FP1級過去問題 2020年9月学科試験 問3

問3

労働者災害補償保険に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 遠方の取引先を訪問するため、前日から出張して取引先の近くにあるホテルに宿泊した労働者が、翌朝、ホテルから取引先へ合理的な経路で向かう途中、歩道橋の階段で転倒して足を骨折した場合、一般に、通勤災害に該当する。
  2. 労働者が、就業場所から住居までの帰路の途中、合理的な経路を逸脱して理髪店に立ち寄り、散髪を終えて合理的な経路に復した後に交通事故に遭って負傷した場合、一般に、通勤災害に該当する。
  3. 派遣労働者が、派遣元事業主と労働者派遣契約を締結している派遣先で業務に従事している間に、業務上の負傷をした場合、派遣先を適用事業とする労働者災害補償保険が適用される。
  4. 業務上の疾病により療養していた労働者が、疾病が治って業務に復帰後、その疾病が再発した場合、再発した疾病については、新たな業務上の事由によって発病したものでない限り、業務上の疾病とは認められない。

正解 2

問題難易度
肢116.0%
肢266.9%
肢312.6%
肢44.5%

解説

  1. 不適切。通勤災害の「通勤」には業務上行う移動を含みません。出張先での移動に伴う骨折等の災害は、業務の性質を有する移動による災害と見なされるため、通勤災害ではなく業務災害に該当します(労災保険法7条2項)。
    取引先との商談のため、前日から出張して取引先の近くにあるビジネスホテルに宿泊した労働者が、翌朝、ビジネスホテルから取引先に向かう途中、道路上の段差で転倒して骨折した場合は、業務災害に該当する。2021.9-2-c
    取引先との打合せがあるため、前日の夜から出張して取引先の近くにあるホテルに泊まった労働者が、翌朝、ホテルから取引先へ向かう途中、歩道橋の階段で転倒して足を骨折した場合、ホテルが住居とみなされるため、通勤災害に該当する。2016.9-2-4
  2. [適切]。通勤途中に日常生活に必要な最小限度を超えて移動の経路を逸脱(寄り道)したり、移動を中断したりした場合には、その後通常の経路に戻って移動したとしても中断の間およびその後の移動は「通勤」となりません(労災保険法7条3項)。
    どのケースが日常生活に必要であるかは個々の事例によりますが、理髪店への立寄りについては特段の事情のない限り「日用品の購入その他これに準ずる行為」に該当するとされているので、散髪を終えて通常の経路に戻って移動した場合には「通勤」となり、その移動中に遭った交通事故等は通勤災害に該当します(労災保険法規則8条1号)。
  3. 不適切。労働者派遣契約では、派遣元事業主と派遣労働者の間に雇用関係があり、派遣労働者は派遣元事業主に使用されています。派遣先で業務上の負傷をした場合、使用者である派遣元を適用事業とする労災保険が適用されます。
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  4. 不適切。業務上の疾病が治癒したあとにその疾病が再発した場合、その症状の悪化が、当初の業務による疾病と相当因果関係があると認められた場合は業務上の疾病とされ、再び補償が行われます(昭23.1.9基災発13号)。
したがって適切な記述は[2]です。