暮らしである。X社は、満60歳の定年制を採用しているが、再雇用制度が設けられており、その制度を利用して同社に再雇用された場合、最長で65歳まで勤務することができる。
 Aさんは、X社の再雇用制度を利用して同社に勤務した場合の雇用保険からの給付や公的年金制度からの老齢給付の給付額について知りたいと思っている。また、母Cさんが加入している後期高齢者医療制度についても理解を深めたいと思っている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんにアドバイスを求めることにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1961年5月28日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1981年5月から1984年3月までの大学生であった期間(35月)は国民年金に任意加入していない。
      1984年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(過去に厚生年金基金の加入期間はない)。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
    • 1984年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
  2. Bさん(妻)
    • 1963年4月10日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1982年4月から1990年9月まで厚生年金保険の被保険者である。
      1990年10月から2004年9月まで国民年金の第3号被保険者である。
      2004年10月から2019年3月まで厚生年金保険の被保険者である。
      2019年4月から現在に至るまで国民年金の第3号被保険者である。
  3. Cさん(母)
    • 1939年12月6日生まれ
    • 後期高齢者医療制度の被保険者である。
    • 収入は、公的年金(老齢基礎年金および老齢厚生年金)のみである。
  • 妻Bさんおよび母Cさんは、Aさんと同居し、現在および将来においても、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • 家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問53

Aさんが、定年退職後もX社の再雇用制度を利用して厚生年金保険の被保険者として同社に勤務し、65歳で退職して再就職しない場合、Aさんが原則として65歳から実際に受給することができる公的年金の老齢給付について、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉に基づき、年金額は、2019年度価額に基づいて計算するものとする。また、妻Bさんには、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)が法定の支給開始年齢から支給されるものとする。

  1. 老齢基礎年金の年金額はいくらか。
  2. 老齢厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
  1. 厚生年金保険の被保険者期間
    • 総報酬制導入前の被保険者期間:228月
    • 総報酬制導入後の被保険者期間:277月(65歳到達時点)
  2. 平均標準報酬月額および平均標準報酬額(65歳到達時点、2019年度再評価率による額)
    • 総報酬制導入前の平均標準報酬月額:30万8,000円
    • 総報酬制導入後の平均標準報酬額:49万6,000円
  3. 報酬比例部分の給付乗率
    • 総報酬制導入前の乗率:1,000分の7.125
    • 総報酬制導入後の乗率:1,000分の5.481
  4. 経過的加算額
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  5. 加給年金額
    39万100円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

正解 

① 723,218(円)
780,100円×445月480月=723,218円(円未満四捨五入)
② 1,310,654(円)
308,000円×7.1251,000×228月+496,000円×5.4811,000×277月
=1,253,392円(円未満四捨五入)
1,626円×480月-780,100円×445月480月=57,262円(円未満四捨五入)
1,253,392円+57,262円=1,310,654円

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:5.公的年金

解説

〔①について〕
老齢基礎年金の年金額は、以下の算式で求めます。2019年度の基本年金額は780,100円です。

 基本年金額×保険料納付済月数480月

Aさんは、大学生だったときの35月の未納期間を除き、60歳まで引き続き厚生年金被保険者となっているので、保険料納付済月数は480月から35月を差し引いた「480月-35月=445月」です。免除期間はないのでそのまま計算します。

 780,100円×445月480月=723,217.7…円
(円未満四捨五入)723,218円

よって、正解は723,218(円)です。

〔②について〕
65歳以降に受け取る老齢厚生年金の年金額は、以下の算式で求めます。

 報酬比例部分の額+経過的加算額+加給年金額

【報酬比例部分の額】
次式で算出される額の合計になります。
  • 平均標準報酬月額×7.1251,000×総報酬制導入前の被保険者期間月数
    ※2003年3月以前
  • 平均標準報酬額×5.4811,000×総報酬制導入後の被保険者期間月数
    ※2003年4月以降
Aさんの厚生年金被保険者期間は総報酬制導入前が228月、総報酬制導入後が277月なので、報酬比例部分の額は、

 308,000円×7.1251,000×228月+496,000円×5.4811,000×277月
=308円×7.125×228月+496円×5.481×277月
=500,346円+753,045.552円=1,235,391.552円
(円未満四捨五入)1,253,392円

【経過的加算額】
厚生年金の被保険者期間の合計は「228月+277月=505月」ですが、上限が480月なので480月を使います。20歳以上60歳未満の被保険者期間は、60歳から65歳までの5年分(60月)を差し引いた「505月-60月=445月」です。これを計算式に当てはめると、

 1,626円×480月-780,100円×445月480月=57,262.29…円
(円未満四捨五入)57,262円

【加給年金額】
以下の条件を満たすときに支給されます。Aさんの被保険者期間は240月以上であり、妻Bさんは年下です。しかし、1963年4月10日生まれの妻Bさんには63歳から特別支給の老齢厚生年金が支給されます。Aさんが65歳になったとき妻Bさんは63歳で、既に被保険者期間20年以上の老齢厚生年金等の受給権を有しているため、Aさんは加給年金額を受け取ることはできません。
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以上より、老齢厚生年金の基本年金額は、

 1,253,392円+57,262円=1,310,654円

よって、正解は1,310,654(円)です。