FP1級過去問題 2024年5月学科試験 問42

問42

民法における認知に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 子が出生後に父に認知され、その後、父母が婚姻した場合、当該子は出生の時に遡って嫡出子としての身分を取得する。
  2. 父は胎内にある子を認知する場合、母の承諾を得なければならないが、出生した子については母の承諾を得なくても認知することができる。
  3. 非嫡出子を父は遺言によって認知することができ、遺言により認知された非嫡出子はその父の相続人となる。
  4. 認知された非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の法定相続分と同じである。

正解 1

問題難易度
肢150.7%
肢228.2%
肢311.0%
肢410.1%

解説

認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)について、主に男性側が自分が親であると承認する法律上の手続きです。認知があると、子の出生のときにさかのぼって親子関係があったものとして扱われ、①父親の性を名乗ることができる、②父親を親権者とすることができる、③父親の死亡について相続権が生じるなどの法律効果が生じます。
  1. [不適切]。出生の時に遡ってではありません。婚姻前に父親に認知されていた子は、その後父母が婚姻すれば、その婚姻時点より嫡出子としての身分を取得します。非嫡出子が嫡出子の身分を取得することを「準正」といい、婚姻中に父親が子を認知する(認知準正)、または子の認知後に父母が婚姻する(婚姻準正)のいずれかを満たすと成立します(民法789条)。
  2. 適切。父親は胎内にある子(胎児)を認知することもできますが、胎児認知をする場合には母親の承諾が必要です(民法783条)。出生した子を認知するときは母の承諾を得る必要はありませんが、子が成人している場合にはその子の承諾が必要とされています(民法782条)。
  3. 適切。認知は、市区町村役場で認知届を提出することで行いますが、遺言により認知することもできます(民法781条)。
  4. 適切。父に認知されている非嫡出子には「子」として相続権があります。非嫡出子の相続分は嫡出子と同じです(民法900条4号)。
    【参考】平成25年の途中までは非嫡出子の相続分は、嫡出子の2分の1とされていました(旧民法900条4号)。最高裁の違憲判決により同等に改正されたという経緯があります。
したがって不適切な記述は[1]です。