FP1級 2023年1月 応用編 問65

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 非上場会社のX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(75歳)の推定相続人は、妻Bさん(71歳)および長男Cさん(48歳)の2人である。
 Aさんは、自身の健康面に不安を感じることが多くなったことから、所有するX社株式を長男Cさんに移転し、勇退することを決意した。しかし、X社は保有する土地の資産全体に占める割合が高く、X社株式の移転にあたって、特定の評価会社に該当して株式の相続税評価額が高くなることを懸念している。
 X社の概要は、以下のとおりである。

〈X社の概要〉
  1. 業種 建築工事業
  2. 資本金等の額 8,000万円(発行済株式総数160,000株、すべて普通株式で1株につき1個の議決権を有している)
  3. 株主構成
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  4. 株式の譲渡制限 あり
  5. 従業員数 70人
    ※直前期末以前1年間に継続してX社に勤務する従業員の数である(就業規則等で定められた1週間当たりの労働時間が30時間未満の従業員を除く)。
  6. X社株式の評価(相続税評価額)に関する資料
    • X社の比準要素
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    • 類似業種比準価額計算上の業種目/比準要素/業種目別株価
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      • すべて1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額である。
  7. X社の資産・負債の状況
    直前期のX社の資産・負債の相続税評価額と帳簿価額は、次のとおりである。
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  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問65

《設例》の〈X社の概要〉に基づき、X社株式の1株当たりの純資産価額を求めなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は円未満を切り捨てて円単位とすること。

正解 

 7,083(円)

分野

科目:F.相続・事業承継
細目:5.相続財産の評価(不動産以外)

解説

純資産価額方式は、相続税評価額ベースの総資産から負債の合計額と評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いて正味の純資産額を求め、それを発行済株式数で除すること1株当たりの価額を求める方法です(財評通185~188)。
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FP試験で問われるかはわかりませんが、計算上の注意点として以下のようなものがあるので注意しておきましょう。
  • 課税時期前3年以内に取得した土地等や家屋等は時価で評価する
  • 負債に計上されている各種引当金や準備金は負債から除く
  • 事業年度開始から課税時期に対応する法人税額等は負債に入れる
  • 被相続人の死亡により支給することが確定した退職手当金・功労金等は負債に入れる
まず、相続税評価額ベースの純資産額を求めます。資料の資産(相続税評価額)から負債(相続税評価額)を控除して、

 200,000万円-53,000万円=147,000万円

この額から「評価差額に対する法人税等額」を控除します。評価差額とは、相続税評価による純資産額と帳簿価額による純資産額の差額のことです。法人の解散に伴う残余財産の分配は時価で行われたと認識され、時価と帳簿価額の差額は益金・損金に算入されて法人税が課されるため、株式の評価上そのときに支払う法人税等相当額を負債として控除するというものです。なお、評価差額に乗じる37%は法人税率の改正などにより適宜見直されています。

 帳簿価額ベースの純資産額 109,000万円-53,000万円=56,000万円
 評価差額 147,000万円-56,000万円=91,000万円
 評価差額に対する法人税等額 91,000万円×37%=33,670万円

X社の発行済株式数は設例より16万株なので、1株当たりの純資産価額は、

 (147,000万円-33,670万円)÷16万株=7,083.1…円
(円未満切り捨て)7,083円

よって、正解は7,083(円)となります。