FP1級過去問題 2016年9月学科試験 問32

問32

法人税における貸倒損失の取扱いに関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 取引先への貸付金について、取引先の債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しもなく、その貸付金の弁済を受けることができないと認められるため、内容証明郵便により貸付金の全額を免除する旨を通知した場合、債務免除をした金額の全額が貸倒損失として認められる。
  2. 取引先への貸付金について、取引先の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかとなった場合に、当該貸付金に係る担保物があるときには、当該貸付金から担保物の処分可能見込額を控除した残額が貸倒損失として認められる。
  3. 継続的な取引を停止した取引先に対して有する売掛債権について、当該取引先の最後の弁済期または最後の弁済の時のいずれか遅い時から1年以上経過した場合、当該売掛債権に係る担保物があるときを除き、その全額が貸倒損失として認められる。
  1. 1つ
  2. 2つ
  3. 3つ
  4. 0(なし)

正解 1

問題難易度
肢158.8%
肢230.0%
肢37.4%
肢43.8%

解説

法人税の計算において貸倒損失を計上できるのは、下記に該当する場合に限られています(法基通9-6)。
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  1. 適切。債務者の債務超過の状態が相当期間(概ね3年以上)続き、その金銭債権の弁済を受けることができない場合には、書面で通知した債務免除額を貸倒損失とすることができます。
    取引先A社に対して貸付金200万円を有しているが、A社の債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しもなく、その貸付金の弁済を受けることができないと認められるため、内容証明郵便により貸付金の全額を免除する旨をA社に通知した。この場合、債務免除をした金額の全額が貸倒損失として認められる。2019.1-32-1
    取引先A社に対して貸付金100万円を有しているが、A社の債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しもなく、その貸付金の弁済を受けることができないと認められるため、内容証明郵便により貸付金の全額を免除する旨をA社に通知した。この場合、債務免除をした金額の全額が貸倒損失として認められる。2015.10-30-1
  2. 不適切。見込額を控除することはできません。債務者の資力からみて金銭債権の全額が回収できないことが明らかになった場合において、その金銭債権に担保物があるときは、実際に担保物を処分した後に、処分額を控除した後の残額を貸倒れとして損金処理することができます。
    取引先B社に対して、貸付金1,000万円を有しているが、B社の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかとなった。当該金銭債権については抵当権500万円が設定されているため、その抵当権が実行された後でなければ、貸倒損失として損金経理をすることはできない。2022.1-30-2
    取引先C社に対して貸付金600万円を有しているが、C社の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかとなった。この貸付金に係る担保物がある場合、貸付金600万円から担保物の処分可能見込額を控除した残額が貸倒損失として認められる。2021.5-32-3
    取引先D社に対して貸付金600万円を有しているが、D社の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかとなった。この貸付金に係る担保物がある場合、貸付金600万円から担保物の処分可能見込額を控除した残額が貸倒損失として認められる。2019.1-32-4
    取引先B社に対して手形債権600万円を有しているが、B社の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかとなった。B社の所有不動産に対して抵当権200万円が設定されているため、手形債権600万円から抵当権200万円を控除した残額が貸倒損失として認められる。2015.10-30-2
  3. 不適切。売掛債権を貸倒損失にする場合、備忘価額の控除が必要です。継続的取引状態にあった債務者と取引を停止した後、1年以上経過しても弁済がない売掛債権は、備忘価額1円を控除した残額を貸倒損失とすることができます。したがって、全額は認められません。
したがって適切なものは「1つ」です。