FP1級過去問題 2021年5月学科試験 問7

問7

居住者が受け取る公的年金等に係る課税関係に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、公的年金等には非課税となるものは含まれないものとし、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. その年の12月31日において65歳以上の者がその年中に支払を受けるべき公的年金等の金額が180万円未満であるときは、その支払の際、所得税および復興特別所得税は源泉徴収されない。
  2. 公的年金等の支払者に対して「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出した場合、公的年金等に係る源泉徴収税率(所得税および復興特別所得税の合計税率)は5.105%である。
  3. 65歳到達時に老齢基礎年金の受給権を取得し、70歳に達する前に当該老齢基礎年金を請求していなかった者が、70歳時に5年分の年金を一括して受給した場合、その一括して受給した年金は、一時所得として総合課税の対象となる。
  4. 老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権者が死亡し、その死亡した者に支給すべき年金給付で死亡後に支給期の到来する年金を相続人が受け取った場合、相続人が受け取った当該未支給年金は、相続税の課税対象となる。

正解 2

問題難易度
肢114.8%
肢240.8%
肢320.1%
肢424.3%

解説

  1. 不適切。公的年金等の受ける額が、基礎控除額と公的年金控除額の最低額を超える場合、源泉徴収の対象となります。つまり源泉徴収の対象外となるのは、65歳未満で「48万円+60万円=108万円」未満、65歳以上で「48万円+110万円=158万円」未満です。本肢は「180万円未満」としているので誤りです。
    その年の12月31日において65歳以上の者がその年中に支払を受けるべき公的年金等の収入金額が180万円である場合、その支払の際、所得税および復興特別所得税は源泉徴収されない。2023.1-7-1
    国民年金の第3号被保険者期間のみを有していた65歳以上の者がその年中に合計で70万円の老齢基礎年金の支払を受ける見込みのときは、その支払の際、所得税および復興特別所得税は源泉徴収されない。2022.1-7-3
    その年の12月31日において65歳未満の者がその年中に支払を受けるべき公的年金等の金額が150万円であるときは、その支払の際、所得税および復興特別所得税は源泉徴収されない。2016.1-5-1
  2. [適切]。公的年金等の支払を受けるときは、収入金額からその年金に応じて定められている一定の控除額を差し引いた額に5.105%を乗じた金額が源泉徴収されます。
    「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」は支払者に扶養親族の状況を知らせるための書類で、源泉徴収額に人的控除額を反映するために提出します。給与所得者で言うところの「給与所得者の扶養控除等申告書」に当たります。
    2019年(令和元年)以前は、扶養親族等申告書を提出している場合は5.105%、提出していない場合は10.21%と源泉徴収の税率が異なりました。税制改正により、2020年(令和2年分)以降の扶養親族等申告書については、提出された場合と提出されなかった場合で、所得税率に差がなくなりました。このため、本人が障害者・寡婦等に該当せず、控除対象となる配偶者または扶養親族がいない方は扶養親族等申告書を提出する必要はありません。
    公的年金等の支払者に対して「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出することができない確定給付企業年金等の公的年金に係る源泉徴収税率(所得税および復興特別所得税の合計)は、10.21%である。2023.1-7-2
    公的年金等の支払者に対して「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出している場合、公的年金等に係る源泉徴収税率(所得税および復興特別所得税の合計)は5.105%である。2016.1-5-2
  3. 不適切。70歳に達する前に当該老齢基礎年金を請求していなかった者が、70歳時に5年分の年金を一括して受給した場合、過去5年以内分の年金については本来支給を受けるはずだった年の雑所得として取り扱われます。
  4. 不適切。未支給年金の請求権は被相続人ではなく遺族が有する権利ですので、相続財産ではなく、受け取った遺族の一時所得に該当するものとされています。
    年金法では未支給年金の請求権者として民法の法定相続人とは異なる範囲の遺族が定められているため、相続財産とは別個の権利だと考えます。
    老齢基礎年金の受給権者が死亡し、その者に支給すべき年金給付で死亡後に支給期の到来する年金を、生計を同じくしていた受給権者の子が受け取った場合、子が受け取った当該未支給年金は、一時所得として課税の対象となる。2022.1-7-4
    老齢基礎年金の受給権者が死亡し、その者に支給すべき年金給付で死亡後に支給期の到来する年金を受給権者の子が受け取った場合、その者が受け取った当該未支給年金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となる。2021.9-7-4
    老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権者が死亡し、その者に支給すべき年金給付で死亡後に支給期の到来する年金を相続人が受け取った場合、相続人が受け取った当該未支給年金は、当該相続人の一時所得に該当する。2019.1-6-4
したがって適切な記述は[2]です。