FP1級過去問題 2017年1月学科試験 問4

問4

公的年金の遺族給付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. 厚生年金保険の被保険者が死亡し、その遺族である妻と子が遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権を取得したが、妻が50歳のときに、妻の遺族基礎年金の受給権が子の18歳到達年度末日が終了したことにより消滅した場合、その後の一定期間、妻が受給する遺族厚生年金に中高齢寡婦加算額が加算される。
  2. 国民年金の第1号被保険者期間に係る保険料納付済期間が25年以上である夫が死亡し、寡婦年金の受給権を取得した妻(60歳)が、繰上げ請求により老齢基礎年金の受給権を取得した場合、寡婦年金の年金額の全部または一部が支給停止となる。
  3. 遺族基礎年金を受給している2人の子のうち、一方の子が死亡した場合、他方の子に支給される遺族基礎年金の額は、一方の子が死亡した日の属する月の翌月から改定される。
  4. 夫の死亡によって遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給していた妻が再婚した場合、妻の有する遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給権は消滅するが、子の有する遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給権は消滅しない。

正解 2

問題難易度
肢111.4%
肢248.1%
肢317.9%
肢422.6%

解説

  1. 適切。中高齢寡婦加算額が支給されるのは、夫の死亡により遺族厚生年金を受給する妻のうち、次のいずれかに該当する者であって遺族基礎年金を受給していない人です。
    1. 遺族厚生年金の受給権を取得したときに40歳以上65歳未満
    2. 40歳に達したときに遺族基礎年金の受給権を有している
    本肢の妻は❶または❷に該当するため、遺族基礎年金の受給権が消滅した後、中高齢寡婦加算額が加算されます(厚年法62条)。
    夫の死亡により、遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権を取得した妻が、40歳に達する前に、子の死亡により遺族基礎年金の受給権が消滅した場合、40歳に達した月の翌月から遺族厚生年金に中高齢寡婦加算額が加算される。2024.5-6-4
    夫の死亡によって遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給していた妻が再婚した場合、妻の有する遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給権は消滅するが、子の有する遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給権は消滅しない。2017.1-4-4
  2. [不適切]。寡婦年金は、第1号被保険者としての保険料納付済期間が10年以上ある夫が老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取らずに死亡した場合に、その妻が60歳から65歳到達月まで受け取ることのできる年金です(国年法49条)。老齢基礎年金の繰上げをした場合にはその時点で寡婦年金の受給権は消滅します。全部または一部の支給停止ではありません(国年法附則9条の2)。
    国民年金の第1号被保険者期間に係る保険料納付済期間が10年以上ある夫(62歳)が、老齢基礎年金または障害基礎年金の支給を受けることなく死亡した場合、夫との婚姻期間が10年以上あり、生計を維持されていた妻(58歳)は、夫が死亡した日の属する月の翌月から5年間、寡婦年金を受給することができる。2022.5-6-3
    国民年金の第1号被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が24年6カ月の夫(55歳)が死亡した場合、夫との婚姻期間が19年6カ月あり、生計を維持されていた妻(61歳)は、寡婦年金を受給することができる。2021.9-5-2
    国民年金の第1号被保険者として38年間、保険料を納付してきたBさん(58歳)が、再婚して13年目に障害基礎年金の支給を受けることなく死亡した。この場合、Bさんと生計維持関係にあった妻(61歳)が寡婦年金の受給権を取得した場合、Bさんの妻に対する寡婦年金の支給は、原則として受給権発生月の翌月から65歳に達するまでである。2015.1-3-2
    国民年金の第1号被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上ある夫が、老齢基礎年金または障害基礎年金の支給を受けることなく死亡した場合、夫によって生計を維持し、かつ、夫との婚姻期間が8年間継続していた63歳の妻は、寡婦年金を請求することができる。2014.9-4-3
  3. 適切。遺族基礎年金には「子の加算」があり、子の数が多いほど年金額も多くなります。子が死亡した場合には、その死亡月の翌月から遺族基礎年金の額が改定されます(国年法39条の2第2項)。
  4. 適切。遺族基礎年金または遺族厚生年金の受給権者に、①死亡、②婚姻、③養子となる、④離縁で親族関係が終了する等の事由があった場合には、当該受給権は消滅します。よって、本肢の妻が再婚した場合、妻の遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給権は失権します。ただし、再婚は子に生じた事由ではないので、子(18歳到達年度未達)の有する遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給権は消滅しません。子に対する遺族厚生年金は、配偶者が遺族厚生年金の受給権を有する期間、その支給を停止されていますが配偶者が受給権を失うと支給が開始されることになります。
    夫の死亡により、遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権を取得した妻が、40歳に達する前に、子の死亡により遺族基礎年金の受給権が消滅した場合、40歳に達した月の翌月から遺族厚生年金に中高齢寡婦加算額が加算される。2024.5-6-4
    厚生年金保険の被保険者が死亡し、その遺族である妻と子が遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権を取得したが、妻が50歳のときに、妻の遺族基礎年金の受給権が子の18歳到達年度末日が終了したことにより消滅した場合、その後の一定期間、妻が受給する遺族厚生年金に中高齢寡婦加算額が加算される。2017.1-4-1
したがって不適切な記述は[2]です。