FP1級過去問題 2014年9月学科試験 問25

問25

居住者に係る所得税の事業所得等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 事業所得の総収入金額は、原則として実現収益を計上するが、実現した収益の繰延べや未実現利益の先取り計上も認められる場合がある。
  2. 事業所得の総収入金額には、本来の事業によるものばかりではなく、事業の遂行上生じた取引先への貸金の利子や事業の用に供していた車両の譲渡代金も含まれる。
  3. 青色事業専従者である妻に支払う給与は、「86万円」または「事業所得の金額を当該事業に係る事業専従者の数に1を加えた数で除して計算した金額」のいずれか低い金額を必要経費に算入する。
  4. 売上原価に計上する棚卸資産の評価方法は、事業の種類ごと、棚卸資産の区分ごとに選定し、所轄税務署長に届け出るが、届出をしない場合は、先入先出法による評価方法が適用される。

正解 1

問題難易度
肢145.3%
肢220.8%
肢322.3%
肢411.6%

解説

  1. [適切]。実現した収益の繰延べとは、長期割賦販売等において当期に支払期限が到来するものだけを売上として計上する方法、未実現利益の先取り計上とは、長期請負契約(工事やソフトウェア開発)等において仕事完成後に受け取る請負金額のうち当期に進捗した割合を売上として先取り計上する方法です。前者は延払基準として、後者は工事進行基準として、いずれも所得税法で認められた総収入金額の計上方法です。
  2. 不適切。事業の遂行上取引先又は使用人に対して貸し付けた貸付金の利子は、事業所得上の総収入金額に算入しますが、事業用車両の譲渡による所得は事業所得ではなく譲渡所得として課税されます。
  3. 不適切。青色事業専従者給与は、青色事業専従者給与に関する届出書が提出済であり、届出書に記載されている金額の以内、かつ、労務の対価として相当であると認められる金額であれば全額を必要経費にできます。本肢の記述は白色事業専従者である配偶者に支払った給与の必要経費算入額の説明です。
    青色申告者ではない個人事業主と生計を一にする配偶者が当該事業に従事している場合、「86万円」と「事業所得の金額を当該事業に係る事業専従者の数に1を加えた数で除して計算した金額」のいずれか高い金額を、事業所得の計算上、必要経費とみなすことができる。2022.5-25-a
    青色申告者ではない個人事業主が事業専従者である配偶者に支払う給与は、「50万円」と「事業所得の金額を当該事業に係る事業専従者の数に1を加えた数で除して計算した金額」のいずれか低い金額を上限として、支払った年分における事業所得の必要経費に算入することができる。2017.1-25-a
  4. 不適切。棚卸資産の評価の方法は、事業の種類ごとに、かつ、商品または製品、半製品、仕掛品、主要原材料及び補助原材料その他の棚卸資産の区分ごとに選定しなければなりません。6種類の計算方法が認められていますが、税務署に届出をしない場合は、原則的評価方法である最終仕入原価法が適用されます。
    売上原価に計上する棚卸資産の評価方法は、事業の種類ごと、棚卸資産の区分ごとに選定し、所轄税務署長に届け出るが、届出をしない場合は、最終仕入原価法が評価方法とされる。2024.1-25-3
    売上原価に計上する棚卸資産の評価方法は、事業の種類ごと、かつ、棚卸資産の区分ごとに選定し、所轄税務署長に届け出るが、低価法は青色申告者だけが選定できる。2015.1-25-4
したがって適切な記述は[1]です。