FP1級過去問題 2021年5月学科試験 問31

問31

内国法人に係る法人税における役員給与に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 法人税法上の役員給与は、法人の取締役、執行役、監査役などに就任し、役員登記されている者に対して支給する給与とされ、使用人に対して支給する給与が役員給与とされることはない。
  2. 役員に対して支給する定期給与を、事業年度開始の日から6カ月経過後に開催した臨時株主総会により増額改定した場合、原則として、増額改定後の定期給与は定期同額給与に該当せず、増額改定後に支給した全額が損金不算入となる。
  3. 新たに設立した法人が設立時に開始する役員の職務につき所定の時期に支給した給与を事前確定届出給与として損金の額に算入する場合、原則として、設立後2カ月以内に納税地の所轄税務署長に所定の届出をしている必要がある。
  4. 業績連動給与は、法人が業務執行役員に対して支給する給与で、利益の状況を示す指標等を基礎として設定された条件により、その全額を支給するか、またはその全額を不支給とするかのいずれかとする旨が定められたものである。

正解 3

問題難易度
肢116.2%
肢216.7%
肢355.3%
肢411.8%

解説

  1. 不適切。法人税法上、登記されている役員以外の使用人でも株式の保有割合が一定割合を超える者については「みなし役員」とされ、みなし役員に支払われる給与には役員給与の規定が適用されます。すなわち定期同額給与、事前確定給与、業績連動給与のいずれかでなければ損金算入できません。
    法人税法上の役員給与は、役員として選任された者に支給される給与に限られ、使用人(従業員)に対する給与が役員給与とみなされることはない。2017.9-31-1
  2. 不適切。定期同額給与の改定は、特別の事情がある場合を除き、事業年度の開始後3カ月を開始する日までに行わなくてはなりません。3カ月を経過した日以降に増額改定した場合は、その増額部分は定期同額給与として認められず損金不算入となります。損金不算入となるのは増額部分のみで、増額改定後に支払われた全額ではありません。
    役員に対する定期給与を、事業年度開始の日から6カ月経過後に開催した臨時株主総会により増額改定した場合、原則として、増額改定後の定期給与は定期同額給与に該当せず、増額改定後に支給した全額が損金不算入となる。2019.5-32-2
  3. [適切]。事前確定届出給与を損金算入するには、新設法人であれば設立日から2カ月以内、既設法人であれば①株主総会の決議から1カ月以内と②事業年度開始から4か月以内のいずれか早い日までに、納税地の税務署に届出が必要です。
  4. 不適切。業績連動給与は、支給金額が確定しておらず、利益の状況を示す指標、株価の状況、関連法人の業績等により支給額が変動する役員給与です。ゼロか全額かという仕組みではありません。
    業績連動給与とは、同族会社が業務執行役員に対して支給する給与で、利益に関する指標を基礎として算定される給与である。2015.9-31-c
したがって適切な記述は[3]です。