FP1級過去問題 2015年10月学科試験 問26

問26

居住者に係る所得税における退職所得等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 特定役員退職手当等に係る退職所得の金額は、その年中の特定役員退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額となる。
  2. 契約者(=保険料負担者)および死亡保険金受取人が法人、被保険者が役員である終身保険契約を、当該役員の退職にあたり、契約者を役員、死亡保険金受取人を役員の配偶者に名義変更し、退職金として当該契約を譲渡した場合、法人が譲渡時までに支払った保険料の総額が当該役員に対する退職手当等の額とされる。
  3. 退職所得控除額は、勤続年数が20年以下の期間は年当たり40万円(最低80万円)、20年を超える期間は年当たり70万円で算出され、さらに障害者になったことに直接基因して退職したと認められる場合は200万円が加算される。
  4. 退職手当等の支払を受ける居住者がその支払を受けるときまでに「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合、退職手当等の金額が2,000万円以下であるときに限り、その退職所得について所得税の確定申告が不要となる。

正解 1

解説

  1. [適切]。勤続年数が5年以下の国家公務員や地方公務員、議員、法人の取締役、執行役などは退職所得上の特定役員等となり、これらの者が受け取る退職手当は、特定役員退職手当等として退職所得の金額を計算することになります。特定役員退職手当等には退職所得を計算するとき2分の1課税(最後の1/2)の適用がないので、退職所得額は、退職収入金額から退職所得控除額を控除した残額になります(所得税法30条2項)。
    勤続年数が5年以下である一定の役員に支給される特定役員退職手当等に係る退職所得の金額は、その年中の特定役員退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額となる。2014.9-26-4
  2. 不適切。保険料の総額ではありません。法人契約の終身保険を名義変更により給与や退職手当として現物支給する場合、原則として、その支給時における保険契約の解約返戻金相当額が収入金額となります(所基通36-37)。
    契約者および死亡保険金受取人が法人、被保険者が役員である終身保険契約の名義を、契約者をその役員、死亡保険金受取人を役員の妻に変更し、退職金として当該契約を譲渡した場合、譲渡時の保険料積立金の総額がその役員に対する退職金の額とされる。2014.9-26-3
  3. 不適切。200万円ではありません。退職所得控除額は、勤続年数が20年以下の期間は年当たり40万円(最低80万円)、20年を超える期間は年当たり70万円で算出されます。障害者になったことを直接の原因として退職した場合は、さらに100万円が加算されます(所得税法30条6項)。
  4. 不適切。金額の多寡は関係ありません。退職手当等の支払を受ける居住者が「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合、退職手当等の支払の際に所得税等の額が源泉徴収されるため確定申告が不要となります。この措置は退職手当の額にかかわらず適用されます(所得税法121条2項)。
したがって適切な記述は[1]です。