FP1級過去問題 2017年1月学科試験 問50

問50

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律による「遺留分に関する民法の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 本特例の対象となる特例中小企業者は、資本金の額または出資の総額ならびに常時使用する従業員の数について業種に応じた基準を満たし、かつ、3年以上継続して事業を行っている非上場会社である。
  2. 本特例の対象となる後継者は、旧代表者の推定相続人のうち、合意時点において特例中小企業者の代表者である者に限られる。
  3. 除外合意と固定合意の双方またはいずれか一方の合意をした場合、後継者以外の推定相続人が旧代表者からの贈与により取得した財産の価額を遺留分算定基礎財産の価額から除外する旨の定めをすることもできる。
  4. 本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を得ることによって、その効力を生ずる。

正解 2

問題難易度
肢17.8%
肢249.4%
肢323.1%
肢419.7%

解説

「遺留分に関する民法の特例」とは、事業承継を円滑に行うために後継者と旧代表者の推定相続人全員の合意の上で、旧代表者から後継者に贈与された自社株式・事業用資産について、除外合意や固定合意をできるようにしたものです。
除外合意
遺留分算定基礎財産から除外する
固定合意(自己株式のみ)
遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定する
この合意により、後継者に株式を集中させたり、相続時に想定外の遺留分の請求を受けたりすることがなくなる効果が期待できます。
  1. 適切。遺留分に関する民法の特例の対象となる特例中小企業者は、業種に応じた資本金の額または出資の総額ならびに常時使用する従業員の数について基準を満たした中小企業者であり、かつ、合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場会社でなければなりません。
    本特例の対象となる特例中小会社は、資本金の額が3,000万円以下、かつ、3年以上継続して事業を行っている非上場会社に限られる。2022.5-49-1
  2. [不適切]。遺留分に関する民法の特例が適用される後継者は、合意時点において特例中小企業者の代表者であれば、旧代表者の推定相続人以外の者でも問題ありません。
    本特例の対象となる後継者は、旧代表者の推定相続人のうち、旧代表者から贈与により非上場株式を取得したことにより特例中小企業者の総株主の議決権の過半数を保有し、かつ、合意時点において当該特例中小企業者の代表者である者に限られる。2019.9-49-1
  3. 適切。除外合意と固定合意の双方またはいずれか一方の合意をした場合は、付随合意として、後継者以外の推定相続人が旧代表者からの贈与等により取得した財産について、遺留分算定基礎財産の価額から除外することを定めることができます。
  4. 適切。遺留分に関する民法の特例は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、その確認を受けた日から1カ月以内に家庭裁判所に申立てをして許可を得ることによって、合意の効力を生じます。
    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を受けることによって、その効力を生ずる。2022.5-49-4
    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を受けることによって、その効力を生ずる。2019.9-49-4
したがって不適切な記述は[2]です。