FP1級過去問題 2016年1月学科試験 問49

問49

Aさんは、Aさんの父親が2023年8月に死亡したことにより、下記のX土地、Y土地、Z土地を相続により取得した。「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受けた場合、当該宅地の相続税の課税価格に算入すべき価額の計算にあたって減額される最大の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。
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  1. 3,960万円
  2. 4,000万円
  3. 6,360万円
  4. 7,200万円

正解 3

問題難易度
肢111.2%
肢28.0%
肢363.8%
肢417.0%

解説

「小規模宅地の評価減の特例」の概要は次の通りです。
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特定居住用宅地等と特定事業用宅地等を併用する場合、適用面積の調整はせず330㎡+400㎡の合計730㎡まで適用を受けられますが、貸付事業用宅地とその他の宅地を併用する場合には以下の式で定められる面積が適用限度となります。
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このケースでは、以下の3つのパターンについて減額分を求めたときに最大となる金額が正解となります。
  1. X土地(居住用)とY土地(事業用)の併用
  2. X土地(居住用)とZ土地(貸付用)の併用
  3. Y土地(事業用)とZ土地(貸付用)の併用
まず宅地の相続税評価額ですが、X土地とY土地は自用地価額となり、Z土地は貸家建付地に該当するため「8,000万円×(1-60%×30%×100%)=6,560万円」となります。
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【①X土地(居住用)とY土地(事業用)の併用】
それぞれの限度面積まで適用を受けることができるので、

 X土地の減額分:6,000万円×330㎡400㎡×80%=3,960万円
 Y土地の減額分:3,000万円×(400㎡200㎡=1)×80%=2,400万円

以上より減額される金額は、3,960万円+2,400万円=6,360万円

【②X土地(居住用)とZ土地(貸付用)の併用】
減額割合が大きい特定居住用宅地等を優先的に適用し、適用限度面積に達するまでの残りを貸付事業用宅地に適用します。

 X土地の減額分:6,000万円×330㎡400㎡×80%=3,960万円

X土地のうち特例適用した面積は330㎡ですので、Z土地の適用面積は上記の式を使って以下のように求められます。

 330㎡×200㎡330㎡+貸付用面積≦200㎡
 貸付用面積≦200㎡-330㎡×200㎡330㎡
 貸付用面積≦200㎡-200㎡
 貸付用面積≦0㎡

このケースのように、特定居住用宅地等または特定事業用宅地等を限度面積まで適用した場合、貸付事業用宅地の適用面積がゼロとなり併用不可となります。

以上より減額される金額は、X土地単体の減額分である3,960万円

【③Y土地(事業用)とZ土地(貸付用)の併用】
②と同様に減額割合が大きい特定事業用宅地等を優先的に適用し、適用限度面積に達するまでの残りを貸付事業用宅地に適用します。

 Y土地の減額分:3,000万円×(400㎡200㎡=1)×80%=2,400万円

Y土地のうち特例適用した面積は200㎡ですので、Z土地の適用面積は上記の式を使って以下のように求められます。

 200㎡×200㎡400㎡+貸付用面積≦200㎡
 貸付用面積≦200㎡-200㎡×200㎡400㎡
 貸付用面積≦200㎡-100㎡
 貸付用面積≦100㎡

Z土地200㎡のうち100㎡に50%の減額を適用すると、

 Z土地の減額分:6,560万円×100㎡200㎡×50%=1,640万円

以上より減額される金額は、2,400万円+1,640万円=4,040万円

したがって、減額可能な金額が最大となるのは特定事業用と特定居住用を併用する場合で、その金額は[3]の6,360万円が適切です。

なお、Z土地単体での減額分は、6,560万円×50%=3,280万円です。