FP1級 2025年5月 応用編 問60

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 甲土地の借地権者であるAさんは、甲土地上にある自宅で妻と2人で暮らしている。Aさんが自宅の建替えについて検討していたところ、甲土地の貸主(地主)であるBさんから、甲土地を乙土地と丙土地に分割して、乙土地部分をAさんが取得し、丙土地部分をBさんが取得するように借地権と所有権(底地)を交換したいとの提案を受けた。Aさんは、借地権と所有権(底地)を交換した場合の自宅の建替えについて検討することにした。
 甲土地および交換後の乙土地、丙土地の概要は、以下のとおりである。

〈甲土地の概要〉
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  • 甲土地は252㎡の長方形の土地であり、交換後の乙土地は136.5㎡、丙土地は115.5㎡の長方形の土地である。
  • 交換後の乙土地のうち、第一種住居地域に属する部分は105㎡、第一種低層住居専用地域に属する部分は31.5㎡である。
  • 幅員3mの公道は、建築基準法第42条第2項により特定行政庁の指定を受けた道路である。3m公道の道路中心線は、当該道路の中心部分にある。また、3m公道の甲土地の反対側は宅地であり、がけ地や川等ではない。
  • 交換後の乙土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地ではない。
  • 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
  • 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問60

不動産の取得に係る税金および「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」に関する以下の文章の空欄①~⑦に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。

  1. 〈不動産取得税、登録免許税〉
     「借地権との交換により土地(底地)の所有権を取得した場合、原則として、不動産取得税が課されます。また、所有権移転登記をする場合、登録免許税が課されます。
     Aさんが2025年中に乙土地の所有権を取得した場合、不動産取得税の課税標準は、乙土地の価格の()分の1の額となり、標準税率は、『住宅の取得及び土地の取得に対する不動産取得税の税率の特例』が適用されることにより()%となります。なお、Aさんが2025年中に乙土地上に自宅(戸建て住宅)を新築する場合、その床面積が50㎡以上240㎡以下であり、かつ、認定長期優良住宅に該当するときは、当該自宅について、不動産取得税の課税標準となるべき価格から最高()万円を控除することができます。
     また、登録免許税について、交換により取得した乙土地の所有権移転登記に係る税率は()%となります。なお、建物の所有権()登記に係る税率は、原則として0.4%とされていますが、乙土地上に新築する自宅が認定長期優良住宅に該当し、所定の期間内に自宅の建物に係る所有権()登記をするときは、0.1%の軽減税率が適用されます」
  2. 〈固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例〉
     「『固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例』の適用を受けるためには、交換譲渡資産と交換取得資産がいずれも()年以上所有されていたものであり、交換取得資産を交換譲渡資産の交換直前の用途と同一の用途に供する必要があります。
     また、交換時における交換譲渡資産の時価と交換取得資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高いほうの価額の()%以内でなければなりません」
分の1
万円
登記

正解 

① 2(分の1)
② 3(%)
③ 1,300(万円)
④ 2(%)
⑤ 保存(登記)
⑥ 1(年)
⑦ 20(%)

分野

科目:E.不動産
細目:5.不動産の譲渡に係る税金

解説

〔①について〕
宅地については、無条件で不動産取得税の課税標準を2分の1として計算する特例があります。
よって、正解は2(分の1)となります。

〔②について〕
土地・建物の取得に係る不動産取得税の標準税率は、本則4%ですが、土地および居住用建物については特例により3%の軽減税率が適用されます。
よって、正解は3(%)となります。
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〔③について〕
1戸当たりの床面積が50㎡(戸建て以外の貸家は40㎡)以上240㎡以下等の要件を満たす新築住宅を取得した場合、その住宅に係る不動産取得税の課税標準から1戸につき1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円)が控除されます。本問は「認定長期優良住宅に該当するとき」なので1,300万円が妥当します。
よって、正解は1,300(万円)となります。

〔④について〕
不動産の所有権移転登記に係る登録免許税の税率は、相続・法人の合併・共有物の分割など形式的な所有権移転では0.4%(1,000分の4)、それ以外の売買・交換・贈与などでは2%(1,000分の20)です。本問は「交換による取得」なので2%が妥当します。
よって、正解は2(%)となります。
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〔⑤について〕
新築住宅に係る所有権の登記という説明より、所有権「保存」登記が妥当します。保存登記とは、これまで所有権の登記が一度もなされていない不動産について、最初に行われる所有権の登記手続を指します。
また、一定要件を満たす住宅用家屋については、所有権の保存登記および移転登記の税率が軽減されます。
よって、正解は保存(登記)となります。
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〔⑥、⑦について〕
固定資産の交換の譲渡所得の特例は、個人が土地と土地、建物と建物などのように同じ種類の固定資産を交換したときに、その譲渡がなかったものとする特例です。本特例の適用を受けるためには下記6つの要件を満たす必要があります。
  1. 同じ種類の資産の交換であること(借地権は土地とみなす)
  2. 交換対象資産が販売のために所有している固定資産(棚卸資産)でないこと
  3. 譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること
  4. 取得する資産は、相手が1年以上所有していたものであり、交換のために取得したものでないこと
    →取得資産を交換直後に譲渡するとNG
  5. 取得する資産を交換前と同じ用途で使用すること
  6. 交換する資産同士の時価の差額が、高い方の価額の20%以内であること
よって、⑥は1(年)、⑦は20(%)が正解となります。