FP1級過去問題 2016年1月学科試験 問4

問4

公的年金の各種加算に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 老齢厚生年金を受給している者(厚生年金保険の被保険者期間が240月以上である者)が婚姻し、その者によって生計を維持している65歳未満の配偶者を有することとなった場合は、婚姻した月の翌月からその者の老齢厚生年金に加給年金額が加算される。
  2. 夫が受給している老齢厚生年金の加給年金対象者である妻が老齢基礎年金の支給を繰り上げた場合、夫の老齢厚生年金に加算されていた加給年金額は打ち切られ、妻が受給する繰上げ支給の老齢基礎年金に振替加算が加算される。
  3. 障害厚生年金の受給権者にその権利を取得した当時、その者によって生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合、当該受給権者の障害の程度にかかわらず、当該受給権者の障害厚生年金に配偶者に係る加給年金額が加算される。
  4. 夫が厚生年金保険の被保険者期間中に死亡し、40歳以上65歳未満の妻が遺族厚生年金の受給権のみを取得した場合、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年未満であっても、その妻に支給される遺族厚生年金に中高齢寡婦加算額が加算される。

正解 4

問題難易度
肢126.7%
肢210.4%
肢314.2%
肢448.7%

解説

  1. 不適切。加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年(240月)以上ある方が、65歳到達時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者または子がいるときに加算されます。したがって、老齢厚生年金の受給開始後に65歳未満の配偶者を有することとなったには、加給年金額は加算されません。
    なお、障害厚生年金の配偶者加給年金は、受給権取得後に婚姻した妻も対象となります。両者の違いに注意しましょう。
    障害等級1級または2級の障害厚生年金を受給している者が、婚姻により所定の要件を満たす65歳未満の配偶者を有するに至った場合、婚姻の日の属する月の翌月分から障害厚生年金の額に加給年金額が加算される。2023.1-5-4
    障害等級2級に該当して障害厚生年金の支給を受けている者が婚姻し、所定の要件を満たす配偶者を有するに至った場合は、所定の手続により、その至った日の属する月の翌月分から当該受給権者の障害厚生年金に加給年金額が加算される。2021.5-5-3
    障害厚生年金の加給年金額は、障害等級1級または2級に該当して障害厚生年金の受給権を取得した当時、受給権者が所定の要件を満たす配偶者を有するときに加算されるため、障害厚生年金を既に受給している者が婚姻した場合、その配偶者は加給年金対象者とならない。2020.1-5-4
    障害等級2級に該当して障害厚生年金を受給している者が婚姻し、所定の要件を満たす配偶者を有することとなった場合は、所定の手続により、婚姻した日の属する月の翌月分から当該受給権者の障害厚生年金に加給年金額が加算される。2018.9-4-3
    障害厚生年金の受給権者にその権利を取得した当時、その者によって生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合、当該受給権者の障害の程度にかかわらず、当該受給権者の障害厚生年金に配偶者に係る加給年金額が加算される。2016.1-4-3
  2. 不適切。妻が老齢基礎年金を繰り上げて受給しても、妻が65歳に到達するまでの間は、夫の老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。妻が65歳以後は、妻の老齢基礎年金に振替加算額が加算されます。すなわち、妻の繰上げ支給の申出が、加給年金額と振替加算額には影響することはありません。
    夫が受給している老齢厚生年金の加給年金対象者である妻が老齢基礎年金の支給を繰り上げた場合、夫の老齢厚生年金に加算されていた加給年金額は打ち切られ、妻が受給する繰上げ支給の老齢基礎年金に振替加算が加算される。2018.9-4-1
  3. 不適切。障害厚生年金の配偶者加給年金は、障害等級1級・2級の受給権者によって生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます(厚年法50条の2)。障害厚生年金の障害等級は1級から3級までありますが、3級には配偶者加給年金がないので「障害の程度にかかわらず」としている本肢は誤りです。
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    障害等級1級または2級の障害厚生年金を受給している者が、婚姻により所定の要件を満たす65歳未満の配偶者を有するに至った場合、婚姻の日の属する月の翌月分から障害厚生年金の額に加給年金額が加算される。2023.1-5-4
    障害等級2級に該当して障害厚生年金の支給を受けている者が婚姻し、所定の要件を満たす配偶者を有するに至った場合は、所定の手続により、その至った日の属する月の翌月分から当該受給権者の障害厚生年金に加給年金額が加算される。2021.5-5-3
    障害厚生年金の加給年金額は、障害等級1級または2級に該当して障害厚生年金の受給権を取得した当時、受給権者が所定の要件を満たす配偶者を有するときに加算されるため、障害厚生年金を既に受給している者が婚姻した場合、その配偶者は加給年金対象者とならない。2020.1-5-4
    障害等級2級に該当して障害厚生年金を受給している者が婚姻し、所定の要件を満たす配偶者を有することとなった場合は、所定の手続により、婚姻した日の属する月の翌月分から当該受給権者の障害厚生年金に加給年金額が加算される。2018.9-4-3
    老齢厚生年金を受給している者(厚生年金保険の被保険者期間が240月以上である者)が婚姻し、その者によって生計を維持している65歳未満の配偶者を有することとなった場合は、婚姻した月の翌月からその者の老齢厚生年金に加給年金額が加算される。2016.1-4-1
  4. [適切]。中高齢寡婦加算は、厚生年金の被保険者である夫が死亡したときに40歳以上で子のない妻(夫の死亡後40歳に達した当時、子がいた妻も含む)が65歳なるまで、受け取る遺族族厚生年金に加算されるものです。夫の死亡時に子がいて、その子が18歳到達年度末日を経過した場合、40歳以上65歳未満の妻が受給する遺族厚生年金には中高齢寡婦加算額が加算されます(厚年法62条)。
    中高齢寡婦加算の規定では、遺族厚生年金の計算基礎となる被保険者期間が240月未満を除外するとされていますが、短期要件(被保険者の死亡)の場合には300月に満たない場合に300月として計算することになっているので、死亡した夫の被保険者期間にかかわらず支給対象となります。
    夫が厚生年金保険の被保険者期間中に死亡し、妻が遺族厚生年金の受給権のみを取得し、かつ、夫の死亡当時における妻の年齢が30歳未満である場合、当該妻に対する遺族厚生年金の支給期間は、当該受給権を取得した日から最長10年間となる。2019.9-5-3
したがって適切な記述は[4]です。