FP1級過去問題 2016年1月学科試験 問5(改題)

問5

居住者が受け取る公的年金の課税関係に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問において、公的年金等は雑所得として課税されるものとし、非課税となるものは含まないものとする。
  1. その年の12月31日において65歳未満の者がその年中に支払を受けるべき公的年金等の金額が180万円であるときは、その支払の際、所得税および復興特別所得税は源泉徴収されない。
  2. 公的年金等の支払者に対して「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出している場合、公的年金等に係る源泉徴収税率(所得税および復興特別所得税の合計)は5.105%である。
  3. 公的年金等の収入金額が300万円を超える場合は、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であっても、所得税の確定申告書を提出しなければならない。
  4. その年の4月1日において60歳以上の者で、前年中の公的年金等の所得に係る個人住民税の納税義務のある者が受け取る公的年金等については、その支払の際、原則として個人住民税が特別徴収される。

正解 2

問題難易度
肢116.4%
肢239.4%
肢319.3%
肢424.9%

解説

  1. 不適切。公的年金等が源泉徴収(5.105%)の対象となるのは、公的年金等の年間収入額が、基礎控除額と公的年金控除額の最低額の合計を超える場合です。すなわち、65歳未満であれば「95万円+60万円=155万円」、65歳以上であれば原則として「95万円+110万円=205万円」が基準額となります。本肢は65歳未満・180万円なので、源泉徴収の対象となります。
    その年の12月31日において65歳以上の者がその年中に支払を受けるべき公的年金等の収入金額が220万円である場合、その支払の際、所得税および復興特別所得税は源泉徴収されない。2023.1-7-1
    国民年金の第3号被保険者期間のみを有していた65歳以上の者がその年中に合計で70万円の老齢基礎年金の支払を受ける見込みのときは、その支払の際、所得税および復興特別所得税は源泉徴収されない。2022.1-7-3
    その年の12月31日において65歳以上の者がその年中に支払を受けるべき公的年金等の金額が180万円未満であるときは、その支払の際、所得税および復興特別所得税は源泉徴収されない。2021.5-7-1
  2. [適切]。公的年金等の支払を受けるときは、収入金額からその年金に応じて定められている一定の控除額を差し引いた額に5.105%を乗じた金額が源泉徴収されます。
    「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」は支払者に扶養親族の状況を知らせるための書類で、源泉徴収額に人的控除額を反映するために提出します。給与所得者で言うところの「給与所得者の扶養控除等申告書」に当たります。
    【参考】2019年(令和元年)以前は、扶養親族等申告書を提出している場合は5.105%、提出していない場合は10.21%と源泉徴収の税率が異なりました。税制改正により、2020年(令和2年分)以降の扶養親族等申告書については、提出された場合と提出されなかった場合で、所得税率に差がなくなりました。このため、本人が障害者・寡婦等に該当せず、控除対象となる配偶者または扶養親族がいない方は扶養親族等申告書を提出する必要はありません。
    公的年金等の支払者に対して「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出することができない確定給付企業年金等の公的年金に係る源泉徴収税率(所得税および復興特別所得税の合計)は、10.21%である。2023.1-7-2
    公的年金等の支払者に対して「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出した場合、公的年金等に係る源泉徴収税率(所得税および復興特別所得税の合計税率)は5.105%である。2021.5-7-2
  3. 不適切。年間の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告は不要となります。400万円以下であれば確定申告をしなくてもよい場合もあるため不適切です。
    公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、原則として確定申告の必要はない。2023.1-7-3
    公的年金等に係る雑所得を有する納税者で、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下である者が、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、原則として、所得税の確定申告書を提出する必要はない。2021.9-7-3
    公的年金等に係る雑所得を有する納税者で、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下である者が、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、原則として、所得税の確定申告書を提出する必要はない。2019.1-6-3
  4. 不適切。その年の4月1日において65歳以上の公的年金受給者で、前年中の年金所得に係る個人住民税の納税義務がある場合には、個人住民税の特別徴収の対象となります。つまり、年金支給額から住民税が天引きされます。ただし、年金受給額が年額18万円未満である場合等を除きます。
したがって適切な記述は[2]です。