社会保険(全61問中47問目)

No.47

労働者災害補償保険(以下、「労災保険」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
2016年9月試験 問2
  1. 労働者がトイレに行こうとして席を立ち作業場を離れたところ、廊下に積んであった箱が崩れてきて頭を負傷した場合は、業務逸脱行為中に生じた災害であるため、業務災害に該当しない。
  2. 昼食時、労働者が自社の別フロアーにある社員食堂に移動する際に利用したエレベーターが誤作動し、扉に挟まれて腕を骨折した場合、業務起因性が認められるため、業務災害に該当する。
  3. 単身赴任先で住居を借りて生活をしている労働者が、週末に自宅に帰省し、週明けに自宅から単身赴任先の就業場所に出勤する途中、駅の階段で転倒して足首を捻挫した場合は、住居からの通勤ではないため、通勤災害に該当しない。
  4. 取引先との打合せがあるため、前日の夜から出張して取引先の近くにあるホテルに泊まった労働者が、翌朝、ホテルから取引先へ向かう途中、歩道橋の階段で転倒して足を骨折した場合、ホテルが住居とみなされるため、通勤災害に該当する。

正解 2

問題難易度
肢12.8%
肢277.7%
肢36.0%
肢413.5%

解説

  1. 不適切。労働者が就業中に私用(私的行為)を行い、または業務を逸脱する恣意的行為をしていて、それが原因となって災害を被った場合は業務災害に該当しませんが、飲水等とともに生理的行為等については、事業主の支配下にあることに伴う行為として業務に附随する行為として取り扱われることになるので業務災害に該当します。
  2. [適切]。会社に出社して事業場施設内にいる限りは、労働契約に基づき事業主の支配管理下にあると認められますが、昼食時などの休憩時間や就業前後は実際に業務をしていないので、行為そのものは私的行為になります。この場合、私的な行為によって発生した災害は業務災害とは認められませんが、本肢のように事業場の施設・設備や管理状況等が原因で発生した災害は業務災害となります。
  3. 不適切。通勤災害の「通勤」には、住居と就業場所の往復、就業場所から他の就業場所への移動が含まれる他、単身赴任者の場合には単身赴任先住居・帰省先住居・単身赴任先就業場所の間の移動が含まれます。
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    したがって、自宅(帰省先住居)から単身赴任先就業場所への移動中に負ったケガは通勤災害に該当することとなります。
    単身赴任先で住居を借りて生活をしている労働者が、月2回程度の頻度で、週末に自宅に帰省し、週明けに自宅から単身赴任先の就業場所に出勤する途中、駅の階段で転倒して骨折した場合は、通勤災害に該当する。2021.9-2-b
  4. 不適切。通勤災害の「通勤」には業務上行う移動を含みません。業務上一般的には出張の過程全般を業務中と捉えるので、出張中の移動で遭った災害は通勤災害ではなく業務災害に該当します(労災保険法7条2項)。もっとも出張中の積極的な私用・私的行為・恣意的行為をしている間は、業務遂行性が失われているとして労災とは認められません。
    取引先との商談のため、前日から出張して取引先の近くにあるビジネスホテルに宿泊した労働者が、翌朝、ビジネスホテルから取引先に向かう途中、道路上の段差で転倒して骨折した場合は、業務災害に該当する。2021.9-2-c
    遠方の取引先を訪問するため、前日から出張して取引先の近くにあるホテルに宿泊した労働者が、翌朝、ホテルから取引先へ合理的な経路で向かう途中、歩道橋の階段で転倒して足を骨折した場合、一般に、通勤災害に該当する。2020.9-3-1
したがって適切な記述は[2]です。