FP1級過去問題 2020年9月学科試験 問31

問31

内国法人に係る法人税における評価損(特定の事実が生じた場合の資産の評価損の損金算入)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 法人が有する棚卸資産について、当該資産が著しく陳腐化したことにより、その価額が帳簿価額を下回ることとなった場合、原則として、損金経理により帳簿価額を減額し、評価損を損金の額に算入することができる。
  2. 法人が有する上場株式について、その価額が著しく低下したことにより、その価額が帳簿価額を下回ることとなった場合、原則として、損金経理により帳簿価額を減額し、評価損を損金の額に算入することができる。
  3. 法人が有する金銭債権について、その債務者の資産状態が著しく悪化したことにより、貸倒れが発生することが確実と見込まれる場合、原則として、損金経理により帳簿価額を減額し、評価損を損金の額に算入することができる。
  4. 法人が有する固定資産について、1年以上にわたり遊休状態にあることにより、その価額が帳簿価額を下回ることとなった場合、原則として、損金経理により帳簿価額を減額し、評価損を損金の額に算入することができる。

正解 3

問題難易度
肢110.4%
肢218.1%
肢353.4%
肢418.1%

解説

法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないのが原則です。ただし、いくつかの例外が認められています(法人税法令68条)。
  1. 適切。棚卸資産は、次の場合に限り評価損を損金算入することできます。
    1. 災害により著しく損傷した
    2. 著しく陳腐化した
    3. 上記2つに準ずる特別の事実
    本肢のケースは②の「資産が著しく陳腐化した」に該当するので、帳簿価額を減額した部分を評価損として損金に算入できます(法人税法令68条1項1号)。
    法人がその有する棚卸資産の評価換えをしてその帳簿価額を増額した場合、その増額した部分の金額は、原則として、益金の額に算入する。2024.1-31-1
    法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を増額した場合、その増額した部分の金額は、原則として、益金の額に算入する。2020.9-30-1
    法人が個人から債務の免除を受けた場合、その免除された債務の金額は、原則として、益金の額に算入する。2020.9-30-2
  2. 適切。法人が所有する上場株式等の有価証券について、その価額が著しく低下し、帳簿価格を下回ることになったときは、その帳簿価額を減額した部分を評価損として損金に算入することができます(法人税法令68条1項2号)。
  3. [不適切]。金銭債権の評価損は損金算入できません。資産の評価損を計上できるのは、①棚卸資産、②有価証券、③固定資産、④繰延資産に一定の事実が生じた場合に限られます。
  4. 適切。固定資産は、次の場合に限り評価損を損金算入することできます。
    1. 災害により著しく損傷した
    2. 1年以上にわたり遊休状態にある
    3. 本来の用途に使用することができないため他の用途に使用された
    4. 所在する場所の状況が著しく変化した
    5. 上記4つに準ずる特別の事実
    本肢のケースは②の「1年以上にわたり遊休状態にある」に該当するので、帳簿価額を減額した部分を評価損として損金に算入できます(法人税法令68条1項3号)。
したがって不適切な記述は[3]です。