FP1級過去問題 2014年1月学科試験 問44

問44

遺産分割に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 被相続人は、遺言で遺産の分割方法を指定することができるが、その指定は遺産の全部について行う必要があり、遺産の一部について行うことはできない。
  2. 代償分割により取得した代償財産が不動産であった場合、当該不動産の所得税法上の取得費は、代償債務の履行として当該不動産を交付した者の取得費を引き継ぐことになる。
  3. 共同相続人間における遺産分割協議が調わない場合には、家庭裁判所の調停に先立って、審判による遺産分割を申し立てなければならない。
  4. 共同相続人全員の協議により分割する協議分割は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、遺言による分割方法の指定に従わないことも可能であるため、仮に遺言があったとしても協議により分割することができる。

正解 4

問題難易度
肢13.3%
肢219.8%
肢313.7%
肢463.2%

解説

  1. 不適切。共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、遺産分割協議で遺産の全部または一部の分割をすることができます(民法907条1項)。
  2. 不適切。代償分割により、代償財産として不動産を取得した場合、その不動産の取得費は元々所有していた人の取得費を引き継ぐのではなく、代償分割時の時価が取得費となります。相続で取得するのではなく、別の相続人から不動産の所有権移転により取得するためです。
    代償分割により交付した代償財産が相続開始前から所有していた不動産であった場合、代償債務を履行したときの時価で譲渡したものとして、当該不動産を交付した者の所得税の課税対象となる。2020.1-44-2
  3. 不適切。遺産分割を家庭裁判所に請求するための条件は、協議が調わないとき、または協議をすることができないときです(民法907条2項)。
    家事事件の解決は調停前置主義となっていることが多いですが、遺産分割事件については、調停を申し立てることも、調停を経ずに審判を申し立てることもできます。本肢は、調停に先立って審判を申し立てるという、調停前置主義とは逆の順番ですのでなおさら不適切です。
    • 調停 … 調停委員が間に入り、話し合いによる調整・解決を目指す
    • 審判 … 裁判所が双方の主張を聞いて分割方法を判断する
  4. [適切]。相続人全員の合意があれば、遺言内容に従わず、遺産分割協議にて分割方法を決めることもできます(民法907条1項)。ただし、遺産分割を一定期間禁じる遺言があった場合にはこの限りではありません。
したがって適切な記述は[4]です。