FP1級過去問題 2024年9月学科試験 問50

問50

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律による「遺留分に関する民法の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 本特例の対象となる特例中小会社は、資本金の額または常時使用する従業員の数について業種に応じた基準を満たし、かつ、5年以上継続して事業を行っている非上場会社に限られる。
  2. 本特例の適用を受けるためには、本特例の適用に係る合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより家庭裁判所の許可を受ける必要があるが、その申請および申立ては、後継者が単独で行うことができる。
  3. 後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について除外合意をする際に、併せて、後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式以外の財産の価額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入しない旨の定めをする場合、その定めの対象となる財産は、特例中小会社の事業に係る不動産および減価償却資産に限られる。
  4. 後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき当該非上場株式の価額は、原則として、贈与時点における相続税評価額とされる。

正解 2

問題難易度
肢114.2%
肢245.2%
肢312.1%
肢428.5%

解説

  1. 不適切。5年ではありません。遺留分に関する民法の特例の対象となる特例中小会社は、一定規模以下の中小企業者(中退共に加入できる企業と同じ)のうち、合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場会社とされています(円滑化法規則2条、同法規則2条)。
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    本特例の対象となる特例中小会社は、資本金の額が3,000万円以下、かつ、3年以上継続して事業を行っている非上場会社に限られる。2022.5-49-1
    本特例の対象となる特例中小企業者は、資本金の額または出資の総額ならびに常時使用する従業員の数について業種に応じた基準を満たし、かつ、3年以上継続して事業を行っている非上場会社である。2017.1-50-1
  2. [適切]。本特例は、関係者全員の合意から1カ月以内に経済産業大臣に確認の申請をし、その確認を受けた日から1カ月以内に家庭裁判所に許可を申し立てることによって効力を生じます(円滑化法7条・8条)。経済産業大臣への申請、家庭裁判所への申立ては、いずれも後継者が単独で行うことができます。
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    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に家庭裁判所の確認を申し立て、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申請により、経済産業大臣の許可を受けることによって、その効力を生ずる。2024.1-50-4
    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を受けることによって、その効力を生ずる。2022.5-49-4
    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を受けることによって、その効力を生ずる。2019.9-49-4
    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を得ることによって、その効力を生ずる。2017.1-50-4
  3. 不適切。本特例では株式について除外合意をする際に、それと併せて、後継者または推定相続人が旧代表者からの贈与等により取得した株式以外の財産について、遺留分算定基礎財産の価額から除外する定め(付随合意)をすることができます(円滑化法5条)。除外の対象となる財産の種類や額に制限はなく、不動産や減価償却資産に限定されていません。
    後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、併せて、後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式以外の財産について、遺留分を算定するための財産の価額に算入しない旨の定めをすることができる。2024.1-50-3
  4. 不適切。贈与時点の相続税評価額ではありません。固定合意は、後継者が旧代表者から贈与を受けた株式等の全部または一部について、遺留分の算定基礎財産の価額に算入すべき価額を、当該合意時点における価額に固定する方法です。固定する価額は、弁護士、公認会計士、税理士(各士業法人含む)が、合意時点における時価として証明をした額となります(円滑化法4条1項2号)。
    後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、当該合意の時における当該株式の価額は、合意時点の相続税評価額ではなく、弁護士、公認会計士、税理士等が相当な価額として証明をしたものになる。2022.5-49-2
    後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、併せて、後継者が当該旧代表者から贈与を受けた非上場株式以外の事業用財産について固定合意をすることができる。2019.9-49-3
したがって適切な記述は[2]です。