FP1級 2020年9月 応用編 問64

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】

問64

《設例》の〈X社の概要〉に基づき、X社株式の1株当たりの①純資産価額と②類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式による価額を、それぞれ求めなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は円未満を切り捨てて円単位とすること。
なお、X社株式の相続税評価額の算定にあたり、複数の方法がある場合は、できるだけ低い価額となる方法を選択するものとする。

正解 

① 3,992(円)
② 2,426(円)

分野

科目:F.相続・事業承継
細目:5.相続財産の評価(不動産以外)

解説

〔①について〕
純資産価額方式は、相続税評価額ベースの総資産から負債の合計額と評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いて正味の純資産額を求め、それを発行済株式数で除すること1株当たりの価額を求める方法です(財評通185~188)。
FP試験で問われるかはわかりませんが、計算上の注意点として以下のようなものがあるので注意しておきましょう。
  • 課税時期前3年以内に取得した土地等や家屋等は時価で評価する
  • 負債に計上されている各種引当金や準備金は負債から除く
  • 事業年度開始から課税時期までのに係る法人税額等は負債に入れる
  • 被相続人の死亡により支給することが確定した退職手当金・功労金等は負債に入れる
まず、相続税評価額ベースの純資産額を求めます。資料の資産(相続税評価額)から負債(相続税評価額)を控除して、

 121,900万円-53,350万円=68,550万円

この額から「評価差額に対する法人税等額」を控除します。評価差額とは、相続税評価による純資産額と帳簿価額による純資産額の差額のことで、この額は会社を解散したときに所得として課税される金額となるので、そのときに支払う法人税等額を負債として控除するというものです。なお、評価差額に乗じる37%は法人税率の改正などにより適宜見直されています。

 帳簿価額ベースの純資産額 98,500万円-53,350万円=45,150万円
 評価差額 68,550万円-45,150万円=23,400万円
 評価差額に対する法人税等額 23,400万円×37%=8,658万円

X社の発行済株式数は設例より15万株なので、1株当たりの純資産価額は、

 (68,550万円-8,658万円)÷15万株=3,992.8円
(円未満切り捨て)3,992円

よって、正解は3,992(円)となります。

〔②について〕
X社のような中会社は、原則として類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式で評価しますが、純資産価額が低い場合にはそちらを評価額とすることもできます。併用方式は、両方の価格を所定の繰入割合で按分計算する方法で、繰入割合は会社規模によって以下のように決まっています。
X社は「中会社の大」ですので、類似業種比準価額の90%と純資産価額の10%の合計が、併用方式の価額となります。類似業種比準価額は問63で求めた2,252円、純資産価額は①で求めた3,992円なので、

 2,252円×0.90+3,992円×0.10
=2,026.8円+399.2円=2,426円

純資産価額3,992円>併用方式2,426円なので、より低い価額である併用方式の価額を選択します。
よって、正解は2,426(円)となります。